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「ゲームスタート!」

 迷宮めいきゅうにジョーイの声がひびきわたった。


「はじめの一歩っと……」

 ヤマトが大股おおまたで一歩をみ出す。

 それにならって、ヒロムたちも大股で歩きはじめた。

 ブロックでできた通路の道幅みちはばはそこそこあるけど、歩数のこともあり、なんとなくバラバラに歩くのが怖い。

 なので5人は一列になって進むことにした。

 先頭はヤマト、つぎにセイジ、サトミ、エイルと続き、しんがりをヒロムがつとめる。


 コツ コツ コツ……。


 静かな迷宮に5人の足音が鳴りひびく。

 みんな、歩数が気になるのか、右手の甲を見ながら歩いている。

 おしゃべりできるほどの余裕はだれにもない。

 こんな時間がずっと続いたら、からだが爆発するよりも先に息が詰まって気絶してしまいそうだ。

「こうやって歩くの、なんかRPGの勇者みたいだね」

 わざと明るい声を出して、ヒロムは場の空気をなごませようとした。

「知ってる? むかしのRPGって、いまのおれたちみたいにキャラが一列に並んで歩いてたんだって。でも、よく考えたら、剣とか斧を持ったやつが一列になって歩いてたら、むちゃくちゃ怖いよね。おれなら――」

「ヒロム、ふざけるのはよせ」

 セイジが前を向いたまま、いった。

「地球の未来がかかってるんだ。ふざけていいときじゃないだろ」

「え、あ……ごめん」

「歩数のこともある。いまは歩くことだけに集中しろ」

 そのあと、5人は無言のまま歩き続けた。

「みんな、気をつけろ」

 先頭を歩いていたヤマトが立ちどまった。

「谷だ。この先に谷があるぞ」

 ヤマトが前方を指さす。

 5人がいる通路の床は途中で途切とぎれていて、向こう側の通路とのあいだに巨大な谷ができている。

 谷の距離は50センチぐらいだろうか。

 人間ならともかくフィギュアのジャンプ力で飛び越すことは不可能だ。

「あれ?」

 不意にサトミがすっとんきょうな声をあげた。

「どうした、サトミ?」

「壁を見てください。ほら、あそこだけ、なぜか茶色じゃなくて灰色のブロックでできてるんです」

 サトミが壁を指さした。

 壁はすべて茶色のブロックでできているけど、その中に、ひとつだけ灰色のブロックが混ざっている。

 そして、そのブロックには、じゃんけんのパーと10のマークが書かれているのだ。

「パーと数字の10。どういう意味だ?」

 セイジが曲げた人さし指をあごにあてた。

「あ!」

 とつぜん、エイルがさけんだ。

「これって、もしかして」

 壁に近づくと、エイルは灰色の部分をタッチした。

 その瞬間、空中に灰色のブロックが出現。

 途切とぎれた通路の(きわ)にくっついた。

「やっぱりだ。このブロック、橋をつくるためのブロックなんだよ」

「橋をつくるブロック? エイル、どういう意味だ」

「この壁をタッチすると、橋をつくるためのブロックが出てくるんだよ」

 説明しながら、エイルはもう一度、灰色の壁ブロックをタッチした。

 すると、空中のブロックの前方にもう1個のブロックが出現して、ふたつがぴったりとくっついた。

「こうやって、たくさんのブロックをくっつけて、谷をわたるための橋をつくるんだよ」

「なるほど。ブロックの橋をわたって、向こう側に行けってことか」

「たぶんね。けど、そうかんたんにはいかないみたいだよ」

 エイルが右手の甲を見る。

「やっぱりだ。歩数が減ってる」

 エイルが顔をしかめた。

「10の意味がわかったよ。あれは壁をタッチした人の歩数を10うばうって意味なんだ」

「歩数をうばう?」

「うん。空中のブロックはプレイヤーの歩数を消費しょうひしてつくられたものなんだよ。その証拠しょうこに774あったぼくの歩数が754に減ってる。壁を2回タッチしたから歩数を20うばわれたんだ」

「ってことは10歩でブロックひとつか。完全な橋をかけるとなると……くそ、けっこうな歩数が必要になるな」

 セイジが舌打ちした。

「ブロックの長さが5センチとして、向こう岸まで約50センチってところだな。エイルが20歩消費してブロックを2個つくったから、のこりは40センチ。だれかがあと80歩ぐらい消費しないと、完全な橋をかけることはできないぞ」

「心配ご無用。こういうときこそ、おれの出番だ」

 ヤマトが胸をたたいた。

「おれの歩数は2000近くあるんだ。80ぐらい減ったところで痛くもかゆくもねえぜ」

 ヤマトが連続で壁をタッチすると、空中に灰色のブロックがつぎつぎとあらわれて、あっというまに橋が完成した。

「手すりがあればカンペキなんだけど、ま、ブロックにそこまで望むのは(こく)ってもんか」

 谷にかかった橋――というよりも灰色の道を見ながら、ヤマトがいった。

「もっかい触ったら、手すりがついたりして」

 ヤマトが指先で壁をタッチした。

 けど、橋にはなんの変化もない。

「歩数も減らないし、これで完成ってことか。よっしゃ、先に進もうぜ」

 橋をわたる順番は通路のときと同じで、ヤマトが先頭に立った。

「みんな、ぜったい下を見るなよ」

 いわれなくたって、そのつもりだ。

 下を見れば、そのまま深い谷底に吸いこまれてしまいそうな気がする。

 5人とも、それほど大きいとはいえないブロックをしっかり踏みしめて、一歩一歩まえへと進んだ。


(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。

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