銀色の絶望
銀色のドアの向こうは、大きな部屋になっていた。
部屋の長さは1メートルぐらいだろうか。
床も壁もすべてが銀色のブロックでできていて、なんとなく牢屋みたいだ。
「なんだ、セイジたちも来てたのか」
部屋の奥にはもうひとつ銀色のドアがあり、その近くでセイジたちが何かを話しあっていた。
「どっちの道も、この部屋につながってたみたいだね」
「もしかして、どっかに分かれ道があって、そっちがゴールの道だったんじゃねえか」
「そんなはずないよ。だっておれたち一本道を通ってきたんだよ」
「だよな。ってことは、あいつらのほうに分かれ道があったのかも」
ヤマトは部屋の奥に向かって、大声でさけんだ。
「おーい、ここにくるまでに分かれ道がなかったかー」
ヤマトの声が聞こえないのか、セイジたちはいぜんとして話し合いをしている。
「おかしいな。この距離で聞こえないはずないのに」
「とりあえず合流してみようよ」
ヒロムとヤマトが部屋を歩いていると、
「いたっ!」
不意に何かにぶつかって、ふたりは部屋のまんなかで立ちどまった。
「壁だ。ヒロム、ここに透明の壁があるぞ」
ヤマトが何もない空間を押した。
ふたりがぶつかったのは目に見えない壁だったのだ。
ヒロムも見えない壁に手をのばした。見えないから、かたちはわからないけど、そこにはたしかに巨大な板のようなものが存在していた。
「セイジ、サトミ、エイル、気をつけろ。ここに見えない壁があるぞ」
ヤマトが壁をたたいたけど、だれもこちらを見ようとしない。
「くそ。声が聞こえないだけじゃなくて、すがたも見えないのかよ」
「ヤマトくん、きっとこの壁は特殊なマジックミラーなんだよ。こっちからは向こうが見えるけど、3人からはこっちを見ることができないんだ」
「ジョーイのやつ、どこまで意地の悪いことすりゃ気が済むんだよ。くそ、なんとか、おれたちがいることをセイジたちに知らせないと」
そのとき、急に部屋全体がぐらぐらと揺れはじめた。
「な、なんだ?」
ヤマトがあたりをみまわす。
揺れは3秒ぐらいで、すぐにおさまった。
けど本当に恐ろしいことがおきたのは、そのあとだった。
ゴゴゴゴゴゴ!
固いもの同士をこすりあわせるような恐ろしい音をあげて、セイジたちのいる部屋の天井がさがりはじめたのだ。
「みんな、逃げろ!」
聞こえるはずないのに、気づけばヒロムもヤマトもさけんでいた。
セイジ、サトミ、エイルがいそいで部屋から出ようとする。
しかし、いくらドアノブをまわしてもドアが開かない。
「ヒロム、見えない壁を割るぞ。3人をこっちの部屋に避難させるんだ」
「うん!」
天井がさがっているのはセイジたちのいる部屋だけで、こっちの部屋は安全だ。
それでも仲間の危機を見過ごせるわけがない。
ヒロムとヤマトは見えない壁に何度もタックルした。
けど、いくらタックルしても壁はこわれない。
逆にふたりの肩のボールジョイントがダメージで白く変色しはじめた。
「なんで! どうして割れないんだよ!」
いらだちのあまり、ヒロムは見えない壁を蹴った。
「ヒロム、もうよせ。キックやタックルじゃ、壁をこわすのはムリだ」
「でも、このままじゃセイジたちが潰されちゃうよ」
「わかってる。おれにまかせろ。いい考えがある」
「いい考え?」
「ああ。こうするんだよ」
いきなりヒロムのからだをかつぐと、ヤマトは後方にある銀色のドアに向かって走り出した。
「ヤマトくん、何すんだよ!」
「心配すんな、逃げてるわけじゃない。おまえを避難させてるだけだ」
出入口である銀色のドアをヤマトが蹴り開ける。
かんたんに開くところを見ると、どうやらドアが開かないのは、セイジたちのいる部屋だけみたいだ。
「爆風を逃がすためにドアは開けとけよ。おまえまでぶっこわしたら、シャレになんねえからな」
「ぶっこわす? ヤマトくん、何をいってるの?」
「いいか、ヒロム。見えない壁をこわすにはキックやタックル以上の、もっと大きな力がいるんだ。だから一か八かで壁を爆発させる」
「爆発? でもどこに爆弾なんてあるの?」
「あるじゃねえか。おまえの目の前によ」
ヤマトが自分を指さした。
「ヤマトくん、まさか……」
「ああ、そのまさかだ。歩数が0になったプレイヤーはからだが爆発する。だから、おれが爆弾になって壁を爆発させてやるよ」
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




