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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第十七章 フォーラム前夜
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6 誰にでも身にならないことはある。

閑話です。



今日も爽やかな朝の南海。


スポーツウェアなど爽やかに着こなしている女子一軍に、絶妙にダサい人が1人いる。


Tシャツに短パン、その下にレギンスのお馴染みの格好。響である。

素粒子ニュートリノ君イラストの入ったブカブカTシャツも、パッションオレンジのド派手な短パンも、他の科の生徒からの貰い物。なぜか、イベントのたびに他の科の生徒がユニフォームをくれるので、勿体ないからとそれを着て運動をするのである。


「うわー!響先生、この固さはヤバいよ!」

「そう?朝だから、柔軟性あると思うけれど。ウチでヨガしてるし。」

リーブラが押しても、体の曲がらない情けない先生。ソラがまた異生物でも見るような顔をしている。数学0点とか、柔軟性0とかベガスはいつも未知の世界だ。


見かねたファクトが簡単な技を見せてあげた。

「響さん、こうやってストレッチしてみて。少し変わるから。」

「えい!」

ファクトの説明と全然違う動きをしている。


そこにやって来た、朝からハイテンションのしょうもない男。

「先生ー!お久しぶりです!!」

キファとついて来たクルバト書記官にティガである。

「先生、やっと運動始めたんですか?」

超絶嬉しそうだ。

「キファ君はあっち行って。わざわざアーツと重ならない場所に来たのになんなの?」

「じゃあ見てる。」

「見なくていいから帰って!」


それでもキファが見ているので、少し移動して再度ストレッチを始める。

が、あまりにもひどい。アーツに来たばかりだったラムダよりはいいくらいである。まず、伸脚すらできていないので、教えてあげようとまたみんな近付く。

「響先生、そこはもっと腰を落として。」

「黙ってて!」

「だって、先生。そんな派手な服だから、遠くでも目立つし。」

「気になるよな。」

キファでなくとも、クルバトも気になって仕方がない。

ニュートリノ君Tとオレンジが不器用に動いているのが遠くからでも分かるのだ。


「もういい。ストレッチはしたから今日は縄跳びをする。」

「先生朝から縄跳びなんてしたら、疲労と筋肉痛で研究室で倒れてるんじゃない?」

「…本当にうるさなあ。そこまでひどくありません。二重跳びだってできるんだから!」

ほー、響さんが二重跳び!とみんなの注目が集まる。

「見せて見せて!」


「きっと驚くよ!見てなさい!」

響が数回普通跳びをしてから、思い切って回すと前のめりにしゃがみ込む形で1回二重跳びができる。

「おーーー!」

と、みんな拍手する。響なのにすごい。

「どう?できるでしょ。」

ティガが無言で抱腹している。ファイは二重跳びができなかったので、ファイよりダンスができなかった自分ができたことに満足気なのだが、ここでキファがいらないアドバイスをする。


「先生、ちょっとその縄長くない?体に合わせて短くすれば、多分もう少しできるよ。」

「勝手にアドバイスしないで。これで十分だから。」

「短くすればあと数回はできるってば。それだけじゃあ、運動にならないよ。普通に縄跳びした方がいい。」

「何?そんなこと言ってキファ君にはできるの?二重跳び!」

「え、出来るよ。多分。小学校以来やったことないけど。」

「そんなんでできるわけないでしょ!」

ユラス軍人すら驚いていたAチームの運動神経を未だ舐めている響。


「じゃあ先生、縄跳び貸して。」

「…はい。」

受け取って考える。

「出来たら、なんかしてくれる?」

「しません。でも拍手してあげます。」


「少し短すぎかな?」

と言いながら、キファは持ち手に入っていた縄を伸ばす。そんなところに縄が隠れていたのか!と響は感心するが、褒めてはあげない。

「まだ短いけどいけるかな…。」



そして、キファは数回飛ぶと、歩くように二重跳びを始めた。自然過ぎて、二重跳びをしているのかも、初めて見る人には分かりにくい。

「へ?」

響の二重跳びと全然違う。


「ええっっ?!!」


それから一度やめて、跳ばずに変則で何回か縄だけ回した。

蛍惑ペトロではあや跳び、二重跳びまでしか習わなかったが、東アジアでは大体小学校で後ろ二重(つばめ)返しまでするのだ。運動神経のいい男子中心に4重跳びまでいけるか争い、五重跳びまで出来たら学年の英雄である。


