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光が消えて最初に見たのは、まんなかが空洞になったドーナツ型のソファだった。
3階まで一望できる巨大な吹き抜けのスペースに、格子状に区切られた白い大理石の床。
ヒロムがいたのは大型ショッピングモールだった。
「あれ? なんで、ぼく、こんなところに……」
となりを見ると、エイルが頭を押さえて、しゃがんでいた。
そのそばにはセイジとサトミもいる。
「ぼくたち、天井に押し潰されそうになって……もしかして、ゲームオーバーになったのかな?」
「いーや、その逆だよ」
エスカレーターの横に設置された巨大モニターにジョーイの顔が映った。
「敗者をこんな豪華な場所に招いたりしないよ。きみたちがここにいるのはゲームをクリアしたからさ」
4人を見おろしながら、画面の中のジョーイが説明した。
「ヒロムくんに感謝するんだね。彼が正解のドアを開けたからこそ、きみたちは天井に押し潰されずにファイナル・ラウンドに進むことができたんだ。ところでヒロムくん、なぜきみはピンクのドアを選んだんだい?」
ジョーイがたずねた。ヒロムが選んだのはピンクのドアだったのだ。
「時間がなかったとはいえ、きみは迷うことなくピンクのドアを選んだね。よかったら、その理由を教えてくれないかな?」
画面越しにジョーイがヒロムの顔をのぞきこむ。
好奇心に輝くその目に向かって、
「おれの誕生日、4月16日なんです」
「というと?」
「ジョーイさん、いったでしょ。きょうのおひつじ座のラッキーカラーはピンクだって。だからピンクのドアを選んだんです」
「なるほど、そういうことか!」
顔を上気させて、ジョーイが手をたたいた。
「さすが宇宙ナンバーワンの占いアプリ。1位と最下位の未来をみごと的中させたというわけだ」
おかしそうに笑うジョーイを見て、ヒロムは生まれてはじめて心の底から人をなぐりたいと思った。
「ヒロムくん、もしかしてヤマトくんは……」
「うん。ヤマトくんが命をかけてくれたからこそ、おれたちはゲームをクリアすることができたんだ」
それを聞いて、サトミは口をとざした。
「いままで何度もトイ☆ウォーズを開催してきたけど、きみたちのようなすばらしいプレイヤーは見たことがないよ。コメントもたくさんきてるから紹介してあげよう」
その直後に、画面に特大サイズのコメント欄が出現した。
「『妹と一緒に観てます。姉妹そろってセイジくん推しです』『ヒロムくん、最初見たとき、本当に女の子かと思った』『ぼくもさとみんのライブに行きたいな~』『地球のおもちゃってすごくクールね! もっとたくさんのおもちゃをエイルちゃんに紹介してもらいたいわ』これらはほんの一部だ。きみたち宛てのコメントは宇宙中から、たくさんきてるんだよ」
あたらしいコメントがどんどん追加されるのを見ると、ジョーイの言葉はウソではないらしい。
「なかでも一番多いのは、きみたちの活躍をもっと見たいというコメントだ。そこでだ、諸君。ぼくからひとつ提案があるんだ」
ジョーイがメガネを押しあげて笑った。
「きみたち、ぼくのビジネスパートナーにならないかい?」
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。
きょうは、このエピソードの続きの話も投稿しています。




