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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第二十三章 ユラスの荒野に潜むもの

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71 『アーツの限界点』男、戻る




そんな会議の後に、ファーストフードなど買い込んで寮の食堂で久々にダベっているアーツ。


今日は家庭持ちのタウやベイド夫妻などもいて、少し大きくなったターボ君もイータと来ていた。相変わらず愛想がない赤ちゃんで、大人気だ。



「…サダル議長、明日帰るっていうけど、シンクタンクから計半月以上いたんじゃないか?ユラスはいいのか?」

「ユラスを動かしているのは実質、首相だからな。」

「そうなん?」

「仕組みがよく分からん。」

「首相は国によって、成り立った立場が違うから。でも基本ユラスでもユラスのトップは首相だよ。部族組織が強いから議長の発言権も大きいけど、力の住み分けもされてて関係はいいらしい。」


「チコさんよくそんなところに入ったな。

結局、族長親族でなく、チコさんはアジア人だったんだろ?」

チコは統一アジア籍を持っている。

「…だいたいさ、ここだから言うけれど、いくら6年議長不在だったからって、立ち場弱すぎないか?雰囲気が悪くてジョア議員とか、打倒サダルかと思ったよ。最初。」


「………チコさんは元々はアジア人じゃないよ。」

「…え?」

「だって、もともとユラス軍にいたんだろ?結婚前からユラス籍じゃん。」

国籍のない国の国家軍人にはなれない。ユラス人でなかったから邪険にされているのかと思っていたメンバーもいた。

「二重国籍?」

「サダル解放の時、ユラスのニュースでサダル両夫婦の簡単な紹介が流れて、10代でアジア籍取得ったってあったから。隠してる感じじゃなかったと思うけれど…。議長もアジア籍を持ってるし。」


混乱しているが、一般には公表されていない事情はこうだ。チコは傭兵からユラス軍に引き取られた時にユラス籍を、完全ニューロス化するためSR社に入った時にアジア籍を取得した。出生以外で二重国籍を認められるのは、連合国家内でなおかつ国家や世界的に非常に重要な位置にいる場合、もしくは身分を公表し立場的に誰もが認められる位置にいる者だけである。チコもサダルもアジアに入国、保護された時点で、早急に国籍が準備された特例である。

歴史の岐路であったため、とにかく東アジアの保護圏に置きたかったからだ。そのため両国で実質的立場が安定するまで、いざという時のための極秘の案件であった。



「…どっちにしても、なんでこんなに立場ないんだ…。」

あんな厳格な国で、全部族最高位の配偶者が、あんな風に人前で蹴落とそうとされるなんて。この前のソライカ連続ビンタの件が忘れられない。


「ファクト!お前知らないのか?」

「今はアジア、ユラス両籍ってことしか知らない…。」

それはみんな知っている。



なお、連合加盟国内の国籍はメインを1つ作って、各国家の規定内なら両親の母国など実体があれば2つまで他に持つことができる。

住民権は連合国内なら基本いくつ持っていても問題はない。その代わり生まれ育った国と両親の母国以外に、連合国未加盟の国家や人本主義国家がある場合、様々な厳しい条件が付き、住民権の絞り込みを要求されることもある。上記に当てはまる場合や、住民権や住民票が4か所以上あると監視対象となり、移動の動向などは全て記録され、現所在の細かな報告義務も発生してくる。


行政サービスは住民票のある現住所が適用されるルールだが、国家間移動が多い者はこれまで微妙な位置にいた。しかし、優秀だからこそ様々な国家間を行き来する場合も多いし、多国籍経験があるからこそ、できる仕事もある。

有能な人材を手放さないためにも、現在は移動が多い住民も、仕事や理由がある場合、両国に住民税を納税している者や多額納税者は、どちらの基礎行政サービスも受けられる場合がある。ただし、どんな立場でも、選挙権は国籍のある一国分しかない。


また、連合国家群は内は、場所によってはサービスを併用できる。今後、ベガスの正規住人は、医療など各組織の保険でなく、他地域に作る同じ研究都市で、同じ行政サービスの共有ができるようになる予定だ。





