破壊の化身
パシュン!
銃声はドローンのマシンガンではなく、サトミが撃った小型ビームピストルの音だった。
小さなピストルから出たビームが正確にドローンのボディをつらぬく。
「え?」
顔をあげると、そこには口を一文字にむすび、凛々しい表情をしたサトミがピストルをかまえていた。
「…………」
サトミがすばやく引き金を3回引く。
発射された3つのビームすべてがドローンのボディに命中。
4機のドローンが一瞬にして消滅した。
「た、宝木さん?」
あっけにとられるヒロムの横を駆け抜けて、サトミはセイジたちのほうへ走った。
のこりのドローンはあと4機。
そのすべてがサトミに向かって飛んでくる。
パシュン! パシュン!
2発のビームで2機を撃破。のこりはあと2機。
うしろにまわりこんだドローンを振り向きざまにビームで撃ち抜き、ダンスのステップを踏むようにマシンガンの銃弾を避けながら、もう1機を撃破。
サトミはビームを1発もはずすことなく、ドローン軍団をひとりで全滅させたのだった。
「ウソだろ……」
セイジが目を点にして、その場に座りこむ。
「サトミちゃん、アイドルって歌やダンスだけじゃなくて、銃の撃ち方も練習する……んですか?」
エイルが敬語でたずねた。
「まさか。銃を撃ったのも持ったのも、きょうがはじめてです」
「はじめて? え、はじめてなのに、あんなことできた……んですか?」
「はい。ヒロムくんを守らなきゃって思って引き金を引いたら、ちゃんとビームがあたってくれたんです。あとはドローンの動きをぜんぶ読んで、狙った場所を撃ち抜いただけですよ」
あたりまえだけど、ドローンの動きを読んで、狙った場所を正確に撃ち抜くなんてこと、きょうはじめて銃を持った人間にできるはずがない。
けど、サトミは自分のしたことを涼しい顔で話している。
まるで、全人類が自分と同じことをできるかのように……。
「ま、まあ、5人とも無事でよかったじゃないか」
そういうヤマトの顔は軽く引きつっていた。
「武器はこわれちまったけど、みんなが助かったんだ。ラッキーだって思わないと」
せっかくエイルがつくってくれた武器だけど、そのすべてがドローンのマシンガンでこわされてしまったのだ。
「レーザーガンのエネルギーもあとすこしだ。エイル、すぐにあたらしい武器を――」
ギャオオオオオ!
体中がビリビリと震えるような雄叫びが耳をつんざく。
5人はいっせいに音のしたほうをふりむいた。
棚の角から、巨大な黒いかたまりがすがたをあらわした。
ゴツゴツした岩のような肌。
山脈のように連なった背びれ。
そして丸太のように太くて長いしっぽ。
黒いかたまりの正体。それは破壊の化身であり、日本が世界に誇る大怪獣『ゴルラ』だった。
★ ★ ★ ★ ★
デカい。
いくらなんでもデカすぎる。
いま目の前にいるゴルラの大きさといったら、まさに山。ゆうに180センチは超えているだろう。
「プレミアムサイズ・ゴルラだ!」
エイルがさけんだ。
「まちがいない! あれは人間と同じ大きさのゴルラの特大フィギュアだよ。全高190センチ、全長は300センチで、しかも値段は450万円。世界に10体しかない、ウルトラレアのフィギュアなんだ」
「ていねいに説明してる場合か! 逃げるぞ!」
ヤマトが手をふりあげた。
たとえフィギュアでも、あんな大きな怪獣とたたかって勝てるはずがない。
5人が逃げ出そうとしたとき、
「ギャオオオオ!」
ゴルラが大きく口を開いた。
のどの奥が真っ赤に輝いている。
どんなものでも焼きつくす超熱線の輝きだ。
「横に跳ぶんだ!」
ヒロムの声で、みんながたおれるようにして横へ跳んだ。
ゴルラが吐き出した超熱線が5人の足もとをかすめてゆく。
熱い! 噛みつくような空気の熱さに思わず顔がゆがむ。
けど……ここでやられてたまるか!
すばやく立ちあがると、ヒロムはゴルラにレーザーを撃ちこんだ。
3発、4発、5発。
ゴルラの腹にレーザーが連続で命中する。
けどダメージはまったくない。
どれだけレーザーを撃ちこまれても、ゴルラはうめき声ひとつあげようとしない。
「ヒロム、もういい! やめろ!」
セイジがさけんだ。
「あんなデカいの、たおせるはずがない。早く逃げろ!」
「だれかひとりでも生きのこればゲームはクリアできるんだ。こいつはおれが食いとめる。そのあいだにみんなで逃げるんだ」
ヒロムは銃口を上に向けた。
腹がダメなら頭だ。頭を攻撃してやる。
ゴルラの頭に狙いをさだめて、ヒロムは引き金を引いた。
けど、レーザーは出ない。
「なんで!? どうして出ないんだよ!」
あわてて銃の側面を見ると、レーザーのエネルギー残量が0になっていた。
「そんな……」
手からレーザーガンがすべり落ちる。
武器をうしなったとたん、絶望でひざが震えはじめた。
「ギャオオオオ!」
ゴルラがヒロムに向かって超熱線を吐き出した。
「ヒロム!」
「ヒロムくん!」
仲間たちの声がどこか遠くで聞こえたような気がした。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




