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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第二十一章 ロボメカニックエキスポ

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48 ロボメカニックエキスポ



警察署前の階段を出るファクトたち。


まだ朝なのに既に疲れ切ったタラゼドと、その後にゆでダコになりそうな響がリーブラに引かれて、エントランス外にいたファイやジェイ、リゲル、ラムダやクルバトたちと合流した。

「待ったよー!先チコさんたちも来たんだよ!」


心配した一同が声を掛けるが、事件のせいで沈んでいると思ったのに、響の顔が赤い。

「…。」

「何?」


みんなで署内から出て来たメンバーを見るが、誰も何も答えない。

「私も詳細は知らないもん。ね?先生。」

「…警察とかに囲まれて緊張しただけです。」

え?先生、今更警察相手に緊張する?と、率直な疑問を投げつけたい一同。普通暴力を振るわれた相手に警戒するものだが。


「じゃあ俺行くわ。」

タラゼドが去ろうとするので、ファイが怒る。

「なんで?ロボメカニック、一緒に行けばいいじゃん!」

「お前らと行って仕事になるか。」


「あの、私も帰るね。」

響が言うと、ファクトも帰ろうとする。

「ファクトも一緒に行こうよ!」

「シリウスがいるからイヤだ。ネットストーカーだから。」

それに、行ったところでもうラスと話し合える気もしない。


「流石のシリウスも、人混みどころかプレスやマスコミのいる所では控えるよ…。」

ラムダも誘ってくるし、楽しそうではある。ファクトは高性能ニューロスアンドロイドより、メカメカしたメカニックが好きなのだ。ジージー、ピコピコと動く、メカメカしたのを見たい…。

「…なら、様子だけ見て帰る。」

「よし!決まり。」


「タラゼドは、先生連れて行ってあげて。」

今朝、響はファイたちとタクシーで来ているので足がない。

「一人で行くと言ってるだろ。」

と、言っているうちにタラゼドと響を置いてみんな去ってしまった。


「…」

「…。」

唖然とする二人。

「…なんかみんな。勘違いしてますね。」

響は、笑うしかないという感じだ。


「ベガスまで送ろうか?」

「…いいですっ。…今日はどこかで買い物でもして帰ります。」

慌てて言って、それから少し気持ちが落ち着く。そういえば、ずっと仕事。ジムには通っているが、このところ街も歩いていなかった。

「…丸々休みも久しぶりだし。大房見学でもして帰ります。」


え?昨日あんなことがあったのに?とタラゼドは驚く。


やはり、昨日くらいの事では、響には痛手にもならないのか。話に聴くと、多勢のチンピラを相手にシンシーやリーオを咄嗟に庇ったらしい。普通の女性なら逃げるか足がすくむだろう。

かといって、響はスピードがあるわけではない。相手の油断があってこそである。そもそも普段からよく男に声を掛けられるのに、大房では危なっかし過ぎる。


「響さん。一緒に行こう。」

「はい?」

「倉鍵の方に送って行くよ。買い物はそっちでした方がいい。」

「え?いいです。メカ博に行って下さい。遠回りじゃないですか。」

「土曜は大房もけっこう人が多いから…、女性一人はお勧めしない。」

「…なら買い物できるところまでタクシーで行きます…。」


「取り敢えず、一緒に行こう。今日はフリーなんだよな?」

「…はい。」

堂々巡りなので、響の手を取って駐車場まで連れて行き、メットを被させらせる。昨日の今日で、響を一人にさせられないので、リーブラたちのところに連れていくことにした。


「乗って。」

「え?」

「あとで、リーブラたちと買い物しろ。」

「…」

「早く。」

「…。」


スカートを言い訳にしようと思ったら、今日はロングスカートのようなパラッツォパンツだ。バイクに絡むと危ないので、裾をブーツに入れると変な格好にり、あまり笑わないタラゼドが少し笑っている。

「…。」

タラゼドでも笑うんだと驚く。


そして背中に超コンパクトタイプのエアバックを付けられた。

「ひどすぎる…ダサい…。」

変な格好にさせられて少し怒りたいが、移動の間だけならいいかとあきらめる。響も、タラゼドが「ダサい」と思っても、『思っただけ』という性格も理解したので、もうどうでもいい。




