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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
11章 エアー

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122/201

第122話 残像の核

ノラの息は荒く、胸は上下を繰り返していた。義手の爪には幾筋もの傷跡が刻まれ、もはやまともに振るうのも辛い。だが、彼の瞳は未だ曇らない。


 スワロは一歩退き、薄く笑んだ。

「悪くない。だが、ここからは本当の速さを見せてやろう」


 次の瞬間、ノラの視界が揺らいだ。四方八方にスワロの姿が現れる。月明かりの下、同じ残像が幾つも重なり、まるで分身が生まれたかのように。


「なっ……!?」

イヴが叫び声を上げる。

「影が……三人、四人……もっと増えてる!?」


 タロが歯を食いしばる。

「違う! 本物は一人だ……でも、速さが残像を作ってるんだ!」


 ノラは防御に徹した。だが――。

「くっ……速すぎて、どっから来るかわかんねぇ!」

次の瞬間、背に衝撃。振り返れば、左から突き。避けても、右の腹に鋭い痛み。


 無数のスワロが交互に刃を突き立て、ノラを追い詰めていく。義手で受け止めたと思えば、背後から別の刃が迫る。

「がはっ……!」

膝をついたノラの口から血が溢れる。


 スワロの声が重なるように響いた。

「これが“疾風乱影”――私の奥の手だ。速さそのものを分裂させ、相手を翻弄する。ここまで来れば、君に勝ち目はない」


 ミロが立ち上がろうとするが、クロが手で制した。

「今は信じるしかない……ノラは、まだ負けを認めてねぇ」


 ノラは地面に片膝をつき、荒い息を吐きながら笑った。

「……確かに、速ぇな。まるで風が幾つにも分かれて押し寄せるみてぇだ」


「ならば諦めろ」

スワロの声が幾重にも重なる。


「……だけどな。風ってのは、いくら分かれても……必ず“ひとつの流れ”に戻るんだろ?」

ノラの瞳に、静かな光が宿る。


 血を拭い立ち上がったノラは、両足を大地に深く踏みしめた。

「全部見切る必要はねぇ。お前がどんなに分身を作ろうが、必ず“核”がある。そこを、ぶち抜くだけだ!」


 スワロの残像が一斉に襲いかかる。十を超える影が同時に迫り、夜風そのものが刃となってノラを呑み込もうとする。


 しかし、ノラの眼差しはその中心を射抜いていた――。

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