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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第二十章 エキスポ前夜

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46 好きな人に好きなのかと説明される



もう一度、響がサイコスを発動させようとした時だ。


横からコンビニ男に、

ダン!

と横蹴りが入った。


ズサーーーッと男が茂みに倒れ込む。

「ひっ」と響は、自分をひっこめた。


「大丈夫か?」


タラゼドだった。


思わず、身動きできなくなる。

「そ、そっちの人の方が大丈夫でしょうか…?」

倒れ込んだ男を指す。

「芝の方に飛ばしたから大丈夫だと思うけど。」


コンビニ男が起き上がって掛かってくるが、簡単にその拳を制した。


「おい!」

周りの男たちも構えるが、タラゼドを見てひるむ。

「タラゼドか…?」

男たちが反応しているので、響がチラッと見てみるが、本人は何でもない顔だ。

「タラゼドさんのこと知ってるんですか?」

思わず響の方が聞いてしまう。

「めっちゃ強くて有名だ!」

「え?そうなの?!」

戦っているところも見たことがないし、アーツでそこまで目立たないから、まあできる方くらいに考えていた。


「お前こそ、知り合いなのか?彼氏か?」

「か、彼氏??!!」

「そうなのか?」

「な、何言ってるんですか!違います!お友達です!ね?」


「まあ、お友達なんか?先生、リーブラたちが心配してたぞ。」

「あ!もう大丈夫って伝えて。帰るから!ここにファイを呼ばないで!あの人なんかあった人の従弟らしいから。」

タラゼドに牽制されている男は大人しくなる。が、こんなことがあって普通大丈夫なわけがない。


タラゼドはリーブラたちに、響は無事に見付かって、そのまま帰るからと電話で伝える。妹やファイたちはどこかで食事をして、そのままルオイの家に泊るらしい。

響は、ほっとした。


そして、タラゼドはコンビニ男の連れに言う。

「こいつの従兄が問題起こして迷惑してんだ。絶対にこの辺の女性に手、出すなよ。」

「はい…。」

他の男たちも大人しくなる。


「あ、あの…」

響が去ろうとすると男たちに止められた。

「は?なんだ?」

「いえ!姐さんにお話が!」

「?」

「姐さん、秘孔を教えてください!!」

「私?」

「4千年の歴史を教えてください!」

「え?私、4千年とか言っていないんだけど。」

「お願いします!」

「ダメです。悪いことに使わないという確証のあるにしか人しか指導しません。」

「そこを何とか!」

「いやです。」

「なら、せめてお名前だけでも!」


「いやです。あなたたち、お友達のライブがあるんでしょ?さっさと行きなさい!」


そう言って、響はズンズン歩いて男たちから離れていった。




大房の雑踏とした明かりが移り変わっていく。


「響さん、どこ行くの?帰ろう。」

「タラゼドさんも来ないでください。」

「文化会館あっちだよ。」

反対の方のビルの隙間に、大きな建物が見える。

「……。」


「このまま反対に戻ったら、まだあの男たちがいるかもしれないから、回り道します。」

「…でもさ、先のってどういう状況?一人は危ないと思うんだけど。警察呼ばなくてよかった?」

「………大丈夫です。彼ら、ちょっと脅そうとしていただけみたいなので。」

「脅す?」

心理層に入った時、女性へ乱暴をするという感じではなかった。多分、少し脅した後、ナンパでもする気だったのだろう。フラれたら口悪く罵る感じではあったが。


タラゼドとしては、あの状況の後でとても女性を一人にはできない。ただ、響は多分、一人でもあの場を切り抜けただろうなとは思った。でも遠目で見ると男は倒れ込んでいる感じで、押し倒されているところから起き上がった響も見ている。


「多分、あの人、前に蹴散らした分の仕返しがしたかっただけだろうから大丈夫です。」

妹ルオイが言っていた話か?と思い出す。


そして、進んでいく響を後ろから追い駆けた。

「響さん、一緒に帰るかみんなの所に行こう。それか、もうこのままタクシーで…」

「いいです!」



少し響の声が震える。


響自身が思っていたより、先の事はショックだったらしい。今になってひどく動揺しているのが自分で分かる。

今日は何でもない講座ではあったが、ベガスから大房側への初のアプローチだ。失敗したり問題を起こしたくなかったので、無事終わるようにと実はずっと緊張していたのだ。先、担当さんと話していた時学生から連絡が来て、大学の方は無事解散と聞き、どれだけ安心したか分からない。


