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お嬢様、お嬢様(慎)

更新です。

リ○ンクが止まらない……。


 僕はお嬢様にナナリーが来た旨を伝えると慌てながらも「は、入ってもらって下さい!」と言われたので、部屋にあげた。


「どうぞ」


 お嬢様の準備が終わる迄の間、僕も学院側のメイド達と一緒に運び込まれる食事達を配膳し終えると、メイド達はあっという間に部屋から退室した。

 僕は彼女達が退室したのを確認すると、改めてナナリーに紅茶を入れて持て成す。


「どうぞ」

「ありがとう」

「いぇ、お嬢様の準備が整う迄の間、暫くお待ちを……」

「気にしないで下さい。私も迷惑になる時間に来てる自覚はありますので」


 可愛らしい笑顔を向けて来るが、僕からしたら悪巧みしてる顔にしか見えなかった。


「そうですか……それはそうとジンさんは?」

「フフッ、別の要件で暫くの間、私の元を離れております」


 あの人、応急処置したとはいえ色んな骨とか折れてたりと結構重症だった気がするんですが……。


「それに貴方達に頼む事も無関係ではありませんので……」


 やはり、此処に来たのは理由が有ったのですね。嗚呼、もう既に嫌な予感しかしない……。


「それはそうと、先日聞けなかった事があります。──貴方はどうしてシンシア様の正体を知っているのですか?」


 うっ……何て答えれば良いのか……。


「ナナリーさん、お待たせしました!」


 ナイスタイミングですお嬢様! これでまた先延ばしに出来る。


「……いぇ、待ってませんよ? さて、早速朝食を済ませましょうかリリィ」


 流石にお嬢様が居る状況でこの話題は出来ない以上、ナナリーは表向きな用事を処理する事にした様だ。


「そうしましょう!」



 朝の陽射し差し込む部屋の中、お嬢様とナナリーの食事が始まっている。


「…………」

「…………」


 まぁ、貴族の食事ってお茶会以外では、食事中のマナーが厳しくて必要な事しか喋らない──だとしても何故ナナリーは本題を話さないのですか?


「…………」

「今日はリリィにお願いが有って来ました」


 暫く食事が進んだ中、ナナリーが漸く口を開く。


「何ですか?」

「フランやシア同様に私もレイジさんに護ってもらえませんか?」


 何となくだがそんな気はしてました……。


「えっ? でもナナリーさんにはジンさんが……」

「彼には別の仕事をお任せしました」

「でしたら、家に連絡を入れれば別の戦闘執事(バトラー)を手配してくれるのでは?」

「ジンやレイジさん以外の戦闘執事(バトラー)を私の側に置くのはイマイチ信用出来ませんの」


 僕はいつの間にナナリーの信用を得たのだろうか?


「……ですが」

「──勿論、私もタダでとは言いません。貴方に必要な情報を私が集めましょう」

「えっと」


 お嬢様が困惑してる中、ナナリーの口は止まらない。


「そうですね。例えば──」


 そう言ったナナリーは一部学院講師の性格や趣味趣向、家族構成、隠している秘密といった事を教えてくれた。


 僕も全部を知っている訳では無いが、僕の知っている情報部分が全て一致している以上、他の部分も恐らく正しいのだろう。


 ──成る程、これはナナリーが言っていた相互協力関係の一環だろう。

 僕がナナリーの警護を請け負えば、ジンを自分の計画に集中させる事が出来るって訳か。


 そして、この話し合いも僕との協力関係を今後は堂々とやる為の物。

 ……確かにナナリーの言う通り、僕と無関係じゃないね。


 だったら僕が取る行動は、


「リリィお嬢様、このお話しを受けても宜しいかと思います」


 これで良いんですよね?


 僕はナナリーに軽くアイコンタクトを送ると軽く微笑んだ……気がした。


「レイジ兄様がそう仰るのでしたら……分かりました。しかし、そうなるとナナリーさんにはある程度私達と共に過ごして頂きますけども、それは宜しいですか?」

「勿論ですわ! ですが、どうしても離れなければいけない時はどうするのです? 例えば部屋の中とか……」


 当然の疑問ですね。


「後程、私が部屋に糸結界を張らせて頂きます。暗殺者が来たとしても少しだけなら時間が稼げます。その時間で私が駆け付けましょう」

「……成る程、分かりましたわ。それでお願いします」

「承知致しました。──レイジ兄様のお仕事を増やしてしまいますが、宜しくお願いします」

「お嬢様の為でしたら、このレイジ、粉骨砕身でやらせて頂きます」


 まぁ、何とかなるでしょ? ナナリーも逃げる事に関しては天才だし、何かあれば自分で逃げるでしょうし。


「お話しも纏ったようですね。……それではお嬢様方、そろそろ学院に向かう時間で御座います」


 この無駄に広い寮の所為で、学院迄時間が何だかんだと掛かる。なればこそ早めに出ないと遅刻してしまう。


「もうそんな時間でしたか、有難うレイジ兄様!」

「有難うレイジさん」


 僕と二人は部屋から出て学院へと向かう。

 勿論、警護対象のシンシアとフランソワも当然ながら途中で拾った。



 さて、今日から本格的な授業が始まるのだが……基本的に戦闘執事は入学式同様、後ろで見てる事になる。


 僕は毎ループ、この時間は隠れて"気"を練り上げる訓練をしている。

 コレの練度を上げれば瞬時に"気纏(きてん)"を行って戦える。更に"纏技(てんぎ)"で糸をコーティングし、敵を即座に細切れにも出来る。


 今だって、極細の糸を教室に張り巡らせて様子見していたりする。

 この糸結界は声を拾えないが、悪意の有る"気"がお嬢様に向けば、その悪意を糸で拾って感知する。


 故に僕は自分の訓練をしつつ、お嬢様もしっかりと警護が出来る一石二鳥の訓練って訳だ。


 まぁ、天元(てんげん)レベルの戦闘執事(バトラー)にはバレるだろうけど、運が良い事にレオンはクラスが違うので問題ないし、同じクラスのナナリーもジンが居ないので気付ける筈も無し。


 つまり、この教室では僕のやりたい放題って訳だ。


 そんな僕が"気"を体内でクルクル移動させたりしていたら──ふと、視線を感じた、視線を辿るとナナリーと目が合う。


「っ!?」


 僕と目が合ったナナリーは慌てて目を背けると、再び授業に意識を戻す。


 どうも彼女は僕の正体が気になってしょうがない……って言った所だな。さて、どう対処したものか。


 まぁ、本当の事を言えば僕のカードが無くなるから、小出しで情報を出して話題を逸らしていくか。

何時も見て頂きありがとうございます。

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