第102話 天空の門
雲を突き抜けた瞬間、刺すような陽光と凍りつくような高空の風が一行を包んだ。
眼前に広がるのは、山脈に抱かれるように築かれた都市――天空の要塞「エアー」。
外側の山は白き石灰岩ででき、切り立った崖が空を覆うようにそびえ立つ。外界からの者を寄せ付けぬ、冷たく輝く壁。
そして内側――本拠地へ通じる二つ目の山は、黒き花崗岩で築かれ、その岩肌は大地の鼓動を宿すかのように硬く、圧倒的な威容を放っていた。
一行はまず、外側の山に穿たれた巨大な門へと到着し
そこには空族の兵たちが槍を構え、鋭い眼光でノラたちを見下ろしていた。
ノラたちは案内され、一つ目の門を抜けた。
案内してくれた空族に
ミロが「イーガ様に謁見するには
2つ目の門を通れば宜しいですか?」
と訪ねた
「第2の門。ここから先に入るには、紹介所を通さねばならぬ。」
隊長らしきツバメの空族が冷たく告げる。
そして、一行はツバメの空族スワロに
案内所に行く道案内を受け向かい
他の都市と同じ「紹介所」に到着した。
だがエアーの紹介所は他の都市と比べものにならないほど広大で、巨大なホールには無数の依頼票が並び、壁面には空を模した青いタイル、天井からは光を集める水晶が吊るされていた。
クロが周囲を見渡し、眉をひそめる。
「……ただの紹介所にしては、やけに厳格だな」
受付に立つ空族の女性が静かに説明する。
「ここで課題を果たし、信頼を示した者だけが第2の門を通り王に謁見できます。
それが掟であり、この地を守る“誇り”です。」
タロは思わず肩を落とす。
「えぇ……道のり長すぎない……?」
だがイヴは毅然と顔を上げた。
「でも、これこそが夢を試す扉。乗り越える価値がある」
ミロも頷き、凛とした声を添える。
「どんなに険しい道でも進むしかないわ。空族の真実を知るために」
ノラは義手を握りしめ、強い眼差しを宿す。
「ならやるしかない。ここで逃げたら、シロにも顔向けできない」
クロもまた、静かに拳を握った。
「……兄さんの死の真実を掴むために、俺は一歩も退かない」
こうして一行は、エアーの紹介所で課せられた謁見の特別依頼に挑むことを決意した。
二重の山。そのさらに奥に聳える花崗岩の壁を越えた先で彼らは、空族の王イーガに会うために。