キファはもう一度仕切り直して二重跳びを始め、三重跳びに移り数回したところで、ハヤブサから、交差二重。そして、(つばめ)返しに切り替え、二重燕で、最後に片手の縄を投げて受け取り、響にVサイン。


「おおーーー。」

みんなから拍手が上がるが、声のない響。

「…。」


「響先生、拍手拍手!」

ファクトに言われて、呆けたまま拍手をする。そしてキファは少し縄を短くしてから縄跳びを返した。


響は、この人たちに無様な二重跳びを見せたせいか落ち込んでいる。

「大丈夫?」

ファクトが声を掛けるが、我に返ってサッサと自分の世界に戻ることにした。



「もういい。普通に縄跳びする。あっち行って。」

「先生、きちんと指導受けた方が、絶対効率がいいよ。」

「そうだよ。響先生、私もちゃんと指導を受けたらあや跳びや交差二重もできたんだよ。」

リーブラまで味方しない。キファに教えさせるのは癪だが、いかせん響はどん臭すぎる。

「響さん、腕を回したらダメだよ。手首を回すの。腕は少し固定した方が跳べるよ。」

ソラはただアドバイスをしただけである。


ここで、大人なメンバーなら、できない響をいちいち刺激するようなことは言わず、運動を始めたことを自体を褒めてあげるだろうが、なにせ年齢的にはストレート大卒にもならない面々。そのうえ、自分たちは厳しいトレーニングを続けてきたので言い訳がましい響に、思ったことを口にしてしまう。


「頭に来た!」

少し離れて黙って縄跳びをし出すが、疲れたのかトントン飛びで、なおかつ跳び方が悪いのかやはりすぐ引っ掛かる。


もう一度始めたところで、ファイが止める。

「響さん!ストップ!ストーップ!!!」

その場を離れようとしていたクルバトも、何だなんだともう一度振り向くが、ファイに怒鳴られる。

「あんたたちは去りなさい!」


「ファイ?どうしたの?」

響が、赤い顔のファイに近付く。

「響さん、縄跳びはやめましょう!!」

「え?」

「私の性癖に刺さり過ぎます!揺れています。」

小さい声で言っているが、女子には丸聞こえである。

「え?何?」

リーブラほどではないが、響も胸が大きい。ブカブカT越しでもちょっと分かる。リーブラは運動時、かなり押さえ込んでいるのだ。

「…何?」

「ここでする話ではありません…。今度、運動用買いに行きましょう。」

分かっていない響と、意味を理解して呆れる女子陣。

「もー、なんなの?楽しく運動だから、縄跳びにしたのに。みんなして邪魔しないで!」


「とにかく響先生、楽しく運動したいなら、あきらめずに1週間くらいまたダンスもでしてみたら?そんなんだと縄跳びも3日で終わるよ。」

「…。」

キファにちょっと響がキレ始めた。


「だいたい、キファ君。ダンスとかもできるって、あんなのその場その場のアドリブでしょ?それっぽくなら誰でもできるよ!演技上手なんでしょ!」

この前の事をまだ根に持っているのだ。

「…それっぽくってって、一応全部定型の型はあるよ。」

ステップを目で汲み取れない響にとっては、ステップなどその場ごとのアドリブにしか見えないのだ。

「何気に、リーオの職業もディスってるよね。その言い方。」


「響さん、それはちょっと聞き捨てならない!」

そこで立ち上がる、今日の畑仲間。



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