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お嬢様、大地で立つ(笑)

更新です。


 早い事に僕は六歳になった。


 そして、父に力の一端を見せる事でクラディス家への執事受験もねじ込む様に動かした。


 勿論、当初の予定通り実技や筆記、面接を余裕で通過した僕は、執事見習いとしてクラディス家の戦闘執事部隊へと編入される。


 クラディス家の戦闘執事は見習いを入れて全部で八人。


 家長であるシャイバ・クラディス様は、序列一位の執事長ハウゼルさんが担当。


 次にシャイバ様の奥様、クレア様には序列ニ位のデミトリさんが担当。


 次に長男のシンバ様は序列三位のロイドさんが担当。


 そしてお嬢様ことリリィ様には序列八位の見習い執事の僕、レイジが担当。


 序列八位の僕が選ばれたのには色々と訳も有るのだが、その最たる理由の一つがお嬢様との年齢が近い事も挙げられる。


 次に見習い、とはいえ僕の強さはその辺の戦闘執事位には強いと思われているからだ。

 どうしてそうなったかと言うと。父が熱烈に僕の才能をシャイバ様に説いたからだった。


 まぁ、僕に才能なんて無いのだけどね。


 一回目から三回目のループ迄、僕の実力は無く、戦闘執事としては劣等生としてドロップアウトした身だ。

 必要最低限の能力を身に付けれたのは、ループ三回を騎士として磨いた能力だったからだ。


 つまり、僕の実力はループの中で培ってきた物で、本物の才能というのは兄であるアルバの事を指す。


 何故かと言えば、アルバは何も干渉しなくても、八歳で纒技(てんぎ)を会得し、そのまま実力が認められて最上級貴族の戦闘執事として活躍するからだ。


 それ位に兄、アルバは化け物だと僕は思っている。


 まぁ、話が逸れた。


 何にせよ、こうなる事を見越して僕は父に実力の一端を見せ、こうなる様に誘導した。


 つまり全てが僕の計画通りである。


 まぁ、計画の為だったとはいえ、流石にこれ以上の実力を見せるのは今後の活動に支障が出るのでこれ以上を見せるつもりは無い。


 それと余談であるが、本来は序列四位のナハトさんが原作でお嬢様の専属執事をしていた人物だ。

 まぁ、彼には申し訳ないけどお嬢様の執事は僕がやらせてもらう。

 貴方にやらせるとお嬢様は悪役令嬢ルートにしか行かないからね。ゴメンね。


 そんな感じでお嬢様の執事となった僕は、今日もお嬢様が待つ部屋へと向かう。


 コンコンッ。


 僕はノックをした後、部屋へと入ると、


にいちゃ(お兄ちゃん)〜〜!!!」


 お嬢様が舌ったらずな言葉を発しながら、ハイハイで僕に向かって高速タックルをかましてくる。

 勿論回避するなんて鬼畜な所業を僕はしない。


「ただいま戻りましたお嬢様」

にいちゃ(お兄ちゃん)あおんで(遊んで)?」


 僕の仕事はお嬢様の身の回りのお世話をする事だ。

 本来なら喜んで相手をするところではあるが、思い出して欲しい。


 お嬢様は致命的に運が悪く、ドジっ娘だということを……。


 例えば、さっきのハイハイからのタックルを僕が回避していたら?

 答えは簡単だ。壁に激突して瀕死のダメージを負う、もしくは死ぬ。僕は自信を持ってこの答えを推す。


 そんなお嬢様と遊ぶ、と言う事はそんな危険を孕む事と同義だ。


 だから、僕が取る行動は。


「よし、それでは私とお散歩しましょうか?」

おあんほ(お散歩)〜〜!」


 僕が直接お嬢様を抱きかかえ、連れ出す事が一番の安全だと判断する。


 前回のお嬢様は手を取っても階段から落ちて死んだが、それは僕が油断したから起こっただけに過ぎない。


 そしてその油断を教訓として僕の成長となったのだから何も問題ない。



 庭園内をお散歩していると、シンバ様がロイド様と剣の稽古を行なっていた。


「おや、レイジ君。妹とお散歩かい?」


 僕とリリィお嬢様の存在に気付いた二人は、手を止めこちらに話しかけてくる。


「はい。お嬢様に外の空気を吸って頂こうと思ってお連れしたのですが……稽古のお邪魔になりそうですし、場所を変えさせて頂きます」


 一礼して僕はこの場を離れようとしたが、


「構わないよ。折角だし、僕の勇士を妹に見てもらおうかな」


 シンバ様はハハハッと爽やかフェイスで笑うと、再び剣を構えた。

 折角なので、僕も邪魔にならない位置まで下がって、お嬢様の相手をしながら二人の戦いを眺めた。


「ハァァァァァァ!!」


 シンバ様も"気"を使える為、ロイドさん相手でもそれなりに戦えていた。


「シンバ様、もっと踏み込みを強くして下さい」

「分かった!」


 まぁ、ロイドさんがかなり手加減してあげて、シンバ様に気持ち良く打ち込ませて上げてる感じ、か。

 それもそうか……ロイドさんはシンバ様に合わせて気纒(きてん)すら必要最低限に練ってるレベルだ。

 今はきっと、訓練の楽しさをシンバ様に教え込んでるって段階の筈。


 気持ち良く打ち込めれば、それだけで楽しくもなるし、ロイドさんの絶妙な力加減によって一本取れるかもしれない、という期待感もシンバ様に植えている感じだった。


「流石ですね」


 賛辞の言葉を誰にも聞こえないレベルで僕は呟くも、そんな僕の呟きを聴いている子がいた。


しゃすが(さすが)〜!!」


 お嬢様はヨチヨチと立ち上がって……、


「って立ってる!!」


 二本の足でお嬢様は大地を踏み締めていた。

見て頂き有難うございます。

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