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進む時間 (最終回)

 ヤマトスペシャルができるまで、せっかくなので、みんなで近況報告をすることにした。

「おれ、いま車いすバスケをやってるんだ」

 ハンドリムという車いすを()ぐためのリングをさすりながら、セイジがいった。

「おやじの知り合いに元車いすバスケの選手がいてさ、その人のすすめで、車いすバスケをはじめたんだよ」

「はじめてまだ2週間なのに、セイジ、練習でもシュートをバンバン決めてるんだ。コーチも、なかなか筋がいいってほめてくれたんだよ」

 付き添いで何度か練習をにいったヒロムが、わがことのように声をはずませた。

「ぼくもね、この前、おもちゃを紹介する動画をミーチューブにアップしたんだ」

 すこし緊張した様子でエイルがいった。

「ピアノのレッスンをがんばる条件で、なんとか両親を説得して撮ったんだ。けど再生数はたったの23回。しかも登録者数は0。正直かなりヘコんだよ」

 頬杖ほおづえをついたエイルが眉間みけんにしわをよせる。

「けどね、それでも自分の『好き』をつたえることって、すごくたのしいんだ。あ、ちなみに動画で紹介したのはワルデス戦闘員せんとういんのフィギュアだから、よかったら見てね」

 そして、すかさず、

「もちろんチャンネル登録と高評価もよろしく!」

 おきまりのセリフをいった。

「そうそう、みんな知ってる? じつはサトミちゃん、最近プラモづくりをはじめたんだよ」

「プラモづくり?」

 ヤマトスペシャルを焼いていたヤマトがおどろいて顔をあげた。

「はい。トイ☆ウォーズの体験をアイドル活動に活かしたいと思って、わたし、自分でプラモデルを組み立てて、それをSNSにアップしようと思ってるんです」

 サトミが見せたスマートフォンの画面には、水色に()られたギョロのプラモデルが映っていた。

「初心者だから、ぜんぜんうまくつくれないけど、困ったときはエイルちゃんに相談していろいろと教えてもらってるんです」

「サトミちゃん、お化粧けしょうが上手だから、影のり方とか色選びのセンスとかがすごくいいんだ。ぼくのほうが逆にいろいろと教えてもらってるよ。じつは今度、ふたりで一緒にプラモデルをつくる企画も計画してるんだ」

 そのとき、ヤマトがヘラでヤマトスペシャルをひっくりかえした。

「うん、いい感じ。ヒロム、わりぃけど、みんなの分のジュースを持ってきてくれ」

「わかった」

 ヒロムがジュースを持ってもどったとき、すでにみんなのお皿には焼きあがったヤマトスペシャルがせられていた。

「えー、それではただいまより、トイ☆ウォーズ打ちあげ会をはじめたいと思います」

 ヘラをマイクに見立てたヤマトに、みんなが拍手をおくる。

「だれも知らない地球の危機。それを救ったのは、はたしてだれか。スーパーヒーロー? それとも正義のロボット? いえいえ、そうではございません。大統領に総理大臣、どうか、どうか信じてください。地球をポテチ好きのアルス星人から救ったのは5人の美少年と美少女なのでございますぅ~」

 調子をつけたヤマトのセリフまわしがおかしくて、おもわずみんな笑ってしまった。

「ああ、目を閉じれば、いまもまぶたの裏によみがえる我らの雄姿ゆうし。つぎつぎと襲いくる悪魔の使者をバッタバッタとなぎたおし――」

「ヤマト、お好み焼きが()めるから早くしろ」

 セイジが手でメガホンをつくって、いった。

「へいへい。英雄に()めたお好み焼きを食わせるわけにはいかないもんな。そんじゃ、地球の平和とおれらの未来を祈ってカンパーイ!」

「カンパーイ!」

 ビールのCMのマネをしながら、5人はオレンジジュースの入ったグラスをかかげるのだった。


 ★  ★  ★  ★  ★  ★


 それから30分――。

 ヤマトスペシャルに舌つづみをうちながら、5人は打ちあげ会をたのしんだ。

 けど、どれだけみんなと笑いあっても、ヒロムの心がたのしさでまることはなかった。

 どんなにたのしい時間も、いつかはかならずおわりをむかえる。

 時計の針が進めば進むほど、みんなといる時間はうしなわれていくのだ。

(この時間がずっと続いたらいいのになぁ)

 そんな想いを投げつけるように、ヒロムは壁掛かべかけ時計を見た。

「どうした、ヒロム?」

 セイジがヒロムの目線の先を追う。

「時計なんか見てどうしたんだ。帰りの時間でも気にしてるのか?」

「そうじゃないよ。ただ、この時間が――」

 いいかけて、ヒロムは言葉をのんだ。

「いや、なんでもないよ」

 わざと明るく笑って、ヒロムはヤマトスペシャルにお(はし)をのばした。


 みんなと過ごす、この瞬間はもちろんたのしい。

 けど、未来にはもっともっとたのしいことやうれしいことが待っている。

 だから、時間がとまってほしいなんて考えちゃダメだ。

 なぜなら、たくさんの「たのしい」が待っている未来を守り抜いたのは、ほかならぬ自分たちなのだから。

「そうだ。せっかくだから、みんなで記念写真を撮ろうぜ」

 ヤマトがポケットからスマホを出した。

 写真撮影には、もちろんみんな大賛成だいさんせい

 さっそく撮影をはじめることにした。

「タイマーモードにして……これでよしっと。みんな、撮るぞ」

 シャッターアイコンをタップすると、ヤマトはいそいで4人のもとに走った。

「3・2・1、はい、チーズたっぷり豚玉ぶたたま!」


 カシャシャシャシャ


 軽快けいかいな音を立てて、カメラアプリのシャッターが切られる。

「うん、思ったとおりだ。みんな最高の顔してるぜ」

 ヤマトがニヤリと笑って、スマホの画面を見せた。

 そこに映っていたのは、地球の未来を守り抜いた守護者……ではなく、歯に青のりをつけた笑顔のこどもたちだった。 

       

(完)


『トイ☆ウォーズ ~小さな守護者たち~』は今回で完結となります。

この物語を書くにあたり、自分でプラモデルを組み立てて可動範囲を調べたり、12センチのフィギュアの1歩の長さを測ったりしましたが、それがつい先日のように思いだされます。(シュートミスしたベ〇ブ〇ードで床を傷つけたことも……)


構想の段階で「登場人物の名前は、おもちゃ関連のものにしたいな」という想いがあり、その想いは子どもたちの苗字に、こっそり(?)混ぜ込ませていただきました。気になる方は調べてみてください。


1か月という長いようで短い期間の連載でしたが、本作にお付き合いしてくれた読者の皆様には感謝しかありません。最後までご愛読いただき、誠にありがとうございました!


そして明日から、新作品を投稿します。

タイトルは『ゴクドウの花子さん(ギャル)』!!

現代の時代劇をコンセプトにした、犬山おはぎ初のライトノベルとなります。(15歳以上推奨)

マイルドヤクザ系イケメンとトイレの花子さん(ギャル)が繰り広げる、時にゾクッ、時にキュンな気分バクアゲ☆捕物ストーリーにご期待ください。


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