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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
12章 北東湖

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153/201

第153話 イヴと月の石

白銀の龍の言葉を胸に、イヴは深く息を吸い込んだ。

胸の奥から、淡い光が静かに広がっていく。

それは彼女の夢の力

――皆と繋がり、分け与える温かな光。

ノラ、クロ、ミロ、ティカ、タロ、それぞれの心に流れ込み、ひとつの大きな光となって包み込む。


「行こう、月へ!」

ノラが拳を掲げ、仲間たちは頷いた。


次の瞬間、光は翼となり、一行を夜空の彼方へと押し上げた。

湖面が遠ざかり、青き星が下へと広がる。

風も空気もない宇宙で、ただ夢の力が彼らを導いていた。


やがて、灰色の大地が目の前に迫る。

「これが……月……」

イヴが思わず声を漏らした。

一面に広がる岩と無数のクレーター。

湖の緑とも、森の彩りとも違う世界。


「すごいや……」

タロの瞳が星空を映し、クロも静かに息を呑んだ。

「これが、星の外……。まさか月に来れるなんて…。」


そのとき、ノラの義手が淡く輝いた。

最初は微かな光だったが、月に足を踏み入れるごとに強さを増し、まるで導き手のように震えている。


「義手が……反応してる?」

ノラが腕を見下ろす。

ミロが冷静に分析した。

「ルーン石を共鳴させる“月の石”。その在り処を示しているのでしょう」


光に導かれ、仲間たちは月面を進む。

クレーターの影を抜け、険しい岩場を越えた先

――巨大な割れ目の中心に、ひとつの石が眠っていた。

それは白銀と蒼を帯び、心臓の鼓動のように脈打っていた。


「……これが月の石か」

クロが息を呑む。

ティカは膝をつき、石にそっと触れた。

すると彼らのルーン石が一斉に共鳴し、澄んだ音が月面に響き渡る。


その音は、まるで星々の歌のようだった。


夢が叶い言葉を発せていなかったイヴは、両手を胸に当て、涙を浮かべ

皆に告げた。

「見て……あの星。私たちの故郷だよ。綺麗だね…。皆本当にありがとう……」

振り返れば、遥か彼方に青く輝く星が浮かんでいる。

森も、湖も、仲間も、大切な者たちも、すべてがあの小さな光に宿っている。


ノラは低く言葉を紡ぐ。

「守らなきゃな。あの星も、そこに生きる全部も。ナーガの思惑を阻止する為にも。」


クロが微笑む。

「うん。種族も立場も関係ない。ただ一緒に生きていくために」


ミロも静かに続けた。

「そうですね。信じ合い、協力し合う力こそ、世界を繋ぐ礎になる」


タロは胸を張り、声をあげる。

「みんなで約束しよう! この星を、必ず守るって!」


ティカは無言で頷き

イヴは涙を拭いながら強く言った。

「そうだね。私たちが信じる夢の光が、皆の幸せに繋がるんだもの」


六人は月の石を囲み、手を重ね合わせた。

その瞬間、義手の光と石の輝きが重なり、強大な共鳴が生まれる。


「そういえば、この月の石思い出した。義手作ってもらう時に間違えて持って怒られた石だ…。お馬鹿の記念に組み込んだぞ。って作ってくれたおっちゃんに言われたの今、思い出したよ。懐かしいな…。」

ノラが呟いた。


仲間たちは再び龍の言葉を思い出す。

夢の力を使え。強き信頼をもって。


イヴは深く目を閉じ、夢を解き放つ。

光が一行を包み込み、月面に眩しい閃光が走る。


「帰ろう、生まれた星へそして、北東湖へ!」


その声に呼応するように、仲間たちの絆はひとつとなり、星々を越えて帰還の道を描き始めた。

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