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ZEROミッシングリンクⅢ【3】ZERO MISSING LINK 3  作者: タイニ
第十七章 フォーラム前夜
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13 ベガスの役割




「なあ、なんでファイがお茶係なんてしているの?」


午前少しだけ南海でミーティングがあり、会議室はいつものアーツ、南海、藤湾、帰国組が資料を作っている。お客さんがいる時以外そんな係はない。


なぜが今日はファイがお茶&整頓係だ。ゴミ捨ても全部するのでサルガスやタウ、イータたちが呆気にとられて見ている。

「ファイ、土日は仕事しないとか言ってたのに。」


「仕事ではありません。懲罰として奉仕活動をしてもらっています。」

「懲罰?」

「総長に、弱虫、へなちょびん、口だけ、弟狂、変態、人さらい、嘘つきなど人前で言ったので、上司を貶める言動は慎んでもらうためにも奉仕義務を頑張ってもらいます。」


ソアが説明すると、すっかり慣れた藤湾メンバーでもさすがにそれはだめだと思う。帰国組は顔が青い。


「弟狂と、変態は合ってるけど、それは言いすぎだろ!」

シグマが思わずソアを制する。

「ソアだって今みんなの前で言ってる~!」

ソアがギッとファイを睨む。

「とにかくファイはファイの仕事をしてください。」


「私に襲いかかったしな…。物を投げられた上に、首も絞められた…。」

チコが冷たく言い放つので、スゲーなファイ。と下町ズから賞讃を受ける。

「チコさんだっていろいろしたし!あんなの大房の番長、元締め、悪の帝王じゃん!あんな悪どい顔の人初めて見た!」

大房の番長って…しょぼっ!と下町ズは思う。


「ファイ、邪魔すんな。」

サルガスが牽制するので、無言でキーキー怒りながらペットボトルなどダンダン並べている。ムカついたので、この場に似に合わないかわいいゆるキャラや子供アニメのお菓子、子供の駄菓子など買って間食にと置いておいた。


その横で、フォーラムの計画書を見て感心している女子組。

「凄い。自分たちで用意せずに、全部イベント会社に任せるんですね。」

昴星(むらぼし)女子ミューティアは、学校と連結しているのでどうしても学生のイメージがあるのか、そうではないのだと驚いてしまう。

必要なブースなどは外部発注。河漢と重なって準備に人手を割けないし、写真展示などもほとんどしない分、理念や目的、これまでの活動業績の資料をしっかりまとめる。


基本フォーラムなので、発表や話し合いが要になる。



ここでまだ世間に認められていない、ベガス構築を有識者に注目してもらい、旧市街に移民含む都市を作っていくことの意味を知ってもらう。


いずれにせよ、元いたアジア諸国民だけでは経済もインフラも維持できない。

これまでもアジアは、統一によるアジア内の人口流動、時代ごとの大小規模の数回の移民流入で街という形態を維持できていたのだ。


そして、人の流れはどうしても都市、もしくは郊外に集中してしまう。反面ベガスでは人材を育てて、地方に流している。同時に移民に対しても、住民権を得ればベガス自治地区外部で自立しできるためその機会を作っている。選挙権は国籍まで得なければ与えられず、国際条約で多国籍を持っていても基本一国でしか適用できない。


そして、アーツ側はあまり関与していないが、VEGAの仕事として戦地や貧しい地域、貧困で身をすり減らしてしまった主に女性や子供たちの生活の立て直しのため、カウンセリングや病院、共同施設、保護施設なども運営している。河漢も含む暴力の犠牲になった女性や子供も多いため、霊性が認められた主に女性の医者や牧師、職員しか直接介入できない施設環境も作っている。それ以外の人間が関わる場合、女性含む複数人数でしか対応できない。そのため、利他心を持つ、精神性の強い女性が求められていた。



セイガ大陸は、少年兵に関しては元、現役軍人の多いユラスで主にまとめている。


世界の様々な事情を知らなかったアーツの若いメンバーが泣き出すほど、VEGAの資料は凄惨な事情が盛り込まれていた。とくに、第2弾からは中間層以上の女子メンバーもいて、その子たちの動揺はひどかった。


「これでも前時代よりはかなり良くなったんだ。」

と、誰かが言う。


ベガスはそんな様々な更生施設や、その職員を育てる仕事もしている。普通の施設職員よりかなり精査されるのだ。家系から霊性のチェック、自身だけでなく近親に重犯罪、性犯罪歴があれば必要ならどこまで清算してきたかも提出しなければならないし、自身の場合はもちろん除外される。世界の歴史から社会的地政学や風俗も学び、他宗教や他国文化的に理解がない者も職員として働けない。

他国活動でもそうだが、武器を常備する軍人や公安は、毎日体の異常な動揺などを見る体心計を通し、引っ掛かれば霊性のチェックもしている。


フォーラムには、小学生も見られる資料を含め、既存資料の改正版の準備と校正もしていた。




「マイラ。サウスリューシアの方、どの辺が人材的に手ごたえがある?」

チコがそれぞれ作業している中でマイラを呼んだ。

「そうですね、ここの区域のエリート層と…、貧困層でもやはり教会や寺院に通っている人は理解が早いです。教派も温厚派は受け入れが早いですし、自分たちの損得を超えて考えてくれます。全体で5人ほど現地のまとめ役ができています。」


「難しい地域は?」

「やっぱり一番の裕福層の一部と、国境付近でしょうか?スラムでも危ない所は、まだ進出できる許可が下りていませんが、準備はしています。向こうもユラスの人間がいると構えますので。」

「私が必要か?」

「そうですね、いてくれたら申し分ないです…」

と、そこで顔を上げるマイラ。

「…。」


「??」

「なんだ、その間抜けな顔。」

「…ベガスは?」

「こっちは人が出来ているし、治安も安定しているから。私の義体も、何かあればイーストの方にラボもあるだろ。」

「サダル議長は?」

「サダルが送りたがっているから、自分でもどこが一番いいか探している。」

「…?!ダメです!お二人は一緒にいてください!!」

「…いいよ。今更。」

「今更でなくて、今からですよ!!」

ここで詳しくは言えないが、今離れたらチコはユラスで議長夫人という存在位置を失うかもしれない。


慌てだしたマイラに周りの注目が行くと、二人の横でわざわざゴミ収集をしていた怪訝な顔のファイと目が合う。


「…。」

「……」

「なんだ、ファイ。その顔…。」


「やっぱりチコさんは、サダルさんとっ!ウグっ!!」

「大声出すな!!」

「チコさんの方が声がデカいですよ!!」


そのままチコに羽交い絞めで連れ去られたファイは、サラサからお叱りを受けたのであった。



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