セカンド・ラウンド
そのあとすぐに4人は合流した。
「ねえ、ヤマトくんは一緒じゃないの?」
エイルがヒロムにたずねた。
「ヤマトくんならベッドで寝てたよ」
「それがいないんだ。男子組のベッドを観にいったら、もぬけの殻でしょ。だからこうして、みんなを捜しにきたんだよ」
エイルが不安げにタブレットの画面を見る。
「早くしないとゲームの説明がはじまっちゃうよ」
そのときヒロムの背後で声がした。
「おーい」
見ると、ヤマトがこちらに走ってきていた。
「わりぃわりぃ。散歩してたら、つい遠出しちまってよ。あやうくゲームの内容を聞きそびれるところだったぜ」
息を切らせて、ヤマトがあやまった。
そのとき、タブレットの画面にジョーイの顔が映った。
「おはよう、地球人の諸君。いい夢は見られたかな? ちなみにぼくが愛用している占いアプリによると、きょうの1位はおひつじ座。ラッキーカラーはピンクだってさ」
「ジョーイ。おひつじ座のことはいいから、しし座の順位を教えろよ」
ヤマトがいった。
「おれ、しし座なんだから」
「ちょっと待ってね。ええと、しし座は……うん、12位だね」
「え、ウソ、それって最下位じゃん」
「運勢を回復させるラッキーアイテムは宇宙ナマコのキーホルダーだってさ。ひとつあげようか?」
「いるか!」
ヤマトがつば(?)を飛ばしてどなった。
「ジョーイ、占いのことはいいからゲームの説明をしろ」
セイジがいった。
「おっと、そうだった。セカンド・ラウンドできみたちがおこなうゲームは〈ブロックトラップラビリンス〉。迷宮からの脱出ゲームさ」
画面に出てきた長いタイトルをジョーイが指さす。
「つぎにゲームエリアの紹介だけど、これは実際に見てもらったほうがいいね」
ジョーイが指を鳴らすと、まわりの景色がトイパレスから茶色いブロックでできた迷宮へと変わった。
「地球にはブロックラフトっていうゲームがあるだろ? あれを参考にしてつくってみたんだ」
ブロックラフトというのは、四角いブロックでできたキャラクターを操作して、家を建てたり、モンスターとたたかったりする人気ゲームのことだ。
「制限時間は15分。そのあいだにひとりでもゴールにたどりつき、ゲームをクリアすればきみたちの勝ち。できなければ、ぼくの勝ち。それがゲームのルールだ。わかったかな?」
「ああ、よくわかったぜ。ようするに制限時間までに、ここから出りゃいいんだろ。かんたんじゃねえか」
そういって、ヤマトは床ブロックを踏みならした。
「威勢がいいね。でも油断は禁物だよ。制限時間だけじゃなくて、歩数にも気をつけないと、このゲームはクリアできないからね」
「どういうことだ?」
「それをいまから説明するよ」
ふたたびジョーイが指を鳴らすと、5人の前にカプセルマシンがあらわれた。
「このマシンから出るカプセルには400~2000までの歩数データがつまっている。そのデータこそ、きみたちがゲーム内で歩くことのできる歩数だ」
「つまり2000のデータを引けば、2000歩あるけるってことか?」
「そういうこと。データそのものにかたちはないから、カプセルを開けても何も出てこないけど、かわりに引き当てた歩数が手の甲に表示されるようになっているんだ。だから、のこりの歩数を確認したいときは右手の甲を見るといいよ。そして、もし歩数が0になったら――」
「ゲームオーバーか?」
「そのとおり。プレイヤーのからだがバラバラに吹き飛ぶ」
「はぁ? からだが吹き飛ぶ?」
「そう。歩数が0になると、プレイヤーのからだは爆発するようになってるんだ。つまりきみたちは、歩くフィギュア爆弾ってわけさ」
爆弾という言葉に、5人は顔を見あわせた。
「大丈夫。以前にもいったけど、これはゲームだ。たとえ爆発しても死ぬほど痛いだけで本当に死ぬわけじゃない。ちなみに制限時間が過ぎても爆発するから気をつけてね」
ショック状態の5人に、ジョーイが忠告する。
「そうそう。引き当てた歩数だけどね、これはカプセルを開けた本人しか見えないようになってるんだ。だから、みんなで歩数を教えあいながら進むといいよ。そっちのほうが見てるほうもドキドキするしね」
そして腕時計を見ながら、
「そろそろ時間だね。スタートした瞬間ゲームオーバーなんてつまらないから、早いとこレバーをまわしたほうがいいよ」
「いわれなくても、そのつもりだ」
ジョーイをにらみつけると、セイジがマシンのレバーをまわした。
ガガガ……ガガガ……ガシャン!
