第131話 ミロとティカ
杖と鞭の打ち合いが広間に響き渡る。
ミロは心を落ち着かせ四天王やビャクとシバの教えを思い返しながら、精一杯の間合い読みと防御を続けた。
しかし、ティカの鞭は正確無比で、風のように鋭く振るわれる。
その一振り一振りがミロの杖の隙間をかすめ、防御と反撃のタイミングを奪った。
「まだ…まだ負けない!」
ミロは心の中で自分を奮い立たせる。
力任せではなく心と覚悟を杖に乗せ、相手の動きを感じ取ろうとする。
しかし、ティカの鞭の速さと間合いの正確さには及ばず、ついにミロは膝をつく。
だが、目に浮かぶのは諦めではなく、成長への決意だった。
「ここで得た全てを…無駄にはしない」
ミロは息を整え、膝をつきながらも心に誓う。
四天王の教え、ビャク、シバの助言とそして仲間たちとの経験が、自分をさらに強くする
――そう確信した瞬間だった。
広間の端でノラは戦いを見守りながら、ふと過去の統一戦争の記憶に引き戻される。
シロの遺体の傍らから空高く舞い上がる空族の姿
――それがティカだったのだ。
頭痛とともにその記憶が蘇り、ノラの心は痛みに震えた。
しかし痛みが引くと同時に感情が爆発し、スワロとナイト、そしてクロが必死に抑え止める。
「落ち着け…ノラ」
仲間の声に触れ、ノラは呼吸を整え、やがて冷静さを取り戻す。
戦いの余韻に静かに包まれつつも、心には確かな成長と絆の実感が刻まれていた。
一方、ティカは短く一言、礼を告げる。
「手合わせ、感謝します」
その言葉とともに、空族の次期女王は広間から風のように去っていった。
背中に残る圧倒的な存在感と、謎めいた気配は、戦いの場に静かに残される。
タロとイヴはその光景を見つめ、五人の絆や決意の深さを改めて感じた。
クロはミロに向かって静かに頷き、仲間の成長を認める。
ノラもまた、ティカの姿を思い浮かべ、心の奥に疑念を抱いた。
夜の広間に、まだ戦いの余韻と静かな決意の気配が満ちていた。




