第158話 ヤマト到着
ヤマトの大地に、ノラたちは久々に足を踏み入れた。
風に揺れる木々の音が懐かしさを運び、仲間たちの胸にさまざまな思いが込み上げる。
「ひさしぶりだな。他の国も見てきたけど、やっぱりヤマトもデカいな!」ノラが豪快に言った。
タロは目を輝かせ、跳ねるように応える。
「ほんとだねっ! 一回ノラとクロと来たことあるけど、街もすごいね!」
イヴもその言葉に頷く。
ミロは静かに微笑み、丁寧な口調で言った。
「わたくしも幼い頃、父ブルに連れられて一度だけ参りました。その時の城門……今も鮮明に覚えておりますわ」
クロが仲間に向かってタメ口で言う。
「久しぶりの地に立つけど、今は報告が最優先だ。王に大事なことを伝えないと」
ノラたちはまず、議事堂への謁見を申請するため城門の衛兵に頭を下げた。
「犬王チャピ様、猫王ライガ様への謁見を希望します。緊急の報告がございます」
衛兵は一瞬目を見開いたが、クロの真摯な態度を認め頷く。
「かしこまりました。議事堂の奥へご案内します」
長い廊下を進みながら、ノラは周囲の石造りの壁や彫刻を見渡す。
「久しぶりに来ると迫力あるな……」
タロも興奮気味に続く。
「ねぇねぇ、ノラ! あの大きな像、前に来たときもあったよね?」
クロは仲間に向かって軽く言う。
「落ち着けよ。急ぐから、話はあとだ」
やがて議事堂の奥、王の間の扉が開かれる。ノラたちは深く頭を下げながら一歩踏み入った。
「犬王チャピ様、猫王ライガ様。お久しぶりです。急な訪問にも関わらずお時間をいただき、感謝申し上げます」
クロが落ち着いた声で広間に響かせた。
チャピが柔らかく頷き、笑みを浮かべる。
「よく戻ったな、クロ、ノラ。そして仲間たちも……顔ぶれが増えたようだな」
ライガは鋭い眼差しでクロを見つめる。
「ただの帰還ではないな。話せ、何を抱えてここへ来た」
クロは、そのまま落ち着いた声で報告した。
「実はレプタで不穏な動きがあります。沼王ナーガと側近のコドラ、まだ正確にはわからないですが……旅の中での出来事を纏めると、ナーガとコドラは全てのルーン石を使い何かを企んでいる様子です。推測にしか過ぎませんがレプタの壁画に記されていた太古の未知の存在、恐竜と呼ばれる生物を復活させようとしている可能性があれば、世界への被害は甚大です。」
広間にざわめきが走る。チャピが重く頷き、低く告げた。
「恐竜……旧時代、いやトヒよりも遥か昔に生きた生物で、姿も生態もほとんど不明。未知ゆえに畏怖される。甦れば……我らの手には余るかもしれぬ」
ライガも低く響かせる。
「未知の生物は世界の災厄にもなる。油断は許されぬ。我らの国のみならず、世界が危機に晒されるだろう」
ノラは胸に拳を当て、豪快に答える。
「もちろんです。お二人には、リーフラ族王ブル様と空王イーガ様に急いで集まってもらい、この危機を話し合って頂きたいです。俺たちはその間、仲間と共に備えます」
ティカは厳格な瞳を輝かせ、毅然と告げた。
「父が万が一来られぬ場合、次期空族女王として私が代わりに話し合いに参加いたします」
ミロは静かにうなずき、丁寧に言った。
「私もリーフラ族王女としての責務がありますので、万が一父が来られない場合はノラさんたちと共に参ります。ナナシの世界のためにも」
タロとイヴも声を揃え、元気に叫んだ。
「うんっ! みんなと一緒だよ!」
「絶対、平和を守るんだ!」




