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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
13章 ヤマト(2)

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169/201

第169話 ティカとシバ

朝の光が、ヤマト無双流の野外訓練所を淡く照らす。

竹林の間を風が走り、葉を揺らす中、ティカは長い鞭を握りしめ、静かに構えた。


「行きます、シバ。」

鋭い声に、鞭が僅かに震える。

空族としての凛とした気配が漂う。


シバは弓を背に背負い、短剣を片手に握る。

クールな眼差しでティカを見つめ、静かに間合いを詰める。

「えぇ、私も本気よ。」


互いに沈黙の間を置き、呼吸を合わせる。

シロから受け継いだ同じ教え――だが、稽古の場と時期は違う二人。

師の教えを胸に、誇りを賭けた戦いが今始まろうとしていた。


ティカの鞭が風を切り、長い軌跡を描いてシバに迫る。

シバは素早く短剣を構え、鞭を受け流すと同時に弓を引き、鋭い矢を放つ。

ティカは身をひるがえし、矢を鞭で弾き返す。金属と革の衝撃が森に響き渡る。


「すごい……鞭の間合いがまるで手足みたい!」

「シバ、矢の速度も私を押さえきれないわ!」


互いの攻防は激しく、戦いの度に鞭と短剣が火花を散らす。

ティカの鞭は長く伸び、回転するごとに間合いを支配し、攻撃と防御を同時に行う。

シバは素早い足さばきで間を詰め、短剣で鞭を止め、弓からの矢で遠距離の圧力を加える。


「まだ甘い……!」

ティカが鞭を回転させ、シバの短剣をはじく。

シバは反撃に出て、矢を放ちながら近距離に踏み込む。

二本の短剣が鞭の軌道を切り裂き、ティカの防御の隙間を突く。


互いに呼吸を乱しながらも、目には戦士としての炎が灯る。

「あなたの動き……私も負けていられない!」

「シバ、あなたの間合いの読みも鋭い……!」


鞭と短剣、矢と足捌き。互いの技がぶつかり合い、野外訓練所に緊張の渦を巻き起こす。

地面を蹴り、竹の葉を散らし、風と光を巻き込んで二人の戦闘はますます激しくなる。


一瞬の油断も許されず、攻防の連続。

「よし、次は……!」

ティカが鞭を全力で振るい、シバは弓を素早く放つ。

矢は鞭に当たり、反動で跳ね返る。

しかしシバは短剣でそれを受け止め、体を低く回転させて攻撃をかわす。


二人は互いに笑みを浮かべる。勝敗よりも、互いの技量を試し、切磋琢磨する充実感があった。

「シバ、あなたの反応速度、相変わらず鋭いわ。」

「ティカ、鞭の制御、先程より格段に良くなった。」


陽光が竹林を赤く照らす中、ティカの鞭とシバの短剣と弓がぶつかり合い、木々に反響する音はまるで戦いの詩のようだった。


その日、二人の女性戦士は師・シロの教えを胸に、互いの力と誇りを磨き合った。

空族次期女王としてのティカ、六破としてのシバ。

異なる道を歩んでも、同じ師に導かれた戦士としての心は一つ。


互いの呼吸と技が重なり、二人の戦いの熱は夕陽に溶けていった。

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