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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
14章 レプタ(2)

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176/201

第176話 騙し討ちの卑怯者

ノラは警戒を強めながら、レプタの黒い泥道を踏みしめた。


クロが鼻をひくつかせる。

「臭う……獣と血と、腐った水の匂いだ」


ティカは肩をすくめながらも

「嫌な感じね。空気が重い」と呟いた。


「……タロ、イヴ。もう少しです」

その後ろを歩くミロも呟く


そこへ、ぬめった音を立てて二つの影が現れた。

「よく来たな。待っていたぞ」

舌を鳴らすような声。コドラの鋭い瞳が光る。


隣でスガイズが大きな目をギョロギョロさせ笑った。

「案内してやる。タロとイヴはこっちだ」


ノラは目を細めた。

「お前らがわざわざ案内役とはな。どういう風の吹き回しだ?」



「ふん、疑い深いな。仲間の二人に会いたくないのか?」

スガイズが肩をすくめると、ティカがノラの腕を掴んだ。

「ノラ、行こう。急がなきゃ」


ノラは小さく息を吐き

「……わかった。だが妙な真似をすれば容赦しねぇ」

と睨み返した。


彼らは案内に従い、朽ちた遺跡群の中へと進んでいった。


壁には無数の爪痕と、干からびた苔のような血の跡。


やがて視界が開け、巨大な骨が並ぶ祭壇にたどり着いた。


クロが低く唸る。

「……巨大な骨。これがまさか……恐竜か?」


「恐竜だけじゃない」

ミロの声が震える。

「トヒの……亡骸もある」


その言葉にコドラが薄く笑う。

「そうだ。こいつらは西の国ハコニワから運んできた。リーフラ族の王女よ。懐かしい名だろう?」


「何ですって……!?」

ミロの目が見開かれる。

「まさか……牧場から攫われたトヒ達って……!」


「温厚な連中だったな。虚ろで何をしても涙を流し喚くだけだった。だが死ねば、こうして立派な装飾になる」

コドラの嘲笑に、ミロの拳が震えた。

「あなた達……どこまで腐ってるんですか…!!!」


ノラが止めようとしたその時

背後の通路から重い足音が響いた。

沼族の兵士たちが現れ、その手には縄で縛られた二人。


「タロ! イヴ!」

四人が叫ぶ。


二人は傷だらけの姿で引きずられてきたが、しっかりとノラ達を見つめていた。

「みんな…捕まってごめん…!」

イヴの声がかすかに震える。


「ごめんなさい、遅くなりました!」

ミロが前に出ようとした瞬間。


スガイズが素早く動き、ミロの腕を掴み短剣を喉元に置く。


同時にコドラの尾が閃き、ティカの首元に冷たい刃が当てられた。

「動くなよ?次に一歩でも進めば、王女二人の喉が裂けてしまうかもな」


「コドラ…この卑怯者…!」

ノラが唸るが、クロが腕で制した。

「落ち着け、ノラ。……何が目的だ」



コドラはニヤリと笑う。

「簡単なことだ。お前たちが持ってきた“力”、“優しさ”、“命”のルーン石、そして“共鳴の石”――それを渡せば、四人を解放してやる」


ノラの瞳が鋭く光った。

「…お前ら、最初からそのつもりで俺達を呼び込んだな」


「そうだ。騙される方が悪い」

スガイズが嗤う。


ティカが苦しげに声を漏らす。

「ノラ……ダメ……渡したら終わりよ……!」


ミロが歯を食いしばり、涙を滲ませる。

「私たちのせいで……!」


ノラはゆっくりと頭を下げ、言葉を絞り出した。

「……わかった。だが、条件がある」


「ほう?」コドラが目を細める。


「四人を放せ。その代わり、俺が石を持って行く」


「交渉か。いいだろう」

そう言いながら、コドラの尾がわずかに持ち上がる。


その動きにノラは気づいたが、もう遅かった。

沼の底から泡が弾け、濁った風が吹き抜ける。

スガイズが叫んだ。

「ナーガ様準備が整いました!!」


地鳴りのような唸り声が響く。

ノラが拳を握りしめた。

「……やっぱり。これが罠の本番か」

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