第152話 夢の強さ
白銀の龍の声は湖面に静かに降り注いだ。
「夢の力とは何ぞや。その望みの強さに比例する。強く願い、夢を見る者ほど、その想いは大きな力となる。だが、その力を地上の者が扱うには一つの条件がある。――信頼だ」
ノラは短く笑った。
「信頼、か……俺たちにはもうあるだろ!」
クロが頷き、穏やかに言う。
「互いを疑ったことなんてないよね。ここまで来られたのも、皆を信じてきたからだ」
ミロは柔らかな声で続ける。
「そうですね。私たちの絆はすでに固く結ばれています。だからイヴちゃんの夢も、皆で背負えるはずです」
龍は静かに目を細める。
「その通りだ。トヒの夢は種子の如し。奪えば儚く、分かち合えば永く続く。汝らの魂はすでに結ばれておる。ならばこそ、夢は形を得る」
タロが両手を握りしめて笑う。
「やっぱりそうなんだね! 僕たちはもうずっと仲間だ。だから僕、もっと強くなってみんなを守るよ!」
イヴは俯き、小さな声で微笑む。
「……私の夢を、皆が一緒に叶えてくれるの?」
ノラが真っ直ぐに答えた。
「当然だ。イヴ一人の夢じゃない。俺たち全員の夢だ」
ティカも静かに頷く。
「その証を、ここで形にしましょう。龍の教えを正しく受け継ぐために」
イヴは仲間たちを見回し、胸に手を当てて強く言った。
「……私も、ずっと皆を信じてた。そしてこれからも変わらない! だから皆、一緒に私の夢を叶えてください…。そして月の石を持ち帰ろう!」
龍は儀式の手順を示した。
――トヒの心を澄ませる。
――ナチュラビストは誓いを立て、呼吸を合わせ、視線を交わす。
――互いの弱さも強さも受け入れ、夢を「願いの光」として心に汲み取る。
「強制は禁忌。夢は尊きもの。奪えば毒となり、双方を蝕む……よく心得よ」
ミロは深く頭を垂れた。
「私たちはその教えに従います。イヴちゃんの夢を共に叶え、必ず月の石を持ち帰ります」
イヴは震えながらも一歩前へ進み、目を閉じた。
ティカが優しく手を添え、ミロが呼吸を合わせるよう導く。
次の瞬間――イヴの胸から淡い光が溢れ、仲間たちを包み込んだ。
ノラの義手が温もりを帯び、クロの瞳に光が差し、タロの胸に小さな鼓動が宿る。
「……来た!」タロが歓声を上げる。
クロは感極まり、静かに呟いた。
「たくさん共に乗り越えてきた絆は、本物だ……」
ノラも目を閉じ、胸の奥で確かな力の芽生えを感じていた。
龍は満足げに頷く。
「よかろう。イヴよ、そなたは月へ行き、月の石を求めよ。そなたの夢は月へ向いておる」
イヴは震える声で誓った。
「はい……行きます。皆と共に。ずっと憧れた月へ」
ノラが拳を握りしめる。
「決まりだな。イヴの夢は、俺たち全員で支える!」
龍はさらに告げる。
「信頼が深ければ、夢の力は長く強く作用する。汝らはすでに模範となっている。その絆を絶やすな」
ミロは静かに誓う。
「力は人を守るために。必ず正しく伝えます」
「ならば四つのルーン石を共鳴させる特別な月の石を求めよ。果たせば命の石を授けよう」
湖王マナスが祈るように告げる。
「無事に帰られることを願っています」
仲間たちは深く頷き、湖に響く誓いを胸に刻んだ。
月への道は遠い。だが、すでに固められた絆と夢の光は、彼らを確かに導いていた。