その奥で話す声。

「まだ何かしてる?あの二人。」


ファイたちが去るまで、警察署内に留められていたナンパ4人組とコンビニ男は、またしても駐車場でもたもたしている二人に遭遇し昨夜のように隠れていたのであった。

「何やってんだ?」

「ダサいけど楽しそうだ。」

「ダサい?」

「うらやましい。」

「姐さんに話しかけたいんだけど。」

「またしても、出る幕を失ったな。」

「何であの二人を見るとドキドキするんだ…。」



タラゼドは5人に気が付いていたが無視して動く。

「大房を出たら、高速で一気に行こう。ベルトしておいて。クっ…」

上空に上がる時はベルトが要る。響が不格好でまた笑っていた。タラゼドが笑っているところは、今日初めて見るかもしれない。

「もういい!サッサと行こ!」

怒った響を後ろに乗せて二人は博覧会場まで走る。


タラゼドがどんな顔をしているのか分からなかったが、響はずっと変な気分だ。バイクを降りても掴まっていた手や、メットごしに背中に触れた頬が変なままだった。




***




オープンの混雑を避けたため、スムーズに会場入りできた下町ズ。


木曜から開催で、初日は完全な企業やプレス、専門者向けで、昨日から一般が始まっているロボメカニック博。



「おー!この子めっちゃいい奴!」

400以上の企業が出展する中、ファクトはタラゼドたちと合流し、工事、建築関係企業のブースでどこかの会社のマスコットキャラと遊んでいた。

「は~。貝君を思い出す!貝君元気かな。」


「ほんとだ!おもしろいね。」

猫ほどのロボットが、器用にボルト打ちをしている。タラゼドが営業の人と話し込んでいるので、隣で響と見学しているところだ。


「お!タラゼド!」

「ああ、こっち。」

ブースの方に数人の人が集まって来た。


仕事柄のせいか思わず立ち上がって、礼をしてしまう響にみんな注目する。

「私はタラゼドさんの知り合いで、彼はタラゼドさんの寮生です。」

ファクトも礼をするが、不愛想なタラゼドが紹介してくれないので、会社の人が先に口を開く。

「タラゼドの会社の者です。こっちは課長と室長、あと同僚たちです…。」

「どうも!」

「お姉さん、タラゼドの身内ですか?」

「近所に住んでいます。」


「おーー!」

と、なぜか低い声で盛り上がり、一方タラゼドはなぜか落ち込む。



タラゼドが会社の人と他のブースも周りに行ったので、響とファクトは近くをいろいろ見て回った。


「響さん、昨日タラゼドに告白したの?」

「は?してないよ!」

「だったら、警察署での話はなんだったの?」

「あれは…。」

「…」

「…したんじゃなくて…」

「…されたの?」

「違います!」


「一気にキスされた?!」

「そんなわけないでしょ!」


こういうことに疎いファクトであったが、大事な姉さんたちの将来の事だと思えば、がんばりたいのである。なのに、響が怒って小声で叫ぶ。

「タラゼドさんに、『もしかして自分の事好きなの?』みたいに言われたの!」

「うわっ!すご!」

「でしょ?ちょっと、どうなの??」

「え?好きなんじゃないの?」

「え??!!」

あんなに何度も待ち伏せされたら、誰だって少しはそう思うだろう。響としては、ファクトにもそう思われていたと知ってショックである。


「私は…ペガサスに乗った銀髪バイオレットアイの王子様に会いたいの…。」

「姉さん、諦めなよ。」

「…うう。そうだね。もう四捨五入したら30だもんね…。はあ。」

まだ25手前なのに、四捨五入二十歳を頑張らない響である。

理想がどんどんファンタジーになっていく。タラゼドは少女漫画、女性小説には出てこない系だ。見た目だけならヤバいバトル漫画のパワー系ファイターか悪役で、えぐい敵やモンスターを素手で数千は殺っていそうである。ぜひファーコックの仲間にしたい。



「…ファクト?」


「え?イオニア?」

するとそこに、なんとイオニアとその兄ゼオナスがいる。


「イオニア?何で?」

「兄貴がいろいろあって、メカ博に来たいっていうから…」


そして、目線は一点。

「なんで、響さんまで??」

「朝一で響さんたちと大房警察署に行ったから。」

「大房警察?」

と少し考えてイオニアはため息を吐く。またこいつらの周りで何かあったのか。


「…だいたいお前らなんで、コソコソ寄り添い合って好きとかどうとか言ってるんだ?!そういう関係なのか?!」

「はあ?違うよ。」

「響さん、高校生はヤバいだろ。ファクト、お前コロす。」

「イオニアさん、黙って!複雑な話なので、勝手に話を広げないでください!私のタイプはドラゴンに乗った青髪赤目竜族の竜騎士です!」

先、語ったばかりなのに、既に最終形態に入っている。人すらいなくなった。


はあ?脳天大丈夫なの?という目でゼオナスは響にドン引きだ。

「響さん、浮気はやめて下さい。」

「誰に浮気するの?!」

「白馬や黒馬の王子はどこに行ったんですか?」

白馬の王子ゆえにフラれたイオニアとしては納得いかない。

「…。どっか。」

「響さん。もうさ、ファーコックみたいな人でいいじゃん?それに比べたらめっちゃ現実的だよ。」

「ファクトも何も言わないで!」


話の間に入れないゼオナスは黙って3人を見ていた。




そんな時、ファイから電話が入って、トラブルがあったのでメイン会場近くに来てほしいとのこと。


SRエレクトロ二クス社や、SR社メカニック、その他の大御所メカニックメーカーや老舗ロボット開発自動車メーカーが集まる大会場である。高性能ニューロスヒューマノイドも半分以上はそこに集合している。

「あんまり行きたくないんだけど。」

と、ファクト。

「でも、タラゼドさんはまだ会社の人と回っているし。少しだけ行こか。」


響もこれで逃げられるとばかりに進んでいく。ファクトが予定を確認すると、シリウスとの時間にはまだぶつからない。

スタッフも多いし、リゲルやクルバトがいるので大丈夫だと思うが、念のため自分たちも行こうとゼオナスが言い出す。


渋ったが、何があったのか分からない。イオニアもそこまではファクトたちに付き合うことにした。




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