第108話 天空の衝撃
ノラの呼吸は鋭く整い、木刀を握る手に全神経を集中させる。闘技場の空気は張り詰め、金属の光が太陽を反射する機械式闘士が、まるで生きているかのように微かに揺れた。
風が舞い、金属の翼が空気を切る音が耳を打つ。木刀の柄から伝わる振動が、ノラの体全体を戦闘のリズムに乗せる。
敵のトンファーが軌道を描き、空気の刃が頬をかすめる。衝撃波が闘技場の壁に反響し、緊張の波が全身を駆け抜ける。ノラは体を沈め、踏み込み、木刀を振り上げる。関節の軋む音が闘技場に響いた。
「……ここだ」
木刀がトンファーをかすめ、鈍い衝撃が手首に伝わる。風が舞い、光の筋が視界を走る。ノラは踏み込み、回転し、敵の重心の変化を瞬時に読み取る。空中での一瞬の駆け引き。木刀の振動、関節音、風のうねり……すべてが神経に直結する。
胸と頭に取り付けられた水晶が光を反射する。その光を頼りに、ノラは木刀の先を正確に水晶へと向ける。金属の体がわずかに揺れ、防御の隙間が生まれる。
「今だ……!」
木刀が振り下ろされ、水晶に衝突する瞬間、光が弾ける。金属の体が揺れ、闘技場全体に衝撃が広がる。ノラの全神経は木刀に集中し、体全体が呼応する。
機械式闘士が跳躍し、トンファーを振り回す。ノラは宙で体を回転させ、空気を切る音と微細な重心の変化を読み取り、木刀の先に再び力を集める。
風が頬を叩き、金属の反動が体に伝わる。ノラは空中で踏み込み、次の一撃の軌道を計算する。木刀が胸の水晶を正確に狙い、金属の体が一瞬震える。
心臓の鼓動が耳に響き、呼吸と動作が完全に同期する。視界には光る水晶だけが映り、余計なものは消えた。
「これで終わりっ!」
木刀が振り下ろされ、胸の水晶を打ち砕く。金属の体が大きく揺れ、機械式闘士は動きを止めた。闘技場に張り詰めていた緊張が解け、静寂が広がる。
ノラは地面に着地し、木刀を握った手に伝わる余韻を感じる。戦闘のすべてが体に刻まれた。
「クロ……ミロも、きっと上手く乗り越えたはずだ」
闘技場の静寂の中で、ノラは目を閉じ、仲間たちの顔を思い浮かべる。木刀の感触と風の余韻が、彼の胸に温かく残った。




