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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第二十一章 ロボメカニックエキスポ

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50 新たなニューロスアンドロイド



その頃シリウスは、メイン会場が見渡せるVIPルームから会場を見つめていた。


ファクトがいる。そして、ギュグニーとユラスと、アジアの混ざったあの子も。



全館のカメラ映像やサーモグラフィを把握していたシリウスは、自体に送られる映像や可視できる領域でイベント全体を見ていた。


シャプレーが後ろから聞く。

「気になることは?」

「分かりません。でも、北極星が動き出しています。」

「………そうか。」



同じく別のVIPルームからはサダルがアセンブルスたちと会場を見ていた。ミザルもいる。

「会場に総長が入りました。」

「分かった。」




***




折角コパーから逃げたのに、まさかこんなことになるとは。


「タラゼドのアホーーー!!!」

なんと電話を掛けるとタラゼドはメイン会場にいるという。


「何やってんの?そっから出て来なさい!会社の人と昼飯でも行けばよかったのに!」

『は?知らん。そのつもりだったのに、会社の人が行けっつーから。あ、ちょっと待て、クルバトたちがいるわ。』

「ばか!切らないで!」


そしてファイは後悔する。コパーが仕事の入りなのか出なのか聞いておけばよかった。お昼時間なので、休憩だったらしばらくはいないと思うが、今、会場入りしたところだったら困る。


「何?タラゼドもいるの?」

イオニアが嫌そうな顔をする。


「タラゼドって顔は知らんな。」

殆ど仕事で来ないので、名簿でしかタラゼドを知らないゼオナス。

「イオニアがタラゼド呼んできてよ~!」

「いやに決まってんだろ。」

「あんたたちの間に友情はないの?!」

「ない。」

「あると思っている方がおかしい。」

「ファクトまで余計なこと言わないで!」


そこでファクトが助け舟を出すした。

「俺呼んでこうか?」

「ファクトと私は、コパー(やつ)がいたら取り込まれるからダメ!!」

タラゼドも取り込まれればいいのにと思うイオニア。


「はー。俺やっぱ帰るわ。」

イオニアはちらっと響を見てため息をつく。やっぱしかわいい…と思う。


「おい、仕事どうすんだ?ついてこい。」

兄ゼオナスが困った顔をする。これからまだ数万世帯引っ越し、整備があるので、アーツでもそのための機体をいくつか買おうと言う話があり、一旦ゼオナスが下見に来たのだ。いろいろな場所で講習やプレゼンをするのため車もほしいので、大きな買い物をするなら相談役がいる。




一方会場内では、リゲル、クルバト、ラムダがタラゼドと合流していた。


流石メイン会場というだけあって、演出も他とは全然違う。SR社からも見たことのない女性型ニューロスがたくさん出ている。人間もニューロスの目印となる「(はん)」を付け、人間のコンパニオンと区別がつかない演出などしている。

社長たちと動いているような無印(むいん)のニューロスアンドロイドはブースにはいない。



しかしタラゼドが興味があるのは自動車会社。

ニューロスだけでなく、自社自動車とニューロス、人間を並べている。つまり、自動車も見れるのだ。


「ここのニューロスかわいいですね!」

「ボニッシュはニューロスか?」

「ここは普通のロボットだけど、一部はSR社と提携してニューロスのはずです!」

ラムダ、興奮を隠せない。

どこの会社も性能ではどうしてもSR社に一歩敵わないため、その不足分を別の魅力で演出するニューロスを作っている。この会社は展示会において、今回「エルフのような」をモチーフとし、男女共に少しかわいくも、非常に美しい機体を作っていた。

「ここでもいいんだけどな。お手頃だろ。」

クルバトがイオニアと相談している。丸過ぎず、尖り過ぎず、男女共に人気のある自動車会社だ。



高級メーカー『ヴォール』のテーマは「女神」。


ホログラムやメカで、天使のような羽が生えていたり、後輪や天使の輪っかが出ていたり。演出で着飾ったニューロスがオープンカーとピックアップトラックの荷台に乗っていた。まあ、使い古されたネタではある。

「ここの車買ったら税で死ぬな。」

「間違いない。」

大型の車は、都市内では税金が高い。


ラムダは車上の女神に手を振ってもらい、思わず振り返している。

「めっちゃ可愛い!!」

マスコミ以外は三脚や望遠レンズを構えなければ記念写真も撮れるので、写真撮りまくりである。



その横は『バンジェット』。


ピックアップトラックやジープにミリタリースタイルの男女が乗っている。

おそらくアンドロイドであろう軍人張りの男は、クラズ並みにガタイがいい。都市部、辺境など数パターンの軍服をモチーフにしている。

「これ、絶対ファクトの好みだよな。」


ここはスポーツ系のバイクも作っているので、ミリタリー仕様のバイクも数台並んでいた。

クルバトは早速ファクトに電話すると、ファクトは1つ返事で『待って!行く!』と言って、電話の向こうのファイに…おそらく叩かれている。コパーがいるかもしれないのに動くなという事だろう。



と、そこでさらにその隣の自動車メーカー『ディザッド』で、タラゼドが止まる。

女性の声で名前を呼ばれたからだ。


「タラゼド?」


「?」

少し距離があって、タラゼドは分からない。

「…?」

そして見回しても分からないでいる。



なぜかと言えば…


コパーが整形級メイクをしていたからに他ならない。



はにかんだ顔で、ディザッドのブースからタラゼドに手を振るコパー。

やっと存在を分かってもらえるも、整形級メイクのコパーはタラゼドに気が付いてもらえなかった。ただの客へのサービスだと思われてしまったのだ。



そこに、アーツメンバーが、バンジェットとディザッドのブースの間で集合してしまう。


そして、7メートルほどの距離を置きながらも顔を少しだけ合わせる、コパーとタラゼドに気が付く。

あー、出会ってしまったと思う一同と、止まった顔で見てしまう響。



タラゼドは誰だか分からないが既視感のある女性に礼をして、みんなの所に行く。誰だ?

