再会
「で、そのあとどうなったんだ?」
ヤマトが首をのばしてたずねる。
「おれも母さんも、おたがいの気持ちをちゃんと話しあったよ。ちょっと言葉がキツくなることもあったけど、ちゃんと話しあったからこそ、母さんも、おれの気持ちを理解してくれたんだと思う」
ヤマト、そしてセイジが真剣にヒロムの話に耳をかたむけている。
ジュージューというお好み焼きを焼く音が、静かな店内にひびきわたる。
3人がいるのは、ヤマトの家でもあるお好み焼き店〈あおしま〉。
きょうはここでひさびさに5人そろって、お好み焼きパーティーを開くのだ。
「母さんはおれにサッカーを続けることを許してくれた。だから、おれも母さんといる時間をつくろうと思って、一緒に買い物にでかけたりしてるんだ」
「それだけじゃないぜ。おばさん、サッカーを好きになるために、いまじゃヒロムと一緒にJリーグの試合を観に、わざわざ会場まで足をはこんでるんだ」
車いすに乗ったセイジがヤマトに説明した。
「サッカーを続けることができたし、親子で一緒にいる時間もつくることができた。うん、文句なしのハッピーエンドじゃねえか」
ヤマトが話を締めくくったとき、サトミとエイルが店にやってきた。
「みんな、ひさしぶり」
エイルが3人に手をふった。
もとのすがたにもどっても背の低いエイルだけど、メガネからコンタクトレンズに変えた彼女の顔は、フィギュアでいたときよりも愛らしい。
「ヒロムくん、セイジくん、このまえはライブに来てくれてありがとう」
サングラスをはずして、サトミがほほえんだ。
きょうの彼女のコーデは白のフリルブラウスと水色のフレアスカート。
見慣れたライブ衣装じゃない分、私服姿のほうが新鮮に感じる。
「ふたりが一生懸命ペンライトふってくれてるの、ステージの上からでも、ちゃんと見えましたよ」
ヒロムとセイジがキミトリンクのライブに行ったのは1か月前。
ふたりともガチガチに緊張していたから、うまく応援なんてできてないはずだけど、サトミのうれしそうな顔を見ると、ヒロムもセイジも首筋のあたりがくすぐったくなった。
「おれだって、店の手伝いがなけりゃ観にいったのによ」
ヤマトがくやしそうに腕を組むと、
「ぼくだって会社のパーティーがなかったら、ぜったい行ってたのに」
エイルも同じポースを取る。
「気にしないでください。それにヤマトくんもエイルちゃんも、わたしのSNSをフォローしてくれてるじゃないですか」
「そりゃファンだもん。とうぜんだよ」
「おうよ。スマホを持ってない1号くんの分まで、おれらがさとみんを応援しなくちゃな」
ヤマトがファン1号ことヒロムの背中を押した。
「ところでヤマトくん。お店、本当に貸し切りにして大丈夫だったんですか? おじいさんたち、困ったんじゃないですか?」
「心配すんなって。きょうはじいちゃんたちの結婚記念日で、もともと店は休みにする予定だったんだ。じいちゃんもばあちゃんも、いまごろは温泉に浸かって、日ごろの疲れを取ってるはずさ」
自分の肩を揉みながら、ヤマトが笑った。
「よっしゃ、5人そろったんだ。みんなに特製ヤマトスペシャルをごちそうしてやるよ」
(つづく)
最終回の後編となるエピソードも一緒に投稿しています。




