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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
13章 ヤマト(2)

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第168話 杖との呼吸

ヤマト無双流の道場総本山。

朝の光が差し込む中、ミロは先ほどの杖術の訓練を終え、汗を拭いながら深呼吸していた。


「ふぅ……やっぱり、杖は奥深いですね。」

ミロは静かに呟く。

昨日学んだ“間と呼吸で制す”感覚がまだ体に残っている。

しかし、頭では理解できても、筋肉と心が完全に同調していないことを感じていた。


「いいわ、その意識よ。」

ビャクは隣で杖を回しながら、妖艶な微笑を浮かべる。

「次は、単純な動きではなく応用よ。実践を意識しなさい。」


ミロはうなずき、道場の中央に静かに足を踏み入れる。

「応用……ですか?」

「えぇ。相手は決して一方向から攻めては来ない。間を読む力、呼吸を読み取る力、そして心の動きもね。」


ビャクは杖を軽く振り、空気を裂く音を立てる。

その鋭さに、ミロは自然と身を引く。

「杖を振る時、力だけで振らない。全身で攻め、全身で守る。それを意識するのよ。」


ミロは杖を握り直し、呼吸を整える。

昨日とは違い、攻守の切り替えを意識した軽いステップを踏む。

ビャクの杖が一瞬間を空けて迫る。

ミロは反応し、かわしながらも即座にカウンターの動きを試す。

「……これですね、全身で杖を使う感覚!」


ビャクは頷き、軽く杖を振る。

「いいわ。でも忘れないで。戦いは一瞬の判断よ。間違えればすぐに形勢が逆転する。だから意識を集中させなさい。」


ミロは集中力を高め、草むらの影や微かな風の揺れまで視界に入れる。

杖の先に意識を集め、ビャクの動きを読む。

その感覚が体に染み込む瞬間、ミロの動きは昨日よりも滑らかになった。

「……体が自然に動く……」


ビャクは微笑みながら杖を地面に軽く叩く。

「そう。今の感覚を忘れないで。守るだけでなく、相手の意図を崩すことも戦いの一部なの。」


ミロは息を整え、ふと空を見上げる。

朝の光が差し込み、影が長く伸びる道場。

仲間を守るために、まだ足りない力があることを感じつつも、少しの自信が芽生えた。


「ありがとうございます、ビャクさん。昨日より、少しでも杖と呼吸が一体になれた気がします。」


「ふふ、いい表情になったわね。これからは杖術を使った槍術の応用訓練が増増やすわ。そうすれば貴方は槍を使いこなせる。」

ビャクの目には期待と軽い挑戦の光が宿る。

「でも、貴女ならできる。王女としてではなく、一人の戦士として成長する力があるもの。」


ミロは杖をしっかり握り直し、微笑む。

「はい。私は皆を守る力を、必ず手に入れます。」


風が吹き抜け、木々が揺れる。

訓練所に立つ二人の影が長く伸び、互いの決意を映し出す。

今日の訓練は、単なる技術習得だけではなく、心の覚悟を深める一歩となったのだった。

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