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悪役令嬢かと思った? 残念聖女です(驚)

サブタイトルは残念!聖女です。ではありません。

残念聖女です。


そして、本日最後の更新。


 あれから十年経ち、僕は無事十六歳となった。


 だからと言って何かが変わる訳でもない。


 それに、あくまで"僕は"ってだけであって周囲の環境はそうもいかないのだけど……。


「レイジ兄様? ボ〜っとしておりますが、如何なさいましたか?」


 この、後光が刺してそうな女の子は十一歳になったリリィお嬢様だ。

 お嬢様は悪役ルート以外だと、僕の事を兄と呼ぶ様になる。つまり、僕を兄と呼んでいる内は間違いなく聖女ルートに乗っている。


 何故、今回聖女ルートを進もうと思ったかというと、あるイベントの謎を解いて突破したいからだ。


 そのあるイベントとは他国からこの国に対して侵略戦争が起こされる。

 何故お嬢様が聖女ルートに進むと、戦争が起こるのかは大いなる謎だ。


 いや、正確に言うなら目的だけは判っている……それは他国が聖女を手に入れたい、といったものだ。


 それがお嬢様とは限らないのだけど、イベント開始の条件になってる以上、無関係では無いと僕は思っている。


 しかし、一体、何故聖女を……?


 この世界に魔法なんて奇跡は存在しない。


 つまり、アニメやゲームで良くある聖女が回復魔法を使って全てを癒す……といった奇跡を起こす事も出来ない。

 だとするなら聖女とは単なる二つ名以上の効果は持たない筈だ。


 なら、そんな二つ名を持つ者を何故他国は欲するのか?


 その理由を今回のループで確かめたい。


「あのぉ〜……レイジ兄様、私を無視しないで下さいませんか?」

「申し訳ございません。少し考え事をしておりました」

「もしかして、来年から始まる学院の事でしょうか?」


 お嬢様が云う学院とはゲームの世界での主舞台となる場所だ。

 学院は、中立国家ラインベルン王国にあるラインベルン国際学院と呼ばれている貴族学校だ。


 この学院では毎年、各国の貴族が勉学、及び自国の威光を他国に知らしめる為に入学してくる。


 そして、この学院では平民にも入学の権利が一応ある。勿論厳しい条件はあるのだが。

 ……まぁ、その厳しい条件をクリアし、無事特待生として入学してくるのが主人公のシンシアだ。


「はい、お嬢様に良き御学友が出来る為にはどうすれば良いかを考えておりました」


 嘘である。


 僕が何かしなくても、聖女ルートのお嬢様なら、放置しても良い友達を作ってくるから心配はしていない。


「もぉ、レイジ兄様は私を子供扱いしすぎです! 私一人でもお友達は作れますわ」

「それは大変失礼致しました。──ですが、勉学も疎かにしないようお願い申し上げます」

「大丈夫です! 本当にレイジ兄様は意地悪ですわ」


 ぷくぅ〜っと頬を膨らませるお嬢様はとても可愛いのだが、その顔は故郷にいる妹ローリエを思い出させる。


 妹もよく頬を膨らませて僕に文句を言っていた。


 今、妹は独りだ。


 兄のアルバも最上級貴族であるローンハイム家の序列三位の戦闘執事へと昇格を果たした様だ、そんな兄が実家に帰れる訳もなく、僕は僕で今が大事な時期のお嬢様を放置する訳にもいかないし、ぶっちゃけ帰れない。


 そんな中、兄が二人共居ない妹には寂しい思いをさせてると思う。


「元気にしてるかなぁ……」

「何か言いましたか? レイジ兄様」

「いえ、お嬢様の成長を喜んでいただけで御座います」

「まぁ! レイジ兄様に評価して頂いてとても嬉しく存じますわ!」


 本当にお嬢様はチョロいと思う。



 おかしい……聖女ルートに入ったお嬢様は学院入学迄はコレと言ったイベントは無かった筈だ。


 そのイベントとは、深夜、僕が敷地内に貼った糸結界に賊が引っ掛かるというものだ。


「バレないと思ってるのかな?」


 数は六人。


 戦闘執事が居る貴族の家に侵入しようとするんだ、きっと腕には自信があるのだろう。

 まぁ、何にせよ当家で気付いているのは僕だけの様だし、さっさと片付けて惰眠を貪るとしよう。



「…………」


 六人の賊は外壁迄来ていた。


「うん、此処でヤると外壁が汚れちゃうか……」


 そう考えた僕は糸で賊を捕縛すると、そのまま遠くに遠投した。


「それじゃ……瞬歩!」


 賊を吹き飛ばした方向に僕も爆走する。



「い、一体何が!?」

「わ、分かりません! お頭、どうしますか?」


 賊達は慌てふためいている。


 この感じは騎士崩れの賊か……。


「やぁ、こんばんは? 良い夜ですね」


 僕は優しく賊に声をかける。


「貴様が我等を!」

「あ、そう言うのは良いので、当家に来た理由を教えてくれませんか?」

「ふん、誰が言うか! ──オイ、コイツを殺るぞ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 んー、取り敢えずリーダーっぽいコイツだけ残しておけば良いか。


 そう結論した僕は残りの五人に糸を刺す。


「それじゃ、サヨナラ。── 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)!」


 賊に刺した糸は体内で開花し、華が開いたかの様に賊の身体を内側から爆発させた。


「えっ? ……一体何をした?」

「何をしたのか分からないのだったら、何をやっても私に勝てませんよ。大人しく当家に御来訪された理由を教えて頂けませんか?」

「こ、断る、ギャァァァァ!」


 取り敢えず、糸で左手の指を切断した。


「教えて頂けませんか?」

「だ、だれが、イギャァァァァ!」


 同じ様に左手首も切断すると、同時に手首も縫合した。出血死させない為の処置だ。


「ひ、ひぃ、た、頼む許してくれ」

「ですので、私は来訪の理由を伺っているのですが……ん〜、困りましたね……」


 吐かせる為とはいえ、僕に拷問の趣味は無いからなぁ。本当に困った。


「一応、もう一度伺いますね。御来訪の理由を教えて頂けませんか?」

「ク、クラディス家の長女を攫えとしか、き、きかされていないんだ! も、もう良いだろ喋ったんだから許してくれ」

「ダウトです」

「えっ? あばごぉあ!」


 最後の賊も僕の曼珠沙華で内側から爆砕した。


「あっ、此処は泳がせて後を追い、依頼人まで案内させるのが正解だったかな?」


 失敗したな……。


 お嬢様を攫うと聞いた瞬間、頭に血が昇ってしまった。反省反省。


「さて、今なら二時間位は寝れるかな」


 僕は死体の後始末をした後、自室で安眠を貪るのだった。

見て頂き有難うございます。

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