Drink love
片手にもったマグカップを覗く
底は陶器独特の艶とミルクの跡
私の周りではたくさんの人が同じマグカップを持っていた
底はそれぞれ別の飲み物で満たされていた
一口飲めば、喉が焼けるように熱かった
一口飲めば、胸が避けるように苦かった
一口飲めば、甘い中に酸味が少し隠れてた
一口飲めば、飲み干したくない甘さ
誰か、私に注いでくれませんか?
だれか、わたしにそそいでくれませんか?
黄金色の温かい紅茶を
炭酸が弾けるお酒を
光を反射させる水を
反対の手に持っているティーポットから
目の前で止まった氷のぶつかる音
目線を合わせた彼はにこやかに注ぎ口をこちらへ
隣の差し出されたカップは既に汚れていたけれど
私のポットからでいいんですか?
あんたのカップに注いでみたい
目線とその言葉を合図にカップが満たされる
カラメル色の香りと少しスパイシーな炭酸が私のカップに
夜色の香ばしい香りと黒糖の甘さ入りの珈琲が彼のカップに
一口飲めば、体がしびれる程の驚きと冷たさと甘さが身体を満たしていく
一口目は、ほの甘くて苦い温かさが身体を満たしていく
半分からじんわりと酸化・変化して
最後飲めば、カラメルが喉を焼くような甘さが残って
最後飲めば、独特の酸味が喉に残って
御代わりは、と口を揃えたがカップはそっぽを向いている