託す者、託される者
一本道を抜けると、3人は矢印の標識にしたがって、フードコートに向かった。
フードコートには様々な料理店がある。
すし屋、ラーメン店、カレーショップ。
どの店も大好きだけど、いまは1秒でも早く通りすぎたい。
恐竜マークの焼肉店を通りすぎたとき、
「ギャオオオ!」
窓ガラスを割ってあらわれたのは、なんとティラノサウルスのフィギュア。
しかも全長が40センチ以上もあるビッグサイズのフィギュアだ。
「宝木さん、避けて!」
ティラノサウルスがサトミめがけて口を開けた。
真っ赤な舌とナイフみたいにとがったキバがサトミの頭にせまる。
サトミはハンドルを切って、ギリギリのところでティラノサウルスの噛みつきを回避した。
怒ったティラノサウルスが、もう一度口を開く。
それをすんでのところでサトミがまた回避する。
「ふたりとも早く行って!」
サトミがカートを中華料理店の中へ進ませた。
それを追ってティラノサウルスも店の中へ入る。
「この恐竜はわたしを狙っています。わたしが囮になるから、そのあいだにふたりはゴールを目指してください」
「そんなの無茶だよ! 囮ならおれがなる。だから、いますぐ引き返すんだ!」
「イヤです!」
サトミの強い声が聞こえた。
「ファンに守られるだけのアイドルになんて、わたしなりたくありません。わたしだってファンを守りたい。アイドルを続けることを決心させてくれたヒロムくんたちを守りたいんです!」
「宝木さん……」
「今度、〇〇劇場でライブがあるんです。かならず観にきてくださいね」
その言葉を最後に、サトミとの通信はとだえた。
「ヒロム」
スピーカーから、押し殺すようなセイジの声が聞こえた。
「ペンライト用意しとけよ。ぜったいゴールして、サトミのライブに行くぞ」
「うん」
ヒロムはアクセルペダルを踏みこんだ。
進まなくちゃいけない。
どれだけ心が痛んでも、おれは前に進まなくちゃいけないんだ。
ヤマトくん、エイルちゃん、そして宝木さん。
未来を託してくれた仲間のために、かならずゴールしなくちゃいけないんだ。
★ ★ ★ ★ ★ ★
フードコートを抜けると「ゴールまで100m」と書かれた標識が見えた。
矢印にそって進むと、食品コーナーにたどりついた。
50メートルぐらい先に「北出口」と書かれた標識と、開けっ放しになった自動ドアが見える。
あれだ。あの自動ドアがゴールだ。
スピンキャリバーはもういない。ティラノサウルスだって追ってこない。
ここを突っ切れば、あとはもう自動ドアはくぐるだけだ!
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




