第13話 猫族の王ライガ
犬族の王チャピとの謁見を終えたノラとクロは、議事堂のもう一方の間へと通された。
そこは哲学的な静けさとは対照的に、獣の唸りを思わせる緊張感に満ちていた。
広間の中央に座すのは猫族の王、ライガ。
虎のナチュラビストだ。
荒々しい縞模様の毛並みを持ち身体と顔にも歴戦の傷を持つ王。その眼光は鋭く、ただ立っているだけで圧を放つ。
片腕を失ったノラでさえ、思わず背筋を伸ばすほどの存在感だった。
元六破だった過去もある。王位継承とともに
破邪衆の一席を自ら降りた今も、強さは滲み出ていて健在のようだ。
「……猫族の王、ライガ様」
クロが恭しく頭を下げる。
ライガは低く息を吐き、広間全体を震わせるような声を放った。
「よく来たな、クロ。そして……六破、ノラよ」
その声音は力強く、空気を揺さぶる。
「犬族は“哲学”と“頭脳“を掲げる。だが我ら猫族は“力”を掲げている。
力なき者は生きられぬ。強き者が道を切り拓く。それが掟だ。ノラもクロも分かっておるな?」
周囲に控える戦士たちが唸り声を上げる中、ノラは一歩前へ進む。
「……なら俺は、弱者は切り捨てるべきだと?」
ライガの口元が獰猛に歪む。
「切り捨てるのではない。導くのだ。
力なき者を守り、強き者が先に立つ。それが強者の責務だ」
その言葉にノラはわずかに目を伏せた。脳裏に浮かぶのは戦場で自分を庇い、命を落としたシロの姿。
「……守るための力、か」
ライガは頷き、立ち上がる。
巨体が広間に影を落とし、ノラを見下ろす。
「お前の目に宿る“覚悟”……それは戦士の証だ。
ノラ、片腕を失おうと関係ない。お前は、すでに“破邪衆”に名を刻んだ男だ」
広間がざわめく。
破邪衆。ヤマト無双流の頂点に立つ六席のみの武芸者。その名を王自らが認めたのだ。
クロは知っていたが驚きを隠せなかった。だがノラは静かに首を振る。
「……俺はまだ、答えを見つけていません」
ライガの瞳が細くなる。
「答えなど、戦いの果てにしかない。
お前の刀が示すだろうこの星に何を残すのかを」
その声は宣告であり、祝福でもあった。
広間を後にするノラとクロ。
外の光に目を細めながら、ノラは胸の内で呟く。
(守るための力……シロ、お前ならどう答える?)
風が頬を撫で、遠くで鐘が鳴った。
旅は、さらに深い領域へと進んでいく。




