ヤマトの提案
橋のまんなかあたりにきたときだった。
ザザ……ザザ……
背後で何かの音がして、ヒロムはうしろをふりかえった。
見ると、最初にエイルが出したブロックが砂に変わって、谷底に落ちていた。
「ブロックが崩れてる!」
ヒロムはさけんだ。
「端のほうからブロックが崩れてる! このままじゃみんな落ちちゃうよ!」
2個目、3個目、4個目。
橋をつくるブロックが砂に変わって、谷底に落ちていく。
「みんな、急げ!」
ヤマトが急いで橋をわたった。
セイジとサトミも急いで橋をわたりきる。
「エイル、ヒロム、急げ!」
向こう側からセイジがさけんだ。
あと橋にいるのはエイルとヒロムだけだ。
ザザ……ザザ……ザザザ……
ヒロムのすぐうしろの7個目のブロックが崩れた。
「エイル、早くしろ!」
脚が震えて、なかなか前に進めないエイルをセイジがせかす。
「エイルちゃん、こっちへ!」
サトミが手をのばすと、
「うわー!」
ダッシュで橋を駆けぬけて、エイルがサトミに抱きついた。
「ヒロムくんも早く!」
9個目のブロックはすでに砂に変わりはじめている。
ヒロムはいそいで10個目のブロックに飛びうつった。
けどそのブロックも、すでに足裏がめりこむほどやわらかくなっている。
「ヒロム、早くこい!」
セイジの手をつかもうとした瞬間、ブロックが崩れて、ヒロムのからだが宙に投げ出された。
★ ★ ★ ★ ★ ★
(ここでおわってたまるか!)
ヒロムは無我夢中で手をのばした。
その手が奇跡のように通路の岸をつかむ。
「待ってろ。いま、ひっぱりあげてやるからな」
セイジとヤマトがヒロムの腕をつかんで、力まかせにひっぱりあげた。
「セイジ、ヤマトくん、ありがとう」
「礼なんていらねえよ。仲間を助けるのなんて、あたりまえのことじゃねえか」
ヤマトがこぶしを突き出して笑った。
けど、笑ったのはヤマトだけで、セイジはヒロムと顔をあわせようともしなかった。
「ごめんね、ぼくがモタモタしたせいで、あぶない目に遭わせちゃって」
申しわけなさそうにエイルがあやまった。
「気にしないで。エイルちゃんのせいじゃないよ」
そういって、ヒロムは立ちあがった。
(地面がかたい……!)
そんなあたりまえのことを、こんなにうれしく感じる日がくるなんて思いもしなかった。
「時間がない。みんな、先に進むぞ」
セイジが歩きはじめた。そのあとをヤマトとエイルが追う。
「セイジくんと何かあったんですか?」
サトミがヒロムに耳打ちした。
「セイジくん、機嫌が悪いようですけど、ふたりのあいだに何かあったんですか?」
「まあ、ちょっとね」
「仲直りできそうですか?」
「わからない。もしかしたら一生ムリかも」
「そんな……だって、ふたりは――」
「サトミ、何してるんだ」
見ると、セイジがこちらをにらんでいた。
「時間がないんだ。早く行くぞ」
それだけいうと、セイジはまた歩きはじめた。
小さいころからそばにいてくれた友人がどんどん自分から遠ざかってゆく。
その背中をヒロムはさびしい想いで見つめていた。
★ ★ ★ ★ ★ ★
すこし進むと通路がY字にわかれていた。
「どうする?」
セイジがみんなをふりかえる。
いままでは直線かL字の角があるだけの単純な一本道だったが、道がふたつに増えたことで5人は困ってしまった。
「時間と歩数のこともあるし、二手にわかれるってのはどう?」
エイルが提案した。
「そうすれば、たとえ一方がまちがった道を選んでも、べつの組がゴールにたどりつけるかもしれないでしょ」
「たしかにそうだな。よし、ここからは二手にわかれて行動しよう」
そういって、セイジは右手の甲を見た。
「その前に歩数の確認だ。おれののこり歩数は702。みんなは?」
「わたしは904です」
「ぼくは665」
「おれは503。ヤマトくんは?」
「…………」
「ヤマトくん?」
「え? ああ。のこり歩数な。ええと、おれののこり歩数は――」
ヤマトがあわてて手の甲を見る。
「あー……1727だ。うん、1727。ってわけでおれがヒロムと組むよ」
ヤマトが、ヒロムの肩に手をまわした。
「一番歩数の多いおれとすくないヒロムが組めば、3人の歩数の合計と同じぐらいになるだろ? 二手にわかれるなら、歩数もかたよらないようにしないとな」
「わかった。ヤマトはヒロムと一緒に左のルートへ行ってくれ。サトミ、エイル、おれたちは右のルートへ行くぞ」
セイジが歩き出そうとしたとき、
「セイジ、ちょっと待て」
ヤマトが声をかけた。
「バラバラになる前に、みんなに話しておきたいことがあるんだ」
「話しておきたいこと? なんだ?」
「打ちあげのことだよ。なあ、みんな。トイ☆ウォーズがおわったら、みんなでお好み焼きパーティーをしないか?」
まさかの提案に、みんなが目を丸くさせる。
「おれん家がお好み焼き屋だってのは、きのう話しただろ。トイ☆ウォーズを制覇したらさ、みんなでおれん家にあつまって、お好み焼きパーティーをやろうぜ」
「でも、ヤマト。おれは――」
「大丈夫。うちの店、車いすのお客さんも食事できるようになってるんだ。おれたちだけで店を貸し切りにしてさ、ジュースと特大のお好み焼きで、パーッとせいだいに打ちあげしようぜ」
ヤマトがみんなの顔をみまわす。
「だから、ぜったいにトイ☆ウォーズを制覇しような」
ヤマトが笑って、親指をあげた。
でも、なぜだろう。
ヒロムには、そのときのヤマトがムリして笑っているように見えた。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




