エイルの秘密
ひとつ目のロボット――ギョロが、持っていたライフルを5人に向けた。
「あぶない!」
5人はとっさに近くのミニカーコーナーの棚に隠れた。
その直後にダアァァン!
ライフルの弾が棚の角に命中。破片が通路に飛び散った。
「みんな、逃げるぞ」
ヤマトの言葉で、5人はいっせいにミニカーコーナーの奥へ走り出した。
走って、走って、角を曲がって、また走って。
気づけば5人はプラモデルコーナーに逃げこんでいた。
「なんとか逃げきれたみたいだな」
ヤマトがあたりを確認する。
「みんな、もう大丈夫だ」
安心したとたん、からだじゅうが重くなったような気がして、5人はその場に座りこんだ。
「ったく、戦闘員のつぎはロボットのフィギュアが相手かよ」
「フィギュアじゃない」
「え?」
「あれはフィギュアじゃない。プラモデルだよ」
エイルがあえぎながら、いった。
「あいつの名前はギョロ。『視力ロボ・ガンミル』に登場するアイボットで、高機動型とかの派生機をあわせれば、その生産数は5000機ともいわれてるんだ。地上はもちろん宇宙でも運用可能で、数々のエースパイロットが、あ……」
エイルがあわてて口をふさいだ。
「もしかしてエイルちゃん、ロボット好きなの?」
ヒロムがたずねる。
「ち、ち、ちがうよ! ギョロのことは、ぜんぶともだちが教えてくれたことで、ぼくはロボットなんて、ぜんぜん興味ないんだ」
「じゃあ、ギョロの身長は?」
「17・8メートル」
「重さは?」
「57・3トン」
「エイルちゃんの一番好きなアイボットは?」
「もちろん、ガンミル!」
「エイルちゃんの一番好きなものを知ってるのはともだちじゃなくて、エイルちゃん自身だよ」
「あ……」
「エイルちゃん、隠さなくていいよ。好きなんだよね、ロボット」
「……うん」
エイルが真っ赤な顔でうなずいた。
「ぼく、ロボットとかヒーローとかが大好きで、男の子向けのおもちゃとかプラモデルをあつめてるんだ。でもまわりに理解してくれる人がいなくて……」
「だから、興味ないふりをしてた?」
「うん。ママには『女の子なのに男の子のおもちゃを欲しがるんじゃありません』って何度もいわれたし、親戚の子からコレクションをバカにされたこともあった。それでまわりに自分の趣味を隠すようにしたんだ」
そう話すエイルの表情は暗く、目にはうっすらとなみだがにじんでいた。
「身近な人に自分の好きなことを否定されるの、つらかったよね」
「……うん」
「でも、おれはエイルちゃんの趣味をおかしいとは思わないよ。逆にすごいなって思う」
「すごい?」
「うん。おれ、工作とか苦手だからさ、プラモデルをつくれる人、すなおにすごいなって思うんだ」
「おれもだよ。以前にじいちゃんが戦艦のプラモを買ってくれたんだけど、組み立てるのがメンドーでさ、けっきょく、つくらないまま、押入れにかたづけちまったんだ」
ヤマトが照れくさそうに頭をかいた。
「おれ、プロレスが好きでよく試合の動画を観るんだけど、プロレス好きの女子ってたくさんいるんだぜ。だいたい、カッコいいものにあこがれるのに性別なんて関係ないじゃん。ロボットでもヒーローでもカッコいいと思ったら、なんでも好きになっていいんだよ」
「けど――」
「おれは女子サッカーの試合をよく観るし、あこがれている女子選手もいる」
セイジがいった。
「それをおまえはヘンなことだと思うか?」
「……思わない」
「わたしもエイルちゃんの趣味がおかしなことだとは思いませんよ」
サトミが、そっとエイルの手を握る。
「ロボットアニメや特撮番組が大好きなアイドルはたくさんいます。エイルちゃんの趣味は、けっして人にバカにされるようなものじゃありませんよ」
気づけば、みんながエイルのそばにあつまっていた。
「胸をはることがむずかしいなら、ムリにはらなくてもいい。でも、おれたちの前では、ロボットやヒーローが大好きな気持ちを隠す必要なんてないよ」
「……うん!」
目と声をうるませながら、エイルがうなずいた。
「それに、おもちゃとかプラモが好きなら、その知識がゲームをクリアするのに役立つかもしれないしね」
「かも、じゃないぞ。ヒロム」
セイジは立ちあがると、いきなりプラモデルの棚にのぼりはじめた。
「セイジ、おまえ、何するつもりだよ」
「目には目を、プラモにはプラモさ」
セイジが『ガンミル最強武器セット』という箱をたたいた。
箱の側面にはプラモデルのバズーカ砲やレーザーガンの写真が印刷されている。
「戦闘員のナイフは本物みたいに切れたし、ギョロのライフルからも本物の弾が出てきた。ってことは、おもちゃの武器はぜんぶ本物になるってわけだ」
セイジが不敵に笑う。
「ここには山ほどプラモがあるし、それをつくれるやつもいる」
「あっ!」
エイルが手を打った。どうやらセイジの言葉の意味がわかったようだ。
エイルだけじゃない。ヒロムもヤマトも、そしてサトミでさえもセイジの考えていることがわかったようだ。
ヒロムは『ガンミル最強武器セット』の箱を見すえた。
ゲームを生きのこるための……。
そしてソルジャーとたたかうための力が詰まった箱を。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




