レイジ君、仕事に忙殺(嘆)
お久しぶりです。
職場で栄転したのは良いのですが、忙し過ぎて泣けます。
彼女達の護衛を始めて一週間、僕はブラック企業で勤めるサラリーマンが如く働いた。いや、働かされた。
その原因は、主人公であるシンシアの行動にあった。
「ハァハァ、何で彼女達……って言うかシンシアはあんなに自由なんだ!」
まぁ、普通に考えればゲーム中、プレイヤーが自由気ままにマップを歩き動かしていた……これが現実になったのなら、これ位活発なのも仕方が無い事なのだろう。過去のループでは彼女との付き合いを最小限にしかしてこなかった為、彼女のこの行動力には本当にビックリした。
「……?」
そんな中、僕の糸が危険を察知する。
「あぁ〜……」
僕は溜め息が出そうになった。
それは歩く問題であるシンシアが新たな厄介事を呼び込んでいたのだった。
そしてそれは本来、正史ルートでリリィお嬢様が主犯として起こすイジメイベントって奴だ。
まぁ、今回はお嬢様も取り巻きのフランもシンシアの味方だ。
そして、ナナリーが背後にいるシンシアに絡むなんて勇者かっ!? と突っ込みたい。
更にその突っ込みを原作ルートのお嬢様にもプレゼントしたい。
「さて、相手は単なるモブお嬢様集団か……。どうせ生意気だ! とか平民の癖に! ってテンプレートな理由でシンシアを攻め立てるのが取る様に分かるね」
まぁ、この程度のモブならコレで良いか。
僕はモブお嬢様一人を履いている学園指定靴を地面に縫い付け、更にそれを周りの奴等に連動させた。
イメージとしては二人三脚だ。
皆が走る気満々なのに、一人の所為で皆んながコケるって感じだ。
「「「キャッ!!!」」」
僕の目論見通り、一人のモブお嬢様がシンシアに掴み掛かろうとした所、周りのモブ集団が自分達の戦闘執事を巻き込んで盛大にコケた。
一人の戦闘執事を除いて。
そして、あろう事かその一人が僕を見ている。
「嘘だろ? こんなに離れてる僕を正確に把握しているのか?」
こんな奴を僕は知らない。少なくとも原作にはいない筈だ。
ゲーム中のイベントもスチルも全部回収した僕が言うんだ、間違いない。
男は遠くに居る僕を見て口を動かしていた。
い ま か ら そ っ ち に い く。
次の瞬間、僕の視界に男が目前に迫り、剣を振りかぶるモーションが見えた。
疾い!
此処からあの場所迄をこの刹那的な時間で距離を詰めて来るのは驚嘆に値する。
「お嬢様に恥をかかすとは……死ねっ!」
「……だからってシンシアに恥をかかせる理由にならないでしょ……」
キンッ!
「っ!?」
モブ戦闘執事の剣は一切動いていない僕に届かない。
「瞬歩の技量は高いけど、それだけだね。私の糸を断ち切れないのだから」
「舐めるな!」
天元なら……いや、光波上位でも僕の糸を断てる火力はある。もしくは断てなくてもジンの様に暗殺向けな戦闘方法があるなら別だが……この男にはそれが無い。
首
両肩
肘
膝
モブは僕を攻撃するが、その何れもが一本の糸で阻まれていた。
「今からそっちに行く。何て言うからもう少し出来るのかと思ったのだけどね……」
僕は殺気を飛ばす。
「わ、悪かった……ゆ、ゆるしてくれ」
男は殺気にビビリ急に弱気になった。
「私は、僕はここ最近激務なんだよね……理由分かる?」
「?」
言葉の意図が判らないと云った表情が見える。
「君達の様な輩がシンシアに絡むからなんだよ? だから僕も少しはストレス解消しても良いと思わない?」
「ひっ!」
これから僕が何をするのかを察した男は踵を返して逃走しようとした。
「無駄、だよ」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「五月蝿いよ」
僕は糸を刺すと、男の声帯を潰した。
「──!?」
更に逃がさない為に脚の腱を切り、そのまま地面に転がすと宛らガリバーの様に糸で地面に縛る。
「悪いね。でも君のこれから残り少ない人生を考えると、さっさと壊れた方が楽になれて良いよ?」
「!!!」
そこからは地獄の様な光景が繰り広げられる。
何時も見ていただきありがとうございます。