第134話 守られし夢の力
空王イーガの広間にて、五人は静かに並び立っていた。
天井の光が差し込む中、タロは胸を弾ませ、イヴは静かにタロの隣で見守る。
ノラ、クロ、ミロも緊張を隠せないまま、空王の言葉を待った。
「貴公らが知らねばならぬのは、この世界における夢と命の価値だ」
イーガの声は低く響き、広間に重厚な威圧感を落とす。
「お前たち――タロとイヴであってるか?
二人の存在は、この地、そしてこの世界において極めて特別である」
タロは小さく息を飲む。
「僕……何か特別なんですか?」
イヴも穏やかにうなずき、冷静に答えを待つ。「私……?」
「保護種、そして希少なレア種――お前たちはその存在に該当する」
イーガは翼を広げ、力強く言葉を紡ぐ。
「保護種は言葉を理解できる者、レア種は言葉を理解し、夢を描き、実現する力を持つ。お前たちの夢は、信頼度に応じて我らナチュラビストに力として現れる」
ノラは目を見開く。
「つまり……タロとイヴの夢の力、思いの力が、あの時も影響を与えていたのか」
クロも静かに頷く。
南西湖での戦いの中、二人の夢の片鱗を感じ取った経験が蘇る。
「この存在を詳しく知る者は、リーフラ王と四天王、そして我と娘ティカのみである。秘密を守るのは、力の誤用を避けるためだ」
イーガの視線はタロとイヴに注がれる。
「レア種を捕食した場合、その夢の力は一時的に弱めて具現化される。信頼度に基づく自然な力の方が、はるかに強力だ」
タロは眉をひそめる。
「食べられたら、ナチュラビストたちは夢の力を使えるんですか?」
「そうだ。しかし過去、統一戦争の際に空族の戦士がレア種を捕食し、暴走した過去がある。捕食した者は同族に危険視され、その場で処刑された」
イーガの声に、五人の胸が締め付けられる。
夢を守るための秘密が、過去の悲劇と直結していたのだ。
イヴは静かに口を開く。
「だから、私たちの存在は秘密にされているのですね」
「正確には、生かされるために守られているのだ」イーガは頷く。
「お前たちの夢は、この世界に希望と力をもたらす。しかし、その扱いを誤れば危険になる。だからこそ力を理解し、責任を持って歩む必要がある」
タロは拳を軽く握り、笑みを浮かべた。
「僕たち、夢の力を正しく使うために、これからも仲間と一緒に頑張ります!」
イヴも静かに頷き、優しく微笑む。
「ええ、共に歩み、夢を信じましょう」
空王イーガは満足げに翼を閉じる。
「ならば、その夢の力を胸に、未来を切り開くが良い。貴公らに期待している」
夜の広間に、戦いの余韻と新たな覚悟が満ち、タロとイヴは自らの力と責任を再認識した。
五人は未来への一歩を、静かに踏み出すのであった。




