第180話 暴れる古代
レプタの遺跡群は、祭壇から復活した恐竜たちの咆哮に震えていた。
しかし、暴れ狂うのはそれだけではなかった。
遺跡の奥深くから、石化していた骨である化石が次々と動き出し、古代の恐竜たちが再びこの世界に牙をむく。
岩壁が砕け、柱が崩れ、地面は轟音とともに揺れ動く。
赤黒い空気に包まれ、破壊と混乱が渦巻いた。
「……まだ増えてる!」
ティカが叫び、身をすくめる。
「気をつけろ!全員生きて帰るんだ!そしてタロとイヴを守らなきゃ!」
ノラが叫ぶ。
拳を握り、恐竜の群れと祭壇の残骸を見据える。
クロがノラの隣で冷静に指示する。
「回避しつつ、出口を探すんだ。無理に戦うな。」
だがノラは、ただ逃げるわけにはいかなかった。
祭壇で形を保つルーン石と、月の石がまだ残されていたのだ。
もしこれを奪われれば、コドラたちがもう一度何かをし、世界は取り返しのつかない混乱に陥るかもしれない。
「俺は、ルーン石を回収する!」
ノラが叫び、鍛錬の古代種化した。
剣歯虎族の牙と身体の模様、肉体が変化する。
凛々しくも勇ましいその姿のノラの眼には暴走してた凶暴さは無くなり、優しさが灯る。
「お前のその姿は一体何だ…!!」
コドラはノラに叫ぶ。
古代種化したノラを見て
ミロとティカが頷き、二人はタロとイヴを抱きながらクロに見守られる。
大幅に身体能力が向上した崩れる階段を蹴散らしながら進むノラの前に、コドラとスガイズが立ちはだかる。
「このルーン石は渡さぬ!」
コドラが咆哮し、スガイズが舌なめずりするように身構える。
ノラは冷静に間合いを測り、素早く左右に飛び躱す。
恐竜の咆哮と瓦礫の崩落の中、石を抱えたまま二人をかわす。
古代種化したノラの動きを捉えられずに
コドラもスガイズも唖然とした。
そして見守っていたクロ動き
連携し、背後からスガイズを押し返す。
「返してもらうぞ!」
ノラが叫ぶ。
腕に抱えた四つのルーン石と、共鳴する月の石が蒼く光り、ノラの義手も淡く光った。
まるで、ノラと仲間たちの意志を宿したかのように輝く。
恐竜たちが遺跡群を徘徊し、ノラたちの行く手を阻む。
しかし、ノラたちは冷静に動き、ルーン石と月の石を確保しながら、脱出の道を切り開く。
ミロとティカは後方でタロとイヴを抱え、ノラとクロの指示に従う。
「やっと……全部回収できたか……」ノラが息をつく。
「まだ油断はできない……ベルとオロチを探すんだ」
クロが言う。
しかし遺跡は恐竜の咆哮と崩落の音で混乱しており、二人の姿は見つからない。
仕方なく、ノラたちはベルルに案内してもらった安全な通路を戻ることに決めた。
南東湖へ向かい、ヤマトへ一旦帰還する。
――それが現状で最善の判断だった。
「みんな、怪我はないか?」
ノラが確認する。
タロとイヴは泣きながらも頷き、ミロとティカも小さく笑う。
クロは背後の恐竜の影を警戒しながら、前を見据える。
六人は固く拳を握りしめ、荒れ狂う古代の力を背に、南東湖を目指し進む。
「……次こそ、取り戻すぞ。絶対に」
ノラの決意は、雷鳴のように心の奥で轟いた。
遺跡群では、暴れ狂う恐竜たちが蠢き続け、崩れ落ちる石柱と瓦礫の間で、世界は依然として混乱の渦にあった。




