第132話 気高き尾白鷲
戦いが終わり、広間には静けさが戻った。ミロは膝をつき、息を整えながら杖を軽く握りしめる。
戦いの疲労はあるものの、心には確かな成長と覚悟の感覚が宿っていた。
クロはミロの隣に静かに立ち、落ち着きを取り戻すまで見守る。
タロとイヴも互いに顔を見合わせ、戦いの余韻と仲間たちの絆を噛みしめていた。
しかし、ノラの心は落ち着かない。ティカの背中に残る圧倒的な存在感と謎めいた気配が、フラッシュバックとして頭をよぎる。
統一戦争の記憶――シロの傍らから飛び立った空族の影。
あの時の空族は、まさしくティカだった。疑念と警戒心がノラの胸をざわつかせる。
「ティカ…シロの最後を知っているに違いない…」
ノラの心の奥で、過去と現在が重なる。
戦いの痛みと感情が交錯し、自然と拳を握りしめる。
しかしクロがそっと肩に手を置き、スワロとナイトも隣に控える。
仲間の存在がノラの心を落ち着け、怒りや不安が静かに整理されていく。
「今回の出会いと戦いで、私たちはまた一歩成長できましたよね」
ミロが杖を軽く振り、心の中で自分を励ます。
戦いの勝敗以上に、仲間とともに得た教訓と覚悟が、次なる戦いへの力となる。
タロとイヴも小さく頷き、互いに目で意思を通わせた。
五人の絆は、言葉以上に強く確かなものになっていた。
その時、広間の奥の扉がゆっくりと開く。
静寂の中、空族の風を纏った威厳ある影が姿を現す。
尾白鷲のナチュラビスト――空王イーガだった。
圧倒的な存在感と気高き風格を漂わせ、その瞳は五人一人一人を静かに見据えている。
「よくここまで進まれた。貴公らの努力に敬意を表する」
イーガの声は重厚で清明、広間に権威と威厳を満たす。
戦いを終えた一行への労いの言葉は、緊張と安堵を同時に運んだ。
スワロとナイトは背筋を伸ばし、即座にイーガの指示に従う。
「この先の空王の間へ案内せよ。全員を導き、適切な準備を整えよ」
イーガの命令は端的ながらも高貴な品格があり、広間の緊張感は和らぎつつも空王の威光が支配する。
五人の胸には、期待と覚悟が芽生えた。
ミロは膝をついたまま杖を握り直し、心の中で再び誓う。
ノラもティカの背中と空王の姿を思い浮かべながら、戦いから得た経験を胸に落ち着きを取り戻す。
タロとイヴもまた、仲間の成長と絆を目の当たりにし、静かに心を整えた。
夜の広間に戦いの余韻と新たな決意が満ち、五人は次の一歩を踏み出す覚悟を固めていた。




