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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
12章 北東湖

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第147話 元破邪衆-六破-シロ

湖面の霧がわずかに揺れる中、クロはシロの前に立った。

双剣を握る白き犬族、かつての破邪衆-六破-の一席。

クロは旅で各族の猛者と戦い、道中ノラとも稽古を続け己の力を磨いてきた。

しかし、目の前にいるシロの気配は、過去のどの戦いとも異なる圧倒的な威圧感に満ちていた。


「兄さん……!」

クロは小さく息をつき、覚悟を決める。

だが、戦いの幕が開くや否や、シロはヤマト無双流奥義「柳」にて双剣を軽やかに、そして正確無比にクロの首元へと置いた。

その瞬間、勝敗は決していた。


膝をつき、首元の刃から視線を逸らすクロ。

首元に血が流れてるような熱が伝わる。

過去の旅路で培った全ての技が、今、無力に思えた。


クロの首元から刃を離し、シロは冷たく一言

「次」と告げる。

静かに構えを解くこともなく、ただ次の挑戦者を促す。

その言葉の重みは、湖の霧を切り裂くように響いた。


そのとき、ノラがクロの肩に手を置く。

熱い声が響く。

「シロとやり合えるのは俺くらいさ。後ろに下がって皆と少し待っててくれ。俺ですら見たことないあの、シロの仏頂面をすぐ笑顔にするから。」


握り直したヒトフリから、ノラの瞳に光が宿る。

湖面に映る白き霧と相まって、光と闇が一瞬で交わるかのような威圧感。

ノラとシロ、二人の破邪衆がついに直接対峙する。


「久しぶりだな、シロ。昔のままか?」

ノラの問いかけに、シロは無言。

ヒトフリを振り上げ、風を切るその軌跡が湖畔に鋭く響く。


ノラの問いかけは止まらない。


「覚えてるか?俺たちが共に戦った日々をさ!

俺はあの時からずっと、強くなってやると誓ってやってきたぜ!」


シロは双剣を交差させ、一切言葉を発さず、攻撃と受けの正確さで応える。

ノラの刃を受け止め、弾き、時に受け流すその所作は、まさに無言の指導だった。


「俺は…あの頃の俺じゃない!今の俺がここにいる!」


二人の六破はヤマト無双流の奥義を放ち合う。

刃が交錯するたび湖面の水しぶきが舞い上がり霧の中で光と影がぶつかり合い、問いかけるノラの声は戦いの度に強まり、シロの無言は逆に重く、圧倒的な存在感を放った。


「相当修業を積んだのに…シロ、どんだけ強くなってんだよ!龍に指導でもしてもらったのか?」


そう言うと、シロはヤマト無双流奥義と何か別の流派を組み合わせた剣技をノラに叩きつける。

ノラは咄嗟に奥義を受け止め、必死に耐える。

「こんな技知らない…。やるじゃんシロ…!」

そして互いの刃が激しくぶつかる一瞬、ノラは意を決し、シロが不在の間に身に着けた新たな奥義をヒトフリにのせて振り切る。

双剣の攻撃を受け止めたシロも耐えきれず、ついに双剣を弾き飛ばした。

白銀の刃が湖面に一瞬光を散らし、戦場に静寂が訪れた。


「僕も腕を上げたんだけど…相当強くなったね。久しぶり、ノラ」


シロは微かに笑みを浮かべ、かつての相棒のような柔らかさでノラを見た。

その笑顔は戦いの緊張を溶かし、五人とティカ、湖王マナスの胸に深く刻まれた。


湖面に漂う霧は、戦いの激しさを静かに包み込み、光と影が再び落ち着きを取り戻した。

ノラの瞳には決意と達成感が宿り、クロは膝をつきながらも誇らしげに立ち上がる。


試練と再会、そして絆。

湖に反射する光はその場の全員を静かに見守るように照らしていた。

そして、龍への道が切り開かれた。

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