「………だいたい。」

「……」

「…だいたい、タラゼドさんが、駐車場にいるからいけないんじゃないですか!」

「え?」

「あ!」

言ってしまって後悔する。いて悪い理由がない。


立ち止まって振り向く。


が、どうしていいのか分からない。

しょうがなく、しどろもどろになって大声を出してしまう。


「アーツの人には会わないようにしてたのに!」

「…あ、そう?ごめん。」

「……そうです!」

「でも、こんなことがあった後はさすがに…。あ、…響さん、顔の横、擦れてる。」


触るつもりはないが、場所を示そうとして手を出すと、

「やだ!来ないでください!触らないでください!」

とビビられる。タラゼドも慌てて引いた。

「っごめん…」


響が自分で触ってみると、おでこの横が少しだけズキズキすした。


「そもそも…。そもそもなんでタラゼドさんはいつもいるんですか…!」

「は?」

いや、いつもあなたがウロウロしているから会ってしまうだけだが?と、思うが、響が興奮していそうなので黙っておく。


「…確かに、たまに会うよね。最近はオカンの誕生日しか会わなかったけど。…とにかくリーブラに連絡するから一緒に帰るんだ。」

「………しないで……」

「…そういう訳には…」


「…少しだけ……」

「……」

「…少しだけ一緒にいてください。まださっきの事でドキドキしています。落ち着いたらタクシーで帰ります。」

「………」


変な沈黙が続く。


なぜか突っ立ている二人。

「どっか座る?何か飲む?」


動かない響。


「…響さん?」

「………。」


「あの…久しぶりに会ったら安心しました…。」

「あ?妹?元気だろ。」

「………。」

「いつもうるさくて。」

「……違います。タラゼドさんにです。」

「…?」

「いつも忙しそうで…今は全然会えないし…」

「…………」

混乱するタラゼド。少し前と言っていることがかみ合っていない。


「私のこと忘れてるんじゃないかなって…」

「……」


話が続かない。

「……。」

話し掛けられれば話すが、自分からはあまり話をしない男、タラゼドは額に手をついて考える。


「響さん…」

「?」

響が、何とも言えない揺れた顔でタラゼドの顔を見る。


「こういうの、こっちから言う事ではないんだと思うけど。」

「…?」


今までファクトやリーブラが散々言って来た言葉が、やっと頭の中で繋がる。


「何ですか?」

「違ったら、すごい恥ずかしいんだけど…」

「……?」

「あ、やっぱいい。」

「何ですか。そこまで言ったなら言って下さい!」



響は何だろうとキョトンとした顔で待っている。

「いい。」

「何ですか!言って下さい!」

あきらめたようにタラゼドは口を開いた、



「響さんって、俺のこと好き?」


「?!」



ここで初めて響が、目が覚めたような顔をする。


「へ?」


タラゼドも自分から言ったことが情けなくて、手で顔を覆う。


「……は?へ?」

「だから…」

「……そんなわけないじゃないですか!!!!」


赤面で完全に否定する響。

タラゼドも言った手前、大げさに否定されて焦ってしまうが、それ以外に響が自分を待ち伏せしていただろう理由がない。自分以外にもしていたら、それはそれでヤバい人だ。


「普通、そんなこと言います??」

「言わない。超意識過剰な人間だろ。」

「そうですよ!」


「…分かった。ごめん。なんか今、今までで一番恥ずかしい気がするから、帰るわ。リーブラたちに電話するから、絶対に一緒に帰るようにな。」

「やめて!電話しないで!」

こんな、火照ってしまった気持ちと顔で、人に会えるわけがない。


「とにかく、座って下さい!熱が引くまで待ちましょう!」

「熱?」


そばにあったベンチに座る。

横に座ると恥ずかしいので遊歩道向かいに座るが、今度は姿が見えるので恥かしい。


しょうがないので、最初のベンチの横にあった、石の一人掛けに座るが、しばらくすると立ち上がって、あっちこっちチョコチョコうざい。

「何やってんの?」

「…私の勝手です!タラゼドさんが変なことを言うので、意識しちゃったじゃないですか!!」

「……忘れていいよ。この歳になって、黒歴史更新した。」


響は早くタラゼドにどっかに行ってほしいのか、一緒にいてほしいのか完全に分からなくなっている。



しばらく座って、

「響さん、いつまでもこんなところにいても仕方ないから今日は帰ろう。」

と、一旦文化会館に戻り、トイレでおでこの横を水で洗い簡単に湿潤バンドを貼っておく。


タラゼドが駐車場まで連れていき、どうにか言う事を聞いてくれる響と2台でロースピードでベガスまで帰ったのであった。




…と言う、一連の流れを少し遠くで見ていたのは、


実は先のライブハウスの男ども。


姐さんを探すがごとく追いかけていたのだが、タラゼドが怖いので様子を見ているうちに、なぜかこんなことの渦中に出会ってしまう。多分タラゼドは覗いていた存在に気が付いていたが、途中で放っておかれる。


「お前、顔が真っ赤だぞ。」

「マジ?」

「何だろう。俺も…俺まで恥ずかしい………」

「…ヤバい…。自分の中の何かがヤバい…。」


今更女の話に赤くなるような面子ではないのだが、どうしてか男たちも赤面して、出るタイミングを失い、そこにしばらくたたずんでいたという…。




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