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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホワイト・サマー・キャッスル

作者: Tety

オレはいつの頃か、


ガキの頃の夢の中だったかも知れない。


夢のいとこの姉弟との、


夢で、ひと夏の思い出を作っていた事をふと思い出す。


彼らの名前は忘れてしまったけど、


この物語では彼ら姉弟をこう名乗っておこう。


シディアとチャンクと。


オレは20数年以上の俗世間の間で、人間達の強欲な剥奪と迫害行為に精神がすさみ、疲弊しきっていた。


見るもの全てを憎み、

奴らの笑顔や笑い声が耳と視覚にさわる。


そんな痛手を感じざるを得ないまで精神がすり切れ疲弊しきっていた。


そんな頃、記憶の断片に追いやられていたあの夢へ誘われた。


オレ「…。」


いとこの姉「どうしたの?テティー??


そんなに怖い顔して。」


オレ「…ふっ。


シディア。


戦争で兵士を慰問する為に、

ジャズシンガーが強ばった表情で、

身体を機械のようにキビキビと動かし、

クルクルと回りながら、

のれない歌を歌うのは、

なぜか知っているか?」


シディア「…。


怖い。


難しいわ。


そんなの分からない。」


オレ「…それはな…。」


ドンドンドンドン…。


シディア「まあ、チャンクが帰って来たわ!!


もう!!


この3人で会うのは何年ぶりかしら!!


テティー、お願いチャンクに会ってあげて!!」


オレ「…。


(チャンク…。)


(昔、この真っ白な砂浜でシディアとクソガキのチャンクと砂の城を作って遊んだ事があったな。


…しかし正直、今は会いたくないな…。)」


???「帰ったよ〜。


テティーが帰って来てるって聞いて、

飛んで帰って来たよ~。


すぐにそっちに降りて行くよ。


渡したい物があるんだ。」


1階の入り口のドアがドタバタと開けられ、


地下で休んでいるオレ達に、

チャンクの話し声が聞こえて来た。


オレ「…。


(あ〜、会いたくない。


オレはアイツが嫌いだ。


あいたくない。


やかましい。)」


階段の方を見やると、

太った男の足が片方づつ見えだす。


ギコ、ギコ、ギッ…。


ギコ、ギコ、ギッ…。


チャンク「テティー。


やあ、久しぶり。


生意気ボウズの王様!!チャンク様だよ!!」


オレ「嗚呼〜…。」


チャンク「…テティー。


今日キミに、僕とお姉ちゃんからプレゼントがあるんだ。


それはキミがとても長い間忘れていた大切な物なんだ。」


オレ「…(大切な物?

そんな大層立派な物はこの世の中にありえるのか?)」


チャンク「さあ、良いからこの箱を開けて。」


チャンクは安っぽいケーキを入れる様な箱をオレの机の前にドカッと置いた。


オレ「…。」


オレは白い安っぽい箱をしぶしぶ開けた。


オレ「なあ!!もう、いいか!!?


…………あ。」


中には、


あの、もう頭の中で完全に忘れていた、


幼少期の晴れ渡った爽快な空を思いだす真っ白い砂のお城と、


砂浜に木の杖でオレが書いたはずの砂の文字が、そこに書いてあった。


「オレが負けるわけがねえ!!」


とホワイト・サマー・キャッスルの浜にボンドでしっかりと、とめてあった。


オレ「なんだよ…。…これ。」


それと、


真っ白な紙粘土で作った3人の思い出の丸い、いびつな紙粘土の団子。


団子には少し大きめの透明なプラスチックの装飾が下手くそに飾られていた。


…。


それは凄く昔の、


オレが子供の頃に見た願望の夢。


大人なってはもう巡り会えない幼少期の単純明快で爽快な無垢な夢が、


安っぽい白い箱の中に詰まっていた。


オレはなぜか嗚咽まじりに泣き、


オレ「…あ…ありがとう。」


と言った。


オレは日が完全に落ちた夜、白い砂浜に立つ家を背に、

大事そうに真実の癒しの芸術品を右手に抱え、

泣きながら海岸の船乗り場へ向かおうとした。


そしたら、白い家のドアがバタンと開いて、


チャンクが泣きながらオレの背中に声からがらに吼えた。


チャンク「オレが負けるわけねえーーー!!!」


砂浜にこだまする声。


オレ「…。


…。


オ、オレが負けるわけねえーーー!!!


オレが負けるわけねえーーー!!!


オレが負けるわけ……ねえーーー!!!」


(馬鹿野郎のチャンクが!!)


チャンク「テティー!!


海岸まではすごく遠いだろ!!?


オレの仲間達が送ってやるよ!!!」


そう言うと、


振り返った白い家の後ろから、


真ん中に馬、周りをバイクで走る黒い集団が現れた。


馬に載っている男「どうかこの馬に載ってください。


あとは他の男達がついて行きますので。」


オレ「お、オレは馬に載った事は…。」


馬に載っている男「大丈夫です。」


乗馬していた男がオレを促し、

オレを馬に載せると毛並みの良い馬は徐々に歩き出し、バイクの護衛がついた。


なぜかオレは馬に乗れた。


そして、

海岸までこのペースで行ければ、

オレも安心を覚えた。


しかし、馬は次第に歩くペースを早め走り始めた。


オレ「お、おい!!


そこのお前、


どうやればこの馬は落ち着く!!?」


バイクの護衛「…。」


バイクの護衛はひたすら前を向いて走っていた。


オレ「…。


(えっ!?…おいっ。)」


ダカタッ、ダカタッ、ダカタッ…。


バッ!!


馬は海に向かってジャンプした。


オレ「…うっ、わっ…。」


…。


…。


…。


シーン。


…。


オレ「う、う…。」


そこでオレは目を覚まし、

夢の世界から現実世界に帰還した。


右手には白い箱の影も、

砂の粒1つも存在しなかった。


ただ、


オレ「オレが負けるわけねえ。」


とオレは1人、呟いていた。

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