第129話 空の姫
模擬戦を終えスワロとナイトに先導され、エアー中央の広間へと進む。
クロは汗をぬぐいながら、静かに心の中で「これで…空王にお会いできる」と呟いた。
タロは期待と緊張が入り混じった表情を見せ、イヴも少し緊張した面持ちで周囲を見渡す。
広間に入ると、静かな空気が漂う。
スワロとナイトも立ち止まり、先に進む足を止めた。
広間の奥から、長い銀色の髪を風になびかせた少女が姿を現す。
冷たくも鋭い瞳が五人を見据えていた。
ノラはその姿を見て思わず膝をつき、激しい頭痛に襲われた。
タロとイヴは広間の端で、そっと彼を支える。
その間、クロは静かに見守りながら、仲間の安否を気遣った。
「ノラ、大丈夫か…」心の中で呟き、目の端で二人を見守る。
少女が静かに歩み寄り、声を発した。
「初めまして。私、ティカと申します。リーフラ族のミロ様も一緒にお越しいただいていると伺いました。手合わせをお願いしたい」
その声は低く澄んでおり、空間を満たす威厳に誰もが圧倒される。
これが、空族の次期女王と噂されるクマタカのナチュラビスト、ティカなのだ。
ミロは深呼吸し、ゆっくりと杖に手をかけた。
心の中で、ビャクとシバから教わった「力だけでなく、心と覚悟を持つこと」を思い返す。
「承知しました。よろしくお願いします、ティカ様」
静かに身構え、戦いに備える姿勢を取る。
ティカは鞭を手に取り、軽やかに振るう。周囲の空気を切り裂く音が響き、広間は一瞬で緊張に包まれる。
「覚悟を持って、ミロ様」
その声には忠義を重んじる武士のような厳格さと、冷徹な決意が込められていた。
ミロは杖を握り、呼吸を整えながら慎重に間合いを計る。
力任せではなく、相手の動きに合わせ心を働かせる――四天王に稽古を受けた時の感覚が蘇る。
鞭と杖の距離を見極め、互いの呼吸を読み合う。
「恐れず、今できる全てを信じるんだ…」
心の中で自分に言い聞かせ、ミロは一歩ずつティカに近づいた。
広間の端でノラは膝をついたまま、タロとイヴに支えられながらも、仲間の戦いを見守る。
クロはその様子を見て、心の中で強く励ましの言葉を送った。
「ミロ、今まで学んだことを信じろ。心と覚悟を忘れるな…!」
夜の広間に、二人の気迫が静かに、しかし確かに響き渡った。