「愚民諸君!それには私がお答えしよう!」


「っ?!!」


そこに現れた、『アーツの限界点』だったか何だったか。

元クラブ通い、モアである。



「皆さんお久!」


「おおおおおおおおーーーー!!!!!!」

「モアーーーーーーー!!!!」


突然の騒がしい奴の登場に、この輪にいなかった者たちも注目する。


「モア!お前どこにいたんだ?!」

「むしろ探せ、薄情者ども。」

「…いや。去勢されたとか、ムショ送りになったとかだったら辛すぎて、話に出せなかった…。」

「触れてはいけない存在だと…。」

「送られるかよ。サルガスに聞けよ。」

「え?サルガス知ってたの?」

「どっかで生きているという事しか知らん。学校には行ってただろ?」


この男、アーツ第1弾。

シグマやキファ、ローに勝るアホである。クラブ通いであれこれ女を変えていたが、なぜか厳しい試験に受かり、少なくとも試用期間半年は大人しくしていた、一応初期Bチームのトップクラスである。


あの人誰?という顔をしている、非大房民や第2弾以降メンバーに説明するファイ。

「あまり近寄らない方がいい人。ああいう大人になっちゃだめだよ。」

以上である。

「モアもファイに言われたくないよな。」


「で、なんだモア?捕まりに来たのか?今、サダルって超怖い総長いるから、すぐに(はりつけ)にされるぞ。」

「モアなら動くと同時に極刑だろ。お前マジ動くな。」

「人を巻き込むな。」

「大房民を陥れるな。」

まだ何もしていない。


「議長は知ってる。サダルメリクだろ?知らない方がおかしい。」

存在は知っているらしい。

「それより、モアどこ行ってたの?」

ファクトは知りたい。


「あ?俺?大学行って、ユラスに留学してた。」


「はあああああ???!!!」

「ユラスに留学????」

驚きのアーツ。みんなの発想になさすぎる。新しい。


「そもそも大学?お前が??」

「俺ここの藤湾生だよ。文系だからか、場所が違い過ぎてお前らにはあまり会わんかった。」

理系ならもっと会わないはずが、みんなで響の研究室に通っているため、底辺大房なのになぜか理系領土でならちょくちょく見かける。

「ウソだろ?」

「思ったより頭がよくてごめんな。」

そういう問題ではない。

「そんで、ユラス語を習っているうちに、俺って才能ある?ってなって、ユラス人のリズッド君とお友達になって、ホームステイしてた。ユラスに。」


「マジ?!」

モアは、音楽も強く多言語も多少分かるので、言語系には強いのだろう。


「ユラス人に手ぇ出してないだろうな…。」

「あんな恐ろしい人たちを前に、そんなことができるとでも思ったか?手を出したら、連行の前に本人にその場で処罰されそうだわ。」

純粋なソラは、それが女性に手を出した時の事と分かっていないので、モアは暴力的な人なのかなと勘違いするが、むしろ女性には優しい。とことん優しい。


状況報告をして、またみんなそれぞれ談話を始める。



「………で、分かったんだけど…あまり大きい声で言うべきことではないが、聞きたい奴いるか?」

モアの周りにいた、主に第1弾が下町男子やリーダーたちが集まってくる。

「やだな、みんな大房のオバちゃんなの?」

と言いながらも、聞き耳を立てるファイ。


「…あのな。サダル議長も、ユラス国内に後ろ盾がないんだ。」

「……………」

「は?一番権力があるナオス族の族長なんだろ?」


みんなしんとする。



チコだけでなく、サダルにも後ろ盾がない?



「何だその顔。お前ら、自分が仕えている人の経歴くらい知っとけよ。

とくに第1弾。直下の弟子のクセに!」

モアに反論できないが、過去を詮索するのも失礼だと思ったのだ。


でも、一応アーツ第1弾は服従を約束させられたチコの弟子である。


「この辺はニュースでも共通語訳されてるから知ってるかと思うけれど、ナオス家長は一族虐殺の生き残りだろ?」

「…え?そこまでは知らない。」

「…なんとなくは知ってる。」


「お前らそのくらい調べろ!一定の年齢以上のユラス人はほとんど知っていると思うけれど、サダル氏の家族親族はサダル氏が生まれる前に母親以外みんな亡くなっているんだよ。」


「………え……」

さらにシンとしてしまう。



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