第133話 空王の風
空王イーガの翼が広がる王の間に、五人は足を踏み入れた。
広間は静まり返り、天井の高みから光が降り注ぐ。
タロは胸を張り、太陽のごとき熱を放ちイヴは月光のように冷たくも柔らかく歩を進める。
その二つの光が、空王イーガの圧倒的な存在感と重なり、空間全体を威圧する。
ノラの胸に、ティカの背中と統一戦争の記憶が浮かぶ。
シロの最後の瞬間を知る空族。
あの影の存在が、静かに彼女をざわつかせる。
しかしクロに肩へと手を置かれ、スワロとナイトの穏やかな佇まいを見て少しずつ心を落ち着ける。
「よくここまで辿り着いたか……だが、ここに立つ者の覚悟を我が眼で確かめるまでは、安堵など許されぬ」
イーガの声は重く、広間に低く響き渡る。
威厳と圧倒的な強者感が、五人の胸を押し付けるように伝わり自然と背筋が伸びる。
瞳は冷徹でありながらも、戦いを経た者への敬意を内に秘めている。
スワロとナイトは即座に姿勢を正し、イーガの威光に従う。
五人は互いに視線を交わし、戦いの余韻と絆を胸に刻む。
ミロは杖を握り直し、心の中で戦いを振り返る。
今回の戦いで得たもの……仲間の信頼、己の成長、そして覚悟。
「僕たち、今回の出会いと戦いで、また一歩進めたね」
タロの声に、イヴは静かに頷き、二人の視線が交わる。
ノラも小さく息をつき、ティカの影とイーガの威光を思い浮かべながら心を整理する。
イーガはゆっくりと翼を閉じ、その姿勢を整える。「貴公らが持つ力と絆、無駄ではないと認めよう……だが、この先もなお、試練は尽きぬ。故に、己を見失わぬよう肝に銘じよ」
その言葉に、五人は自然と背筋を伸ばし、覚悟を新たにする。
広間には戦いの余韻と、次なる一歩への静かな決意が満ちていた。
ノラはティカと空王の姿を思い浮かべながら視線を前に向ける。
タロとイヴもまた、仲間の成長と絆を胸に、静かに歩を進める。
夜の王の間に、戦いの余韻と新たな覚悟が満ち
未来への第一歩を踏み出すのだった。




