第136話 真実と使命
広間にまだ余韻が残っていた。
シロの死の真相を知りノラもクロも涙を流したが、その涙はもう絶望のものではなかった。
「……兄さんはノラを守って、その光に撃たれた。俺も命を捨てでも大切な人を仲間を守る気持ちを受け継ぐよ。」
クロの声は震えながらも強かった。
ノラも静かにうなずいた。
「シロは俺を救ってくれた。そして、シロと過去の仲間たちが残したものを、俺が繋いでいく。過去に囚われるんじゃなく……未来を見据えて歩くんだ」
その決意に、その場に居た全員が真剣な眼差しを向ける。
「僕たちも……ただ守られる存在じゃない」
タロが胸を張る。
「夢を持って、願いを形にできるなら――僕の夢は、みんなで笑って生きることだね!」
イヴも続ける。
「私の夢は……傷つけ合う世界を終わらせること。お月さまが闇を照らすように、私の願いも仲間を導く光でありたいのです」
二人の声には、ただの子どもではない使命感が宿っていた。
ノラは目を細め、クロは深く息を吐いた。
心の奥に、小さな希望の芽が芽吹いていた。
だがその時、イーガの低い声が響いた。
「忘れるな。真実はまだ一部に過ぎぬ」
彼は険しい表情で語る。
「ナーガから聞いたと言っていた“空族こそ悪”という言葉……あれは虚偽だ。奴らの狙いは別にある」
ノラが眉をひそめる。
「……やはりそうだったのか」
クロが拳を握る。
「俺たちを欺こうとしていた……」
タロとイヴも顔を見合わせた。
イーガは毛嫌うように吐き捨てた。
「詳しくは分からぬ。だが、沼王ナーガと側近のコドラは一部の沼族と手を組み、「恐竜」という古代の生物の復活を望む密教を発足させているかもしれない情報がある。他の王達はまだ知らないと思うが、奴らが主導し裏で何かを企んでいる」
その言葉に、広間の空気がさらに張り詰める。
ノラとクロは互いに視線を交わした。
――これから戦うべき相手は、思っていた以上に深い闇を抱えている。
タロは唇をかみ、イヴは静かに目を伏せた。
だが彼らの胸には、もう迷いはなかった。
「僕たちは夢を形にする。どんな闇が立ちはだかっても」
タロの声は真っ直ぐに響いた。
「私たちが夢を失わなければ、闇に呑まれることはありません」
イヴの言葉は、仲間たちの心を照らすようだった。
「父ブルもナーガ様には疑いの目を向けていた事を私は記憶していますし、ナーガ様がリーフラ族と空族を忌み嫌っていた事を感じていました。」
とミロは答える。
広間の空気は重さと希望を併せ持ちながら、新たな戦いへの予兆に包まれていた。




