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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
12章 北東湖

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143/201

第143話 清き湖の王マナス

湖面に霧が漂い、北東湖は静謐な空気に包まれていた。

一行が湖畔に足を踏み入れると、ティカが深呼吸し、湖の奥へと歩みを進めた。


「マナス様……お時間を頂けますでしょうか」

 ティカの声に応じるように、湖面の向こうから柔らかく波立つ光が集まり、一人の女性が現れた。

マナス――湖王として湖を護るナチュラビスト。

その姿は、優雅に水面を滑るマナティーのように静かで、清らかで美しい。


「ティカ……お久しぶりです。ご案内、ありがとうございます」

 マナスは穏やかで澄んだ声を発し、湖面に反射する光が彼女を神々しく彩った。


 ティカ以外の一同は、初めて目にするその美しさに言葉を失った。ノラが深く頭を下げる。

「は、初めまして。ノラと申します」


 クロも息を整え、低く礼をする。

「クロです。よろしくお願いします」


 タロは緊張しつつも笑顔を見せ、

「僕はタロです。失礼のないよう、しっかり挨拶します」


 イヴは小さく手を合わせ、震える声で

「イヴです……どうぞよろしくお願いします」


 ミロは少し照れながらも丁寧に

「私はミロと申します。ご挨拶申し上げます」


 マナスは静かに微笑み、優雅に頷いた。

「皆様……そのように丁寧にご挨拶を頂き、感謝いたします」


 ティカは深く一礼した後、今回の事情を丁寧に説明し始めた。

「実は北東湖に向かう途中、沼族の王とその部下たちがルーン石を集め何かを企んでいる可能性があり、私たち空族が悪であると吹聴しています。そのため、世界に危険が及ぶかもしれません」


 マナスは静かに頷き、湖面の反射を見つめながら言った。

「なるほど……そういった事情でしたか。理解いたしました」


 湖の水面を背景にマナスの瞳が淡く光る。

彼女の口調は柔らかく、だが確かな力と決意を宿していた。


「他の湖王たちと比べ、私の試練は皆様にとって、とても苦しく辛いものになるかもしれません。それでも、この試練を受けられますか?」


 一同は互いに視線を交わし、少しの沈黙の後、決意を胸に答えた。


「はい。私たちは試練を受けます」

 ノラが力強く宣言し、他の仲間たちも頷いた。


一行は互いに息を整え、試練への覚悟を胸に秘める。


「承知しました。では、皆様が湖王として認めるための試練を始めましょう」

 マナスの声が湖面に響き、一行に近づき腕を広げ掌から暖かな優しい光を発した。

 

北東湖の静かな湖畔に、これから始まる試練の気配がゆっくりと立ち上り、霧と共に広がる中

ノラとクロ、ミロとタロとイヴはその場に倒れ意識を失った。

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