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レイジ君、ガールズ空間に沈む(嘆)

更新です。


 まさかジンに会うとは……。


 彼は戦闘執事(バトラー)の他に、暗殺を生業とする存在。

 名前を聞く迄、僕が彼を把握出来なかったのは、彼がゲーム中では名前だけしか出ないキャラだったからだ。


 彼はあるルートでナナリーを影ながら守って密かに死んでいくのだ。そんな、名前だけのキャラが僕に接触する。


 こんなパターンは初めてだ。


 今回のルートは一年前の誘拐未遂に始まり、既に僕の知らない事が起こり始めてる。


 こうなってくると、お嬢様が本当に聖女ルートに乗れたのかも慎重になって動いた方が良いかもしれない。


「「「あははは!」」」


 そうしないと、今の光景が日常化するかもしれないからだ。


「フランソワさん、シンシア、このショートケーキはとっても美味しいですわ!」

「そうですね、リリィ様ー! こちらのモンブランも大変に美味ですわよ」

「お姉様! こちらのガトーショコラも美味しいですわ! 少し食べてみて下さい! はい、あ〜んして下さい!」

「あら? それでしたらリリィ様! 私のモンブランもあ〜んして下さいまし!」

「ふ、二人とも! 順番に頂きますので落ち着いて下さい」


 気まずい……。


 今、このテーブルには女三人、男一人……場所は学院備え付けのスイーツ屋だ。

 他の席には当然、別のお嬢様方達も居て、付いてる執事達も僕同様に居心地が悪そうだ


 僕も甘い物は好きだけど、正直この空間は甘ったる過ぎる。(ガールズラブ)の意味でもね!


 まぁ、それでも僕としては仕事が増えた状況でシンシアとフランソワが固まってくれるこの状況は助かる。


 僕は先程「二人は戦闘執事(バトラー)が居ないの……ですから、彼女達も私と同様に気に掛けて下さいね、レイジ兄様!」とお嬢様にお願いされた。

 フランソワに限って言えば、実家に送った手紙が届けば新しい戦闘執事(バトラー)が送られて来るとの事だからまだ良い。


 しかし、シンシアは別だ。


 表向きには平民の彼女だが、主人公である彼女は必ずトラブル(イベント)を持ち込んでくる。


 人手が無い中、正直勘弁して欲しい。


 それにリオンが助けるべきイベントも必然的に僕が助けなきゃいけなくなる。


 本当に厄介しかない。


 ……フランソワが浄化されるなら(ケイロン)を壊すべきじゃなかった。(ケイロン)が居れば少なくとも二人体制で護衛出来た。


 まぁ、人手が足りない中で守護対象が纏まってくれてるのは非常に助かる。


「レイジ兄様もショートケーキ食べませんか? 良かったら私があ〜んしても良いですよ!」


 僕はお嬢様のお巫山戯を微笑みでスルーしつつ次のイベントを待った。


「そろそろか……」


 次のイベントのタイミングを察した僕は一人呟いた。


「こんにちわ」


 来たか。


「初めまして。私、天元(てんげん)二位のナナリー・ミザレスと申します。皆様、どうぞ宜しくお願いします」


 乙女ゲーム……いや、恋愛ゲームにおいて何も知らない主人公に情報等提供するお助けキャラが存在する。

 攻略対象の居場所だったり、何をプレゼントすれば良いかとかのをアドバイスする都合の良い役者。

 その役者を担っているのが、この天元(てんげん)二位のナナリーだ。

 彼女は専属戦闘執事(バトラー)であるジンを使いってあらゆる情報を拾って来る。


 そして、本来は情報収集に奔走しているジンは基本的にナナリーの側にいない。


 居ない筈なのに……。


「やぁ! レイジニイサマさっき振りだね」


 ジンがいた。

 いや、講堂に居たから可能性として考慮していたが……さて、どうするべきか。


「あら、二人は知り合いですの?」


 そんな僕等にナナリーが不敵な笑みで問い掛けて来る。

 その反応は全てを知ってる僕からすれば余りにも白々しく感じる。


「はい、講堂で少々話しをさせて頂きました」


 しかし、無視する訳にもいかないので、僕は当たり障りの無い返答をした。


「そうでしたか! あっ、私にはフルーツタルトをお願いするわ」


 さり気無く席に着いて注文をしている。つまり居座る様だ。


「私もお茶会に参加して良いですか?」


 完全にお願いと言う名の命令だ。


「は、はい! どうぞ!」

「ワ、ワタクシモカマイマセン」

「…………」


 お嬢様も流石に緊張で何時も通りではなく、フランソワも棒読みになっており、シンシアに至っては半分意識が飛んでいた。


「私ね、リリィさんの戦闘執事(バトラー)が戦う一連の流れを観まして感動しましたの!」

「有難う御座います」


 お嬢様が賛辞の言葉に素直にお礼をした為、僕も倣い一礼して返す。


「それで……何ですけど宜しければ貴方達のお友達に私も混ぜて頂けませんか?」

「えっと、私達で宜しいのですか?」

「勿論ですわ!」


 お嬢様は恐る恐る聞き返す。


 まぁ、この反応は当然だろう。相手は格上も格上の貴族。普通に考えれば真っ当な友達に収まらないだろう。

 天元(てんげん)相手となると間違いなく上下関係が出来る……筈なんだが。


 僕は今回のループで知った。


 原作及び過去のループでもあり得なかった、フランソワとお嬢様が本当の友になり、主人公のシンシアさえも心酔させた。


 今回のお嬢様なら或いは……。


「はい! 宜しくお願いします!」

「それでは私、堅苦しいのは嫌なので気軽にナナリーと呼んで下さい。私も皆様の事をリリィ、フラン、シアと呼ばせて貰うわね?」


 微妙な違いはあれど、原作のシンシアとナナリーとの出会いが目の前にあった。


 そう、非常に原作と似ている。


 だからこそ僕は思う。


 ナナリーが自分の目的を前にした時、その(・・)選択肢を選ぶのか……。


見て頂きありがとうございます。

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