第六十三話 途中経過とクエスト情報
「へ~、じゃあサクラさんの仕事もひと段落ついたわけだ?」
「うん! 昨日もちゃんと帰ってきてくれたから、慰労も兼ねてお風呂でお姉ちゃんの背中を流してあげたんだー」
大襲撃イベントが始まってしばらく。
そろそろ折り返しというところで、中間報告を兼ねてスイレンとホームで雑談していた。
「クレハと、一緒にお風呂……やば、想像しただけで鼻血出そう……ふふふ」
「ゲームの中で鼻血なんて出ないでしょ。それに、一緒にお風呂なんて小さい頃はたくさん入ってたじゃん」
「あの頃と今は違うんですーー、主にクレハへの溢れる想いが!!」
「何それ。ていうか、別にお風呂くらいまた一緒に入ればいいじゃん、何なら今晩お泊まりする?」
「えっ」
「ん……あ、たぬ吉、おかえりー」
スイレンと喋っていたら、探索から戻ったたぬ吉が足元にすり寄って来たので、抱き抱えて成果を確認する。
うーん、今日も特級から傷んだ奴まで山盛りいっぱいだね、お疲れ様。
「待ってクレハ、私にも心の準備ってものがあってね? いやクレハとお風呂に入るのはもちろん大歓迎なんだけど、こうもあっさり許されると逆にどうリアクションしたらいいかわからないというか」
「んー? あ、スイレン見て! たぬ吉が新しいスキル覚えてるよ!」
スキル:鼓舞の歌
効果:歌唱している間、周囲の味方全員のステータスを僅かに上昇させる
たぬ吉もそうだけど、みんな探索に出る度に結構頻繁に新しいスキル覚えるから、全然把握しきれないんだよね。
これはどうなんだろ、強いのかな?
「クレハ~! そんなスキル使ってる間は動くことも出来ない割りに効果も微妙なスキルのことはいいから、私の話を聞いてよ~!」
「わわっ、ちゃんと聞いてるって、大丈夫大丈夫」
微妙スキルなのかー、これ……まあ、タダで貰えるスキルなんだし、そんなものだよね、
そんなことより、スイレンと何の話してたか思い出さないと。
えっと、確か……。
「スイレンが私の家にお泊まりするって話だよね、晩御飯は何がいい?」
「……ほんと、クレハって危機感が足りないというかなんというか。私みたいな常識人はともかく、ティアラみたいな子に同じこと言ったら襲われるよ? 間違っても誘っちゃダメだからね?」
「常識人……?」
スイレンのどこが常識人なんだろう。
きっとネタだよね、うん。どう考えてもティアラちゃんの方が常識的だよ。襲ってくるのはスイレンだけだし。
でも、ティアラちゃんとお泊まり会は楽しそうだよね。どこに住んでるかわからないけど、いつかオフ会とかしたいかも。
「そういえば、最近本当にティアラちゃんと話せてないなぁ。元気にしてるかな?」
「元気も何も……もしかしてクレハ、イベントのランキング確認してないね?」
「うん? 確かに確認してないよ」
出来る限り精一杯やって、無理なら無理で仕方ないかなって思ってたから、あんまり今の時点での順位は気にしてなかったよ。
「どうだろ、私1000位以内入れそう?」
「1000位以内って……本当に全く見てないんだね」
「あ、やっぱり全然ダメそう? まあ、あんまり周回みたいなことはしてないし、仕方ないかー」
「いや、逆逆。クレハ、今三位だよ」
「へ?」
「イベントの累計獲得pt、全プレイヤー三位。もう紛うことなきトッププレイヤーの一人だよ」
「えっ……えぇー!?」
スイレンの口から飛び出した思わぬ情報に、私は目を丸くする。
いや、え? 三位? 私が?
確かに、最近の配信中はみんなやたらと『これならトップ狙えるのでは?』とか『いけるっしょ。むしろ俺らがトップにする!』とか『女神に貢げ! もっと貢げーー!!』とかわけのわかんない盛り上がりを見せたりしてたけど、まさか本当に??
あまりにも信じられなくて、イベントページから現在のランキングを確認してみたら、本当に三位だった。うそー……。
「それで、話を戻すけど……ティアラもすぐ傍に載ってるよ。どうやってそんなに順位上げたのかはわからないけどね」
「え? あ、本当だ、五位になってる!!」
私の二つ下で輝く友達の名前に、またも私は声を上げる。
そっか、ティアラちゃんもがんばってるんだ……すごいなぁ。
ついでに、スイレンも一つ上にいるみたい。
一番上もゼインさんって、知り合いばっかりだね上位陣。
……うーん、みんな一人でがんばってるのに、私だけのんびりみんなから貢がれながらここに居座っていいものか……。
「まあ、今の順位も、あと少ししたら一気に入れ替わるかもしれないけどね」
「え? どういうこと?」
「イベントの最後に、全プレイヤーに対してワールドクエストが発生するから。詳細な内容はここに載ってるよ」
スイレンに言われて改めてイベントページを確認すると、確かにそれらしい情報が載っている。
なんでも、野菜の強奪に失敗して鬱憤を募らせたカモネギバードとその親玉が、大挙して始まりの町に進軍中らしい。
テイマーは、総力を挙げてこれを迎撃するため準備せよとのこと。
「東西南北四つある門それぞれにプレイヤーが別れて、数の暴力で押し寄せるカモネギバード達を倒しまくるボーナスステージ。クエスト中はデスペナもなくなるみたいだから、死んで上等みたいな感じに突撃しまくる感じになるのかな?」
やってみないとわからないけどねー、とスイレンは肩を竦める。
ワールドクエスト……全プレイヤー参加型で、大量のカモネギバードや、もしかしたらカモネギソルジャーより強いボスが出てくる戦い、かぁ……。
「よし、決めた!」
「うん? 決めたって何を?」
「私の、イベント最後の大仕事!」
「大仕事? ……って、ちょ、どこ行くのクレハ?」
急にホームの外へ向かって走り出した私に、スイレンが問いかけてくる。
それに対して私は、いつにも増して楽しい気持ちになりながら、思い切り指を立ててVサインを作った。
「牧場爺さんのところ! スイレンも恩恵あると思うから、ワールドクエスト楽しみにしててよね!」




