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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第二十三章 ユラスの荒野に潜むもの

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70 地域対抗意識



ロボメカニックが終わって、サダルたちはまだこれまでの仕事を取りまとめ、チコは事務局でのアーツ定期ミーティングに来ていた。


相変わらずイケメンな総長は、黙っていれば本当にカッコいい。チコといい、響といい、パイといい、シンシーといい、黙っていればカッコいいのだ。黙っていれば。なぜか喋るとみんな大房のオバちゃんになるのだが。


アースティーを飲みながら、新体制を確認しているチコは、サルガスたちにいくつか質問するとフェクダと共に席を外した。



その後にソアがぼそっとつぶやいてしまう。

「チコさんって、本当に横顔やうなじがキレイですね。なんかあそこに口を沈めたくなる…。」


ブゴっと咳き込んでしまう男性陣。隣りでサラサや打ち合わせをしていたカウスも固まる。


だから、それを言うなっつーの!と、男性陣はツッコむ。

時々、ぼそっと危ない発言をするソアである。


「大房に美容師の友人が数人いるけれど、絶対にカットモデルになってほしいと思う。」

ポケーとまだ何やら言っている。



カウスも言わないがそう思う。


チコはあれでジョアに幻滅されたと思っているが、絶対に違う。ユラス女性が長髪なのは実に理にかなっている。首筋や顔型頭部のきれいな女性はショートや坊主でも美しいのだ。むしろ色気が増すので隠してしまった方がいい。ジョアは幻滅していたのではない、見惚れていたのだ。


「ほんとあの人危ないっすね。」

シグマもズバリ感想を言ってしまう。

「でも、なんか自分はチコさん男前過ぎてゴツくしか感じないんだけど、その感覚でよかったわ。マジで。」


アーツとしては、チコ周辺はイコール去勢危機と、大房のオバちゃんのイメージが強過ぎて不可侵地帯となっているが、今更ながら思う事はいろいろある。


みんな言わないが。




***




その夕方、サダルはVEGAやアーツ、アーツに関わる藤湾メンバーなどを集める。アジア駐在、ユラス軍などと後方に控えた。


人事である。



サラサが発表をしていく。


「まず、VEGAアジアに関しては、既にVEGAには知らせてありますが、チコが外れ(つづみ)が就任します。正確にはVEGAベガス事務局長ですね。

エリス牧師はベガス自治区域総長を引き継ぎます。エリス牧師に準備が整うまで、(つづみ)はVEGAに籍を置いたまま、その執行の助手もお願いします。」

現在ベガス中枢は住宅地というより実験、研究都市の色合いが強い。VEGAでしていることが町機能そのものなので、エリスの就任も鼓が手伝う。


鼓が立って礼をすると拍手が起こった。


「現VEGAアジア総長も人事となり、新事務総長は元連合国総次長バージル氏をお迎えします。バージル氏は後日就任式前にいらっしゃいます。」

バージルはアジア全体のVEGA事務局長で、事務所はアンタレス中央区にある。直接の活動に口出しはしないが、アジア全体の責任者であるため、視察など来るであろう。


そして、南海青年たちの人事もいくつか発表され、これまでベガス構築、河漢事業でサルガスたちアーツと並んで動いて来た青年の何人かに役職が加わる。同じように立ち上がって礼をし、サラサはその一覧を映して、みんな全体像を確認した。



そのまま次に続ける。

「そして、チコ総長はベガス自治区域長からも外れます。」


ここで少し騒めく。

遂に他大陸に飛ばされるのか。それとも自ら飛んでしまうのか。



チコは無表情だ。


「ベガス総長、正式にベガス自治区域総長は、先ほど申したようにエリス牧師が任命され、チコ氏はアーツベガスの総事務局長のみ残します。なお、私、サラサもVEGAとアーツの顧問のみ残します。」


ファイがホッとする。

「わ~ん。チコさん!!」

「よかったな、ファイ。」

「これで、イケメンなチコさんのお顔がまだ拝める~。」

この前泣いたファイをシグマが励ますが、超個人的な理由であった。

「…。」

「ついでに、アーツと南海のリージョンリーダーもお知らせしておきます。」


そこで、河漢、ベガスの大分類、小分類したリージョン名が読み上げられ、現在関わっている他の区域も投影と共に発表していく。


「東中央区?常若(ときわか)も入るのか。」

「都外も出て来てんじゃん。」


「常若のお店ってかっこいい人多いんだよ。アンタレス女子に人気だし。」

「そうなの?今度行こうよ。」

ファイとタウ妹ソラに新たな友情が生まれる。ソラは大人びた見た目によらず、ややミーハーである。

「えっ?響先生も誘ってあげて。」

と、著しくタラゼド評価を落としたリーブラがお願いする。もっといい人を見付けてほしい。


「いいよ、行かなくて。響先生誘うと絶対騒がしくなるもん。イケメンは見るだけでいいの。コーヒー飲みながら見てるだけでいい。」

妄想でいいのである。むしろ妄想のままでいたい。

「え?響さんもイケメン好きだよ。誘おうよ。」


くだらない会話だと、横で聴いている下町男子ズ。

「常若なんて、雰囲気イケメンの集まりだろ。」

「あいつらが何の役に立つのか。」

「雰囲気でもかっこいかったら勝者だよ。ほっといて!」


「雰囲気イケメン、ウヌク。お前この件どう思う?」

「こっちも雰囲気で勝てばいい。」

なるほど。それくらいしか勝ちようがない。



「はい、静かに!

まだ規模が小さいところや遠方は、基本ベガスに来てもらうことを前提とします。振り分けがない所はその時ごとに臨機応変に行きましょう。アーツ第3弾は、もう実地に入っていきます。先輩方はよろしく。大房民ばかりでないので、恐喝しないように。

なお、行政担当もにアンタレスから120人体制で任命されるそうです。」


「行政から120人ってすごくないか?」

「天下りしまくりだろ。」

「120人でどうやって20万人もの河漢民を動かすんだ。」

「どれもこれも嫌すぎる。」


「大丈夫です。こちらと話のできる者だけ関われるよう幹部クラスとはチキンと話をしているし、あちらも専門職員で霊性試験に受かった者だけです。雑務をする人間はまた別です。新しい行政施設を数か所で作っていくので、これでも足りないくらいです。おそらく最終的に数千人規模で公務員や半公務員が必要になると思います。

向こうの人事は今週中に連絡が来ます。」

会議室が騒めく。


「ベガス構築が本当に成功したら、数万人…6ケタ台の公務員が生まれるかな。」

ただし、ベガスは半社会主義体制を作っているので、ある意味ほとんどが半公務員とも言える。一般の会社で働いている者も、一定の社会義務を果たしていかなければならない。


場合によっては半強制で割り当てられる仕事もあるが、その代わりここでは一定の生活が保障され、過剰生産や過剰労働も必要なくなり、余暇なども資本主義社会の一般の務めより多く取れるようになる。


多くの人が勘違いしているが、社会主義は一種類ではない。民主主義の中にも様々な主義があるように、社会主義自体は善でも悪でもない。治める人住む人の人間性と、その社会がどんな方向性を持っているかの違いだ。

この理想が本来聖典の最初に描かれていた世界だが、旧教も新教の指導者がその意味を見付けられず、達成できなかったので、今世界がもがいているのだ。




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