自分の知っている範囲を想像しても思い出せない。タラゼドは合コンやクラブ、ライブなどにも関心がないので、向こうだけ自分を知っているならどこかの大房民くらいだろう。妹の友達か?昔の同級生?


だが、思い出そうとするのも一瞬。もう関心がなかった。


「あ?なんでイオニアが?…」

流星(リウシン)兄弟の方を振り向く。

「…えっと、ゼオナスさんですよね。こんにちは、タラゼドと言います。」

すっかり頭を切り替えて、直接は話したことはないゼオナスに挨拶をしている。ファクトとファイが「コパーは?」と、見てみると他のお客さんに対応していた。


「タラゼド…、先のコンパニオンさんは?」

ラムダが興味津々である。

「は?先の?…とりあえず車見よ。」

と、ディザッドのブースに行く。バンジェットは見る分には男心をくすぐるが、価格も高いし、都市では実用的ではない。



…と、


気が付いてないーーー!!


こんなことがあるのか。

きれいになり過ぎた元カノに気が付いていないタラゼドに、先コンコースで会った一同はツッコみたい。


「ねえ、タラゼド。なんか人が増えて来たから、お昼行こうよ!」

ファイが止めるも少し見たいと、クルバトと車を見ている。


ボーと様子を見ている響を、ボーと見ているイオニア。を、さらに見ているゼオナス。「何だこの図?」と、ファクトが首をかしげる。


「なんか人が増えて来たな。ファイ、ラムダ。お前ら離れるなよ。はぐれたら下のレストラン街に行っとけ。」

リゲルが迷子になりそうなメンバーに声を掛けておいた。

「うん。」




その時であった、なぜか会場に顔を隠したチコと、レオニス、フェクダ、女性兵グリフォが私服で入って来たのだ。比較的一般人に近い体系のメンバーで、メインステージの方を見ている。フェクダは少し気学外だが。


え?チコ、絶対来たくないって言ってたのに。


チコはサングラスに大きめのジャケットを着て、フードを深く被っている。


ファクトは他にも、カウスや名前の知らないユラス兵がいるのを感じだ。

「なんだろ?リゲル…。チコやユラスの人間がいる…。」

「チコさん?」

「響さん。今日、チコが来るって聞いてた?」

「…ううん?」

ファクトの騒めきに気が付いて、危険なのかと思い、響がそっとファイを引き寄せた。

「響さん?」


ただ、戦闘的な敵意はしない。ここにいるイベントニューロス体はいざとなれば、護衛になる。抜群に証拠も残るし、SR社のニューロスたちがひしめき合っている中で、何か仕掛けてくる輩がいるとは思えない。




時間的にランチタイムが終わり、メインステージでは既に午後最初のイベントが始まっていた。


「人が増えたな。とりあえず今は出るわ。」

タラゼドがめんどくさそうに言うと、さりげなくコパーが近付いてきた。

「なんだ、あの女!別れたのに!」

キレかかっているファイ。と、そこで響がガっと、後ろから肩に手を回された。

「わあ!」


響が驚いて振り返ると、先のほどの柄の悪そうなお姉さん。

「何でお前らがここにいるんだ?」

「チコ!」

「チコさん!」

「イオニア。ベガスに戻ってくる気になったのか?」

「兄貴の付き添いです。」

「…戻って来いよ。」

そして、ファクトの頭をポンポン叩いてから、タラゼドの頭をバゴ!と叩く。

「いて!なんだ?」

「今度の問題児はお前か!ムカつくな。」

「はあ?」

叩かれた意味が分からずタラゼドはチコに怒る。


後ろでコパーが戸惑っているが、仕事上展示会場では特定の人を一方的に構えないので、仕方なく引いた。




そして、メインステージ。

メカニックの会社『ベージン』からの新作発表があると、聴衆たちは大きな盛り上がりを見せた。『ベージン』はアンドロイド業界3番手である。気が付くとマスコミも集まって来ている。


「…ここから司会はベージンにお譲りいたします。どんな新作が発表されるのでしょうか?では、よろしくお願いいたします!」

イベント主催の進行から、ベージンの女性に場が譲られる。


「皆様、今イベントの最大の発表、楽しみに待っていたでしょうか!」

MCの女性がベージンのCEOである中年の男性を招き入れた。CEOが手を振って堂々とした笑顔で出て来てくると大きな拍手が湧く。


チコが少しブースから離れてステージの方に向くので、他のメンバーも思わずステージを見る。


ベージンのCEOが感激の挨拶を終えると、ステージにスモークが広がり、ライブのようなライトアップがされ、他のブース客やスタッフたちも注目した。

「では皆様!お待たせいたしました!」


もったいぶるその声。


「今回の新作、ベージン社の最高傑作。

ニューロスアンドロイド、そしてヒューマンでもある…


『モーゼス』の登場です!


大きな拍手でお迎えください!!」




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