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お嬢様、リトライ(悲)

他で書いてる作品が、終わり迄の流れが出来たので、息抜き新作。



「リリィ・クラディスよ貴様の犯した罪は国家反逆罪に相当する物だ」


 今、私は王城にて一方的な裁判が行われている。

 正直、何でこうなっているのかは私にも分からない。

 私がやった事なんて、他の貴族ですら当たり前の様にやっていた些細な嫌がらせ程度の物だ。


「よって、貴様は死刑に処す」


 私は偶々一人の女をイジメ、その相手が偶々大国の継承権12位の妾の隠し子で、偶々その女が王位に付く事となった……。本当に私はただ、運が悪かっただけだ。


「何か申したい事はあるか?」


 そんな事をこの場で幾ら説明した所で、大国のご機嫌取りに必死な王家や、その家臣達は私の首を差し出すだろう。


 だけど、私は死にたくない。


 確かに私のやった事は悪い事ではある。しかし、それに対し死で償う程の罪でもない。


 ましてや、あの忌々しい国の王女は阿呆な位お人好しだ。あの程度の事で私の命を求めるなんて事は絶対しない筈。


 だからこそ、当事者同士を無視したこの状況が私には納得いかない。


「……そうですね、でしたら──」


 今の腐敗した王家に対し未練は全く無い。


 だったら自身の命の為、私のやる事は一つ。


「──レイジ、私を助けなさい」


 私の絶対的な味方を呼ぶ事にした。


「お嬢様の御心のままに……」


 この場に透き通る様な声が響くと、


 バリィィィィン!!!


 ガラスが割れ、音と共に執事服を纏った一人の男が私を護る様に姿を表す。


「皆様にご紹介させて頂きますわ。私の戦闘執事(バトラー)、レイジよ」

「ご紹介にあずかりました。私はお嬢様の戦闘執事(バトラー)をやらせて頂いております、レイジ、と申します。以後お見知りおきを……」


戦闘執事(バトラー)、貴族達の身の回りのお世話からボディーガード迄こなす職業。

 "気"と云う力を駆使し、自身を武器として敵を薙ぎ倒す戦闘執事は、貴族達の一種のブランド品みたいな存在だ。


 出来る執事達はそれだけで引っ張りだこに成る程人気となり、そして力の有る執事が忠誠を誓う家は、それだけで周りに脅威を周知させる。


 しかし、


「貴様の様な弱小バトラーが此処で何が出来る!」


 木端貴族が云う通り、私の専属バトラーは訳が有って無名として通している。だからこそ私を脅威と思わない下賎な輩が現れ私を侮る結果となったのだが……。


 だけど私を殺そうとするのならば、そうも言っていられない。


「私の邪魔をする者を排除しなさい」

「承知いたしました」


 レイジが私の言葉に応えると同時に一陣の突風がこの場を駆け巡る。


「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」


 色んな方向から断末魔が聞こえてくる。


「お嬢様、騒がしい輩は始末致しました。それでは参りましょう……」


 そうしてレイジは臣下の礼を取り、私の方に手を差し出す。


「よくやりましたレイジ、それでは行きましょう」


 貴族の令嬢らしくスカートを持ち上げ、挨拶をした後、差し出された手を取る。


「それでは御機嫌様、皆様の今後の活躍をお祈り致しますわ」

「──行かせるものか! 騎士達よこの者達を逃すでない!」


 王が一瞬の惨殺劇から一早く立ち直ると、矢継ぎ早に指示を飛ばした。


 ジャキジャキと鎧を着込んだ騎士達が出口から集結しはじめる。


 騎士とは戦闘執事と同等の存在であり、やはり"気"を使って戦闘する者達だ。──違いが有るのだとしたら、執事と違って身の回りのお世話と言った雑務等を率先してやる事は無い位だ。


 その代わり、戦闘といった荒事は彼等が率先して対処している。

 そんな戦闘のプロが私達の道を塞いでいた。


「道を通して頂けませんか? 私こんな所から早く帰りたいのですが……」

「罪人リリィよ! 大人しく刑を受けよ!」


 騎士団長らしき人物が私に刑を受ける様に促すが、そんなのはお断りだった。


「刑を受けるつもりなら、私は最初からこんな事してませんよ?」


 満面の笑顔を騎士達に向けると、


「レイジ……やりなさい」


 そのままレイジに指示を飛ばす。


「御心のままに」


 レイジの承諾と共に、笑顔を向けていた騎士達は一瞬にして細切れとなって地面へと転がる。


「それでは改めて御機嫌」


 私は優雅に出口を潜り、階段を降りると、


「ピギャァ!!」


 私は華麗に階段を踏み外した。


 ドタン!


 バタン!


 ゴキッ!?


 そのまま私は意識が薄れていく。


「……えぇ、またっすか……」


 薄れゆく意識の中、そんな声が私の耳を打った気がした。

見て頂き有難うございます。

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