襲いくるおもちゃたち
「プレイヤーさ~ん。いたら返事してくれよ~」
その声はお菓子棚のほうから聞こえてきた。
声の主は見えない。
けど、だれかがこちらに向かっているのはたしかだ。
「隠れよう」
5人はおもちゃの棚に身を隠した。
「さっきの声、ジョーイさんじゃなかったよな」
「ああ」
ヒロムとセイジはすこしだけ顔を出して、お菓子棚のほうを見た。
棚の角からあらわれたフィギュアを見て、ヒロムはあやうくさけぶところだった。
「おい、あれって……」
「ああ。ワルデス戦闘員だ」
黒い覆面をかぶったタイツすがたのフィギュアは、有名なヒーロー番組に出てくる戦闘員だった。
「なるほどな。ソルジャーって、戦闘員のことだったのか」
「見ろ、セイジ。あいつ、何かしてるぞ」
ヒロムは戦闘員を指さした。
お菓子棚の一番下の段には、たくさんのチョコ菓子が並べられている。
戦闘員はそこから「まんまるショコラ」という丸いチョコ菓子の箱を引っぱり出していた。
いったい、何をするつもりだろう?
みんなが戦闘員の行動に注目する。
戦闘員はまんまるショコラを抱えて棚からおりた。
そして――
「あっ……」
最年少のエイルが、手で口を覆った。
「ウソ。戦闘員がチョコ食べてる」
なんとフィギュアであるはずの戦闘員がまんまるショコラを食べはじめたのだ。
「おかしい、あんなのぜったいおかしいよ」
「そうだよね。フィギュアがチョコなんて食べるはずないもんね」
「ワルデス戦闘員はワルシウムを混ぜた特殊なゼリーしか飲まないんだ。チョコを食べるなんて設定無視もいいところだよ」
「え?」
「あ、いや、そ、そういう設定だって、ともだちから聞いたことがあるんだ」
エイルがあわてて説明した。
「みんな、いまのうちにあいつをたおそうぜ」
セイジが4人にいった。
「ジョーイがいってただろ、これはサバイバルゲームだって。ってことは相手をたおしてもいいってことだろ。なら、いまここで、あいつをたおそうぜ」
「でもフィギュアっていっても、相手は秘密結社の兵士だぞ。たたかうより、このまま隠れてたほうがいいんじゃないか」
ヒロムが反論する。
「いくらサバイバルゲームだからって、ムリにたたかう必要なんてないだろ」
「時間がたてば、ソルジャーの数が増える。ゲームを有利に進めたいなら、一体でもソルジャーの数を減らしておいたほうがいいだろ」
「けど失敗すれば、こっちがやられるかもしれないんだぞ」
「地球の未来がかかってるんだ。多少のリスクを背負わなくてどうするんだよ」
「地球の未来がかかってるから、リスクより安全を選ぶんじゃないか」
言い争いがヒートアップするにつれて、ヒロムとセイジの声が大きくなっていく。
「おまえは昔からそうだ。シュートを打てるときにパスばかり出して、せっかくのチャンスを台無しにする。勝負に勝ちたいなら、自分の力で道を切り開け」
「おまえこそ勝ちたいなら、もっとまわりをよく見ろよ。パスを出せば、味方がシュートを打てるのに、ひとりで強引にドリブルして失敗したことが何度あるんだよ」
まずい。ふたりとも完全に頭に血がのぼって、自分の声の大きさに気づいていない。
このままじゃ、5人がいることが戦闘員にバレてしまう。
「はいはい。ケンカはそこまで」
ヤマトがふたりのあいだに割って入った。
「ふたりのいってることは、どっちもただしい。だからさ、両方とも試してみようぜ」
「両方? どういうことだ」
「奇襲をかける組と隠れる組とにわかれるんだよ。おれとセイジが奇襲をかける組。ヒロムたちは隠れる組。な、これならケンカする必要ないだろ」
ヤマトがふたりの肩に手をまわす。
「どっちかっていうと、おれはセイジの意見に賛成だけど、ヘタして全滅したらヤバいこともわかる。だからヒロムはサトミとエイルと一緒にここで待機。もし奇襲が失敗したら、そのときはふたりを連れて逃げろ。いいな?」
「でも――」
「大丈夫。パッと行って、パッともどってくるよ」
ヤマトがつくりものの力こぶをたたくと、セイジも「まかせろ」といわんばかりに力づよくうなずいた。
「セイジ、行こうぜ」
「ああ」
ヤマトとセイジは足音を忍ばせて、戦闘員に近づいた。
戦闘員までの距離はだいたい70センチ。
けど、それはあくまで人間の感覚。
フィギュアの感覚だと、7メートルぐらいはなれているような気がした。
戦闘員まであと10センチ。
いくぞ。
目で合図するヤマトとセイジ。
ふたりが背後にいるとはつゆ知らず、戦闘員はまんまるショコラを食べ続けている。
ふたりが跳びかかろうとした瞬間、
「ギイィィィィ!」
とつぜん、お菓子棚の角から、青い覆面をかぶったもうひとりの戦闘員があらわれた。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




