レイジ君、大地に立つ(恐)
更新です。
俺は自分の種からこんな麒麟児が産まれるとは思ってもいなかった……。
我が家には優秀な子供達が居る。
長男のアルバ、六歳
次男のレイジ、四歳
長女のローリエ、二歳
長男は頭が良く、この歳で"気"の使い方も会得出来そうだ。将来、戦闘執事にも騎士にも成れる逸材だろう。
次にレイジは、アルバ程では無いが頭も良く、"気"を知覚している、と思う……。
何故ハッキリ断言出来ないかというと、レイジは"気"を知覚している様な動きを見せるのだが、何かを隠している感じがする。
その隠している内容までは分からないが、とんでも無い事の様な気がする。
何にせよアルバとレイジは年齢を考えればかなりの逸材だった。
「本当に将来が楽しみだ」
最後に長女のローリエだが、
か・わ・い・い!
この一言に尽きる。
この子は将来、傾国の美女になると俺は思っている。最初に見た時、天使が舞い降りたと錯覚した程なのだから。
「本当に将来が楽しみだっ!!」
大声でそんな事を言ってたら妻に殴られたが、これは娘に俺が取られると思って嫉妬したに違いない。可愛い奴だ。
コンコンッ。
近い未来を想像していると、夫婦部屋をノックする音が響く。
「父上、訓練をお願いしても良いですか?」
長男のアルバだった。
そう言えば、訓練の時間だったな……申し訳ない。
「すまない、訓練の時間が過ぎてたか」
「はい、ですが父上は忙しい身ですので気になさらないで下さい」
本当に俺には出来た子だ。
「さて、それじゃ訓練所に行こう……そう言えばレイジは?」
「先に訓練所に居ると思います」
「そうか、それじゃ待たせちゃ悪いし直ぐに行こうか」
「分かりました父上」
俺とアルバは訓練所に着くと、先に待っているレイジと合流した。
・
「さてアルバは先日と同様"気"を身体に馴染ませてみようか」
「はい、父上」
アルバは直ぐに"気"を練り始めた。
この"気"を練る訓練は本来ならば十歳位から始める訓練だ。
そんな訓練を六歳から始められるアルバは天才だと俺は思っている。
淀みない"気"を全身に纏う様子を確認し、特に問題無いと判断した俺は次にレイジへと視線を向ける。
「次にレイジは"気"を知覚しようか」
「分かりました父上」
「それじゃ、先日教えた通りやってみるんだ。勿論やり方は覚えてるよね?」
「覚えてます」
「ではやってごらん」
レイジは軽く深呼吸をすると意識を集中しはじめた。
「…………」
これ、は。
凄いな、深呼吸という所作だけで此処まで静謐な気を感じさせられるとは。
「驚いた。たった数日で"気"を知覚するなんて……レイジはもしかして、もう"気纒"出来たりするのかい?」
気纒。
知覚した気を全身に纏う、基本にして最大の技術であり、身体強化とも呼ばれている。
更に気纒の応用技として、纒技と呼ばれる技術もある。
これは気纒同様、身に纏った装備に"気"を流し、布の服を鋼の服に変えたり、ボロボロに錆びた剣を名剣の如く切れ味へと押し上げる事を可能とする技術だ。
この技術は繊細な"気"の操作力を求められる為、戦闘執事の中でも使える者は六割位しかいない。
この六割を多いと取るか、少ないと取るかは人によって違うが、俺は少ないと思っている。
理由は簡単だ、戦闘執事は大きな貴族の家でも十人前後であり、家格の低い貴族は家に一人、家長に専属戦闘執事を一人の計二人付ける程度だ。
つまり、戦闘執事と云うのは絶対数が少ないのである。
そんな現状の中、纒技が使えない四割は戦闘執事としては劣等生の烙印が押される。
そして其処で脱落した者の大半が、硬い防具や切れ味の鋭い武器を身に纏う騎士の道へと進む事になる。
勿論、騎士の道に進んだ後に纒技を覚える者もいる……と言うより、このパターンが才能無き者の王道だ。
それは何故か……考えみてほしい。
戦闘執事となって対象者の身の回りのお世話、警護をしている中で自身を強化する時間を取れる者はいるか? 答えは否だろう。
騎士の道に進めば有事の時以外、訓練こそが彼等の仕事だ。
戦闘執事と違って強化に割ける時間が段違いなのである。
「こうですか?」
俺の目の前でレイジは気纒を容易く行なった。
「凄いな……まさか、知覚する事をすっ飛ばして気纒を使うなんて……」
正に麒麟児。
アルバとレイジは将来、大きな家の戦闘執事として活躍できる実力がある……ならば二人の活躍する舞台を整える事こそが俺の仕事なのだろう。
本当に……末恐ろしい息子達を持つと大変だな。
見て頂き有難うございます。