覚悟
「ダメだよ! そんなのぜったいダメだよ」
ヒロムはヤマトをとめようとして、脚にしがみついた。
「ダメだよ、爆発なんかしたらヤマトくんが死んじゃうよ」
「心配すんな。ジョーイもいってただろ、これはゲームだから本当に死ぬわけじゃないって」
「でも――」
「最後だからいっとくよ。歩数のことだけどな、じつはあれウソなんだ」
ヤマトが右手の甲をヒロムに見せた。
「おれが引き当てた歩数は2000じゃない。一番すくない400なんだ」
ヤマトが顔をあげる。
向こうの部屋ではセイジが銀色のドアを蹴っていた。
「みんなを心配させたくなかった。だからウソの歩数を教えたんだよ」
「そんな……」
「歩いているあいだ、ずっと考えてたんだ。自分に何ができるのか、どうしたらみんなの役に立てるのかって」
「もしかして橋をつくったり、おれを背負ったりしたのって――」
「ああ。ちょっとでもみんなの歩数をのこすためだよ。おれの歩数はあと17しかない。そんなおれにできることなんて爆発して壁をこわすことぐらいだ」
「やめて! そんなことしなくても、みんなを助ける方法はあるはずだよ!」
「ありがとな。でも時間がないんだ。もうこれしか方法はない」
ヤマトがヒロムの肩に手を置いた。
その手は、ブルブルと震えていた。
「はは、ダセぇよな。マジで死ぬわけじゃないのに怖くて震えがとまらないんだ」
「ヤマトくん……」
「ヒロム。みんなのこと、たのんだぞ」
むりやりヒロムを脚から引きはがすと、ヤマトは見えない壁に向かって突進した。
「ヤマトくん!」
「うおおおお!」
13、14、15歩。
16歩目でいきおいをつけてジャンプすると、ヤマトは空中で思いきり壁を蹴った。
その瞬間、耳をつんざく爆音と衝撃が銀色の部屋をつつみこんだ。
★ ★ ★ ★ ★ ★
爆風がヒロムを壁にたたきつける。
頭と背中を壁に打ちつけて意識がもうろうとした。
くるしくて息ができない。
痛くて目が開けられない。
でも、ここでたおれるわけにはいかない。
ここでおれがたおれたら、ヤマトくんの覚悟がムダになってしまう。
そんなこと、ぜったいにさせない。
みんなを助けるために、おれは立ちあがらなくちゃいけないんだ!
ギチッ ギチッ
ひざの関節パーツがいやな音を立てたが、かまわずヒロムは立ちあがった。
そして大声でさけんだ。
「みんな、早くこっちへ!」
壁がこわれても、みんなはヒロムがここにいることを知らない。
自分の存在を知らせるために、ヒロムはさけびながら腕をふりまわした。
「こわれた壁を通って、こっちの部屋に逃げるんだ。早く!」
煙が薄くなり、向こうの部屋がすこしずつ見えはじめた。
「みんな、何やってんだ。早くこっちにこい!」
おもわず声が荒くなる。
なぜならセイジたちが、いまだに部屋の奥でドアを開けようとしていたからだ。
いてもたってもいられず、ヒロムは部屋の奥へ走り出した。
(早くみんなを避難させなくちゃ!)
部屋の中央にきたとき、
「うわっ!」
とつぜん何かにぶつかって、ヒロムはたおれてしまった。
「……え?」
ありえない。
そんなことあるはずがない。
ヒロムは立ちあがって、恐る恐る目の前の空間に手をのばした。
そして触れた。
いや、触れてしまった。
しっかりとそこに存在する、見えない壁に。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




