2度目の自己紹介 1
「ゲーム、しゅーりょー!」
その瞬間、熱線が空中でストップ。
同時にゴルラの動きもとまった。
(いったい何がおきたんだ?)
わけがわからずその場に立ちすくんでいると、熱線もゴルラも光の粒子になって消滅した。
「ブラボー! ブラボーだよ、きみたち」
見ると、床に落としたタブレットの画面にジョーイが映っていた。
「ピンチのピンチのピンチの連続とハラハラドキドキの極限バトル。これぞまさにゲーム! 視聴者の求めるものをカンペキに提供してくれた地球人にはくしゅー!」
画面の中のジョーイが大げさに手をたたいた。
みんなが四つんばいになって、タブレットに顔を近づける。
「ジョーイさん、どうしてゴルラは消えたんですか?」
「そりゃもちろん制限時間が過ぎたからさ。ソルジャーはゲームの制限時間が過ぎると自動的に消滅するように設定してあるんだ」
「制限時間が過ぎた? それじゃあ、おれたち……」
「そう。きみたちはファースト・ラウンドをクリアしたんだ。しかも5人そろってね」
ジョーイが5本の指をひろげた。
「トイ☆ウォーズはこれまで289回開催してきたけど、ひとりも脱落者を出さないでファースト・ラウンドクリアしたのは、きみたちのほかにたった4組しかいない。それだけすごいことをきみたちは成し遂げたんだ」
パチン!
ジョーイが指を鳴らすと、こわれた棚や溶けた床が元通りになった。
「きょうのゲームはここまで。地球の時間はとまったままだけど、アルスはもう午後10時を過ぎてるからね。のこりのゲームはあしたにしよう」
もう一度ジョーイが指を鳴らすと、目の前に5つのベッドがあらわれた。
「ぼくからのプレゼントだよ。ピーチグミのベッドにわたがしの毛布。あとマシュマロのまくら。最高にスイートでハッピーな夢を見られそうだろ?」
「虫歯になる夢のまちがいだろ」
セイジがヒロムに耳打ちした。
「セカンド・ラウンドの開始時刻はあしたの朝9時。8時50分になったら、ゲームの説明をするから、みんな寝坊しないようにね!」
さわってもないのに、タブレットの電源が切れて、画面が黒くなった。
と、思ったら、すぐにまた画面にジョーイがもどってきた。
「そうそう。セカンド・ラウンドでおこなうゲームだけどね、ファースト・ラウンド以上におもしろくなると思うから、たのしみにしててね」
ジョーイがウインクをすると、今度こそ本当に電源が切れた。
「何が『たのしみにしててね』だよ。ふざけやがって」
ヤマトの言葉に、みんながうなずく。
「でも、だれひとり脱落者が出なくて本当によかったよ」
「うん。ジョーイさんもいってたよね、5人そろってファースト・ラウンドをクリアするのは、すごいことだって」
みんながおたがいの顔をみまわす。
棚や床はジョーイの指パッチンでなおったけど、みんなのからだについたよごれはそのままだ。
けど、いまはそのよごれが同じ苦しみを共にした仲間の証のように思えた。
「なあ、せっかくだし、もう一回みんなで自己紹介しないか?」
ヤマトがいった。
「せっかく、こうしてみんな生きのこったんだしさ、名前だけじゃなくて好きな食べ物とか趣味とか、もっともっといろんなこと、おたがいに紹介しあおうぜ」
「そうだな。スポーツでもゲームでも、勝負に勝つには、チームメイトのことを知っておく必要があるからな」
セイジも2度目の自己紹介には賛成みたいだ。
「ってなわけで、さっそくだけど自己紹介をはじめようぜ。まずは言い出しっぺのおれからな」
ヤマトがコホンと咳をして、立ちあがる。
「名前はもう知ってるから、それ以外のことから。おれの通ってる学校は遊美南中学校でクラスは2年A組。歳は13歳で趣味はプロレス観戦と筋トレ。あと、家がお好み焼き屋をやってて、ときどき、おれも店でお好み焼きを焼いたりするんだ」
ヤマトが両手でヘラを動かすマネをした。
「とりあえずこんな感じかな。よし、つぎはヒロムの番な」
「え? おれ?」
「おうよ。こういうのはいきおいが大切だぜ。ほら、さっさとやっちまいな」
ヤマトにせかされて、仕方なくヒロムは自己紹介をはじめた。
「ええと、それじゃあ通ってる学校から。おれが通ってるのは遊美第2小学校で、クラスは6年1組。歳は12歳で趣味はサッカー」
「たしかチームのキャプテンをしてるんだよね?」
エイルがたずねた。
「うん。でも……」
「でも?」
「いや、なんでもないよ。ええと、おれ、そんなに話すことないから、つぎは――」
「入学式の日に、担任の先生に女子とまちがわれたエピソードは話さなくていいのか?」
ドキン!
セイジの言葉で心臓が跳ねあがる。
「お、おい、セイジ。それは――」
「あと男女入れ替わり劇で、シンデレラを演じたエピソードも、みんな聞きたがるんじゃないか?」
「あ、あれはくじ引きで決まったからやっただけで、おれの意志じゃ――」
「あと5年生のときの運動会で――」
「バカ! それはだれにもいわない約束だろ!」
ヒロムはセイジの頭を腕ではさんで、締めあげた。
「おまえ、いくら親友だからって、それ以上は本当に怒るぞ!」
「わかったわかった。ギブギブ。おれが悪かったから、腕をはなせって」
「いーや、おれの気が済むまで、ぜったいはなさない!」
腕に力をこめて、ヒロムはセイジの頭を締めあげた。
ただヒロムも、本気でセイジに怒っているわけじゃない。
あくまで親友同士、力の加減がわかったうえで、ふざけあっているだけなのだ。
「なんか、こういうの懐かしいな」
頭をはさまれたまま、セイジがつぶやいた。
「以前はよく、こうしてふざけあってたよな」
「セイジ……」
「さすがにもう気は済んだだろ。ほら、早くはなせよ」
セイジがわき腹を小突いたので、ヒロムは腕をはなした。
つぎはセイジが自己紹介をする番だ。
「おれは学校もクラスもヒロムと同じだから、そこはパスしておく。誕生日はヒロムのほうが早いけど、身長はおれのほうが2センチ高い」
「そこ、張りあう必要ないだろ……」
「ヒロムくんとセイジくんって、同じサッカーチームに所属してるんですか?」
サトミが質問した。
「戦闘員に奇襲をかけるかどうかで揉めていたとき、ふたりとも、おたがいのプレーの話をしていましたよね? もしかして、ふたりは同じチームの選手なんですか?」
「ちがう」
「え、ちがうんですか? だって、ふたりとも――」
「たしかにおれとヒロムはビクトリーズで一緒にプレーしてた。けどそれは6年になるまでの話だ。こいつはキャプテンだけど、おれはもう選手じゃない。おれの脚はもう――」
「やめろ、セイジ」
セイジの脚に手を置いて、ヒロムは言葉をさえぎった。
「もういいよ。ムリに話すことじゃないだろ」
「いいんだ、べつに隠すことじゃないしな。これからのためにも、みんなにはちゃんと話しておきたいんだ」
セイジがみんなの顔をみまわす。
「ゲームじゃ、ふつうに跳んだり走ったりしてるけど、現実のおれは歩くことができない。車いすに乗って生活してるんだ」
(つづく)