出てきたカプセルをセイジはその場で開けた。
「900だ」
セイジが手の甲を見せた。けど、そこには何も書かれていない。
ジョーイのいったとおり、歩数はカプセルを開けた本人にしか見えないようだ。
そのあとサトミが1100を引き当て、エイルはセイジと同じ900を引き当てた。
「つぎはおれの番だな」
マシンに一礼して、ヤマトがレバーをまわした。
「たのむぞ」
ヤマトがカプセルをゆっくりと開ける。
「…………え」
「ヤマトくん、どうしたの?」
「ん? ああ、なんでもない。それより見ろよ。2000だぜ、2000」
ヤマトが見せびらかすように(もちろんだれも見えないけど)手の甲を突き出した。
「2000って一番多い歩数だよな。ジョーイ、おまえが愛用してる占いアプリ、いますぐ消したほうがいいぜ。しし座が最下位なんてウソっぱちじゃねえか」
「ま、そういうこともあるさ。地球のことわざにもあるだろ。当たるも八卦。当たらぬも八卦って」
ジョーイが指でメガネを押しあげた。なんだか、くやしいのを隠しているみたいだ。
「最後はヒロムくんだね」
ヒロムはドキドキしながら、レバーをまわした。
ガガガ……ガガガ……ガシャン!
出てきたのは赤色のカプセルだった。
カプセルを開けた瞬間、頭の中に700という数字が浮かびあがった。
「700だ」
右手の甲を見ながら、ヒロムは不安な気持ちになった。
5人の中じゃ自分がもっとも歩数がすくない。
それだけみんなよりも歩ける回数がすくないし、逆に爆発する可能性は、だれよりも高いということだ。
「ゴールまでの距離だけど、だいたい500歩ぐらいでたどりつけると思うから、あとはきみたちの歩き方次第だね。それじゃあみんな、思う存分ゲームをエンジョーーーイしてね!」
ジョーイが手をふると、画面がまっくらになった。
「…………」
「ヤマトくん、どうしたの?」
ヤマトの表情があまりにもけわしかったので、思わずヒロムはたずねてしまった。
「あ、いや、たいしたことじゃねえよ。ジョーイのことだから、なんか説明のしわすれでもあるんじゃないかと思ってさ」
その言葉どおり、すぐに画面にジョーイがもどってきた。
「おっと、いけない。まだゴールの説明をしてなかったね。きみたちが目指すゴールは迷宮のどこかにある金色のドアだ。ゴールは金色のドア。どう? なかなかおもしろい言葉あそびだろ」
「つまんねえギャグと説明ごくろうさま。ほかにいいわすれたことは?」
「ひとつある。ヤマトくん、本当にいいのかい」
「え?」
「ぼくは宇宙ナマコのキーホルダーを347個も持ってるんだ。ひとつぐらいきみに――」
「だから、いらねえってば!」
以前よりも大きな声でヤマトがどなった。
「もういいよ、さっさとゲームをはじめろ」
「はいはい。それじゃあ、みんな、もし会えたら、またあとでね」
タブレットの画面が暗くなると、
「ゲームスタート!」
迷宮にジョーイの声がひびきわたった。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。




