表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

もこもこの子羊

 目の前に大きな綿の塊が落ちていた。

 手の込んだいたずらだと思った僕は、その塊を拾おうとした。

 その時、塊が動いた。

 綿の四隅からにょきっと足が出て、それは起き上がった。小さな子羊だった。

 耳と鼻をぴくぴくさせて僕に寄ってくる。

 その仕草に心を奪われた僕は子羊を抱きしめた。

 あたたかい毛に顔をうずめ、もこもこの心地よさに我を忘れた。

 子羊は抵抗することも鳴くこともせず、僕に抱かれた。

 他に所有者がいないのなら、この可愛くておとなしい子羊を自分の物にしたいと思った。毎日この子羊に触れていたい。そう、何もかも忘れて。

 それにしても、この毛はなんて良い香りだろう。

 この香りはなんだったっけ?

 毎日嗅いでいる気がする。

 不快に感じない、花のような香り。

 そうだ、これは柔軟剤だ。いつも洗濯機に投入している柔軟剤の香りだ。

 でもどうして子羊から柔軟剤の香りがするのだろう?

 もしや・・・・・・。

 

 気がつくと僕は毛布に抱きついていた。

 時計を見ると、起床時刻の二時間前を指していた。

 状況を察した僕は子羊など最初からいなかったことに淋しさと虚しさを感じつつ、ベッドから起き上がった。

 今日も僕の孤独な一日が